「がんの治療にビタミンCが有効だ」ということが宣伝されはじめたのは、1970年代の頃です。
その頃、ある病院で実際に、1日に10グラム以上のビタミンCを投与して、治療に使われたことがありました。しかし、実際に試してみると全く効果がないことがわかって、保険内治療では治療の目的では使われていません。
ただ、有名なノーベル賞学者であるポーリング博士は、今でも効果があると主張しているようです。しかし、たくさんの臨床研究で、がん患者に大量のビタミンCを与えても治療効果も延命効果もないことがはっきりしています。
効果があったという実験では、人間には精神的影響が大きいといったことを忘れていたといってもよいでしょう。つまり、有効だ、有効だという薬を飲んでいると治りそうな気分になって、実際には効果がないのに、延命効果が見られたのだと考えられています。
ところで、最近のたくさんの研究で、ビタミンはがんを治すことはできなくても、がんにかかるのを防ぐ予防効果があることがわかってきました。がんには胃がんもあれば肺がんもありますし、ビタミンをたくさんとっていると、どのがんにも効くというわけではないのですが、概してビタミンをたくさん取っている人では、肺がんや大腸がんにかかる率がかなり低くなるといわれています。
ビタミンの中でも効果のあるのは、ビタミンAと野菜に含まれているビタミンAの原料のカロチン、ビタミンCとビタミンEの3つです。この3つは英語でエース(ACE)とも呼ばれるくらい色々な効果をもっています。
私たちの食べている食べ物には極めて徴量ですが、発がん性を持つ化合物が調理したり、加熱したりした時にできます。今の現状では、これらの発がん物質ができるのを完全に防ぐことは不可能といえます。
このビタミンのエースの中で、カロチンとビタミンCは野菜、特に緑色の濃い葉っぱや黄色の強いニンジン、カボチャなどにたくさん含まれています。また、野菜には食物繊維もあります。
ビタミンCもEも発がん性の強いニトロソアミンや他の発がん物質のできるのを防ぎ、体の中でも、発がん剤が活動するのを止めさせます。また、カロチンも似た働きをしているといわれています。
このように、野菜を多く食べるよう心掛けることは、繊維とビタミンの両面からがんになるのを防ぐことになります。たばこの煙にもがんを起こす成分がたくさん含まれていることは有名ですが、肺がんを防ぐのにカロチンやビタミンAが大きい効果をもつことも疫学と治療の面でもわかり始めました。
ビタミンを補給するだけでなく、がんの予防ということでも、色の濃い野菜をたくさん食べることが重要だといえます。