肝臓がんの「肝動脈塞栓療法」は進行肝臓がんの世界の標準治療として行われており、治療自体は日本で開発されたものです。
この治療法はまず、脚の付け根の動脈から細い管のカテーテルを挿入し、肝動脈にまで送り込みます。そこに抗がん剤とともに詰め物(ゼラチンスポンジ)をして肝動脈の流れを遮断するのです。いわば肝動脈を塞栓することでがん細胞へ栄養が届かないよう"兵糧攻め"にする治療法だといえます。治療は1、2時間程度で終了します。
肝臓の組織は肝動脈と門脈という2つの血流で支配されています。門脈の血流が、70~80%を占め、肝動脈の血流が20~30%です。ところが、肝臓がんだけをみると、肝動脈血流が100%です。
それであれば肝動脈の血流を遮断しても、他の細胞組織へのダメージは20~30%ですむいっぽうで、肝臓がんには100%のダメージを与えます。理論的にはこのような背景があります。
なお、治療の対象となるのは肝臓がんが中期から末期の段階です。早期の肝臓がんの場合、がん部分への血流があまり増えていないために効果がないと考えられるのです。
また、内科的局所療法(エタノール注入療法、ラジオ波など)や手術と組み合わせて治療が行われるケースもあります。肝動脈塞栓療法のあと、残ったがんを叩くためにエタノール注入療法を追加したり、肝動脈塞栓療法を行ったあとにラジオ波焼灼療法を行う、という治療が広く行われています。
以上、肝臓がんの肝動脈塞栓療法についての解説でした。