前立腺がんのホルモン療法は再発・転移といった進行がんに対して行われていましたが、現在では早期のがんに放射線療法と併用することも行われ、手術や放射線療法が何らかの理由によって受けられないケースにも行われています。
前立腺がんは男性ホルモン依存といって、男性ホルモンを除くと急激にその勢いを失います。ホルモン療法は体中の前立腺がん細胞に影響を与えますから局所再発、遠隔転移のどちらにも効果を発揮する、というわけです。
そのホルモン療法には使用する薬によって大きく2つの方法があります。
男性ホルモン除去治療
精巣からの男性ホルモンの分泌を抑える方法です。使用するのは「LH-RHアゴニスト」製剤です。4週に1回、または12週に1回皮下注射を行います。気になる副作用は「骨粗しょう症」「筋力低下」「体重増加」「意欲低下」など更年期障害に似た症状がでてきます。
副作用が強い場合は、数か月治療後にいったん治療を中止し、PSA(前立腺特異抗原)が再度上昇してきたら治療を再開する”間欠ホルモン療法”が行われる場合があります。
抗男性ホルモン剤治療
血液中の男性ホルモンが前立腺がんに作用するのをブロックする薬を使います。日本では3種類(ビカルタミド、フルタミド、クロルマジノン)が認可されており、いずれも内服薬です。男性ホルモンを低下させたくない人にはビカルタミド、フルタミドのいずれかを単独で使うこともあります。
しかし、多くはLH-RHアゴニストとの併用である「CAB療法」、もしくはLH-RHアゴニストが単独で使われます。それぞれの薬による副作用は正しく認識しておく必要があり、抗男性ホルモン剤の副作用はビカルタミド、フルタミドでは肝機能障害や女性化乳房、クロルマジノンでは男性機能低下、女性化乳房です。
ホルモン療法以外の薬を使う治療では、抗がん剤のドセタキセルがホルモン療法の効果が低下した時に使われています。抗がん剤のドセタキセル以外にも「前立腺がんワクチン療法(免疫療法)」や「遺伝子治療」が行われています。ただしワクチン療法や遺伝子治療は、まだ日本では臨床試験の段階です。
前立腺がんは治療法が多く、患者が高齢であるケースも多いので治療の選択が難しいといえます。主治医と十分に話し合い、納得したうえで治療を進めていきましょう。
以上、前立腺がんのホルモン療法についての解説でした。