病院で行う「放射線治療」は、下垂体腫瘍、血管腫、脳動静脈奇形など、一部の良性腫瘍も治療の対象になりますが、ほとんどが悪性腫瘍(がん)に対しておこなわれます。
放射線治療の特徴は「局所療法である」「治療部位の形態と組織の機能が温存できる」「患者の生活の質の向上に寄与する」などが挙げられます。
局所療法では、放射線の照射を受けた部位だけが起こします。
たとえば、肺がんの外部照射法では、毛髪が抜けるようなことは絶対にありません。その時に脱毛が起これば、別に原因があると考えるのが普通です。たとえば、治療に抗がん剤を併用していれば、それが原因と考えられます。
子宮頸がんの放射線治療をおこなっていた方から「放射線で髪の毛が抜けます。どうしてですか」と質問されたことがありました。話を聞いてみると、やはり抗がん剤を併用していました。
次に放射線治療のメリットとデメリットを整理してみます。
放射線治療のメリット
1.治療後は、手術療法と違ってがん病巣部の組織・器官の機能と形態が保存される。
2.放射線治療で現れる有害事象は抗がん剤や手術に比べれば軽微である。
3、全身状態が悪くて歩けない患者、小児や高齢の患者、心臓や腎臓の機能が悪くて手術ができないような患者にも適用できる。
4.放射線感受性の高いがん病巣では、少ない照射線量で治癒が期待できる。
5.局所治療だが、広い範囲に広がっているがん病巣にも実施することができる。
6.どの施設でも同じ治療法で施行することができる。
放射線治療のデメリット
1.がん病巣の周囲の正常組織にも放射線が照射されるために、放射線障害が発生する可能性がある。
2.照射する線量には限界がある。
3.がん病巣が大きくなると低酸素性細胞が多くなり、放射線抵抗性のために治癒力に限界が生じる。
4、放射線感受性が悪いがんは、病巣が小さくても根治することが困難である。
5、放射線感受性が低い病巣は縮小しても再発する可能性がある。
6.放射線治療を受けてから10年以後に、放射線による二次発がんの可能性が出るおそれがある。
7.治療システムの設備投資に膨大な費用がかかる。
8.医療安全を確保するために、放射線治療装置の日々の品質管理が必要になる。
以上、がんの放射線治療についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。