現代医学では、がん治療の3本柱のひとつとなっている「放射線治療」ですが、肝臓がんにおいては有力な治療法とはいえません。
肝臓という臓器は放射線に対して敏感であり、放射線照射を受けると肝臓は大きなダメージを受けてしまいます。肝臓がん部分にのみ照射しようとしても正常細胞にも照射されてしまい、正常な肝臓の細胞および肝機能に受けるダメージが少なくないため、これまで肝臓がんに放射線治療が行われることはあまりなかったのです。
しかし、最近では「IMRT(強度変調放射線療法)」「陽子線&重粒子線」の登場によって、状況が変化しています。
IMRTはX線を使った外照射の中で最も注目されている治療法です。より強い放射線をがん部分に照射し、周辺の正常組織には放射線の照射が極力少なくできます。ところが、IMRTを施設が所有していても、そのIMRTを使いこなす放射線治療医の少ないのが問題です。
また、放射線治療と陽子線治療の最大の違いは、そのエネルギーがピークになる時点です。X線は体表から2センチ前後入ったところがピークとなり、ゆるやかに低下します。一方、陽子線&重粒子線は体表ではあまりエネルギーを出さず、ある一定の深さに達するとエネルギーが急激にピークに達し、そのままエネルギーが停止する特徴(ブラックピーク)がある、というわけです。
そのため「正常組織をキズつけることが少ない」「手術ができないところでも照射が可能」「体力のない高齢者にも可能な治療」「外来で照射が受けられる」などの特徴が肝臓がんへの治療を可能にしています。
たとえば、ラジオ波焼灼療法が行えない肝門部にがんができていた患者も、重粒子線を行うことができます。副作用がまったくないわけではないですが治療法の選択肢として有効であるといえます。
以上、肝臓がんの放射線治療についての解説でした。