肝臓にできる原発性のがん(肝臓の細胞に最初にがんが発生する)には「肝細胞がん」と「胆管細胞がん」があります。その約95%は肝細胞ですので、一般的に肝臓がんという場合は肝細胞がんのことを指します。
この肝臓がんの死亡者数には今、ある変化が現れています。他の臓器のがん死亡者数が増加、もしくは横バイ状態の中、肝臓がんには減少傾向がはっきり出てきているのです。2005年の死亡者数3万4268人をピークとして、2010年は3万2765人。その減少傾向は緩やかに続いています。
その原因は何でしょうか。
肝臓がんの発生には日本人の場合はC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスが大きく関係しています。最近はC型・B型肝炎から肝臓がんになる人が減少してきているのです。
2005年くらいまでは肝臓がん患者さんの75%がC型肝炎ウイルス、20%がB型肝炎ウイルス、トータル95%の人が肝炎ウイルスを持っていました。ところが、2011年1年間の状況をある病院で調査した結果、患者の内訳は60%がC型肝炎ウイルス、10%がB型肝炎ウイルスを持っていましたが、ウイルスを保持していない方が30%となっていました。
つまり、肝臓がんの大きな原因であったC型、B型のウイルスを持っている人が減少してきたことが、肝臓がん死亡者数減少の大きな原因といえるのです。
その傾向を作ったのは、C型、B型ウイルス肝炎の治療が進歩したことが原因です。そして、ウイルスを保持していない30%を占めたうちの半分は「アルコール性肝障害」によるもので、残りの半分の多くは「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」でした。
昔はアルコール性肝障害では、よほどでない限りがんにはならないと言われてきましたが、それが15%を占めています。そして、脂肪が肝細胞に過剰にたまる状態の脂肪肝からのがんもアルコール性肝障害並みに占めています。
このように肝臓がんの原因は時代の流れによって変化をしてきています。
現在は減少傾向でも、アルコール性肝障害や脂肪肝が増えてくれば、肝臓がんの罹患者数や死亡者数は再び増加傾向に入ると予想されるのです。
以上、肝臓がんについての解説でした。