
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
今回は、亜鉛とがん(癌)の関係について、2026年時点での最新の研究結果を踏まえながら、詳しく解説していきます。
亜鉛は私たちの体に必要不可欠なミネラルですが、がん予防や免疫機能との関連で注目を集めています。適切な摂取量や過剰摂取のリスクについても理解を深めていきましょう。
亜鉛とは何か?体内での重要な役割
亜鉛は、人間の体内に約2グラム含まれる必須ミネラルです。主に筋肉や骨、皮膚、肝臓、膵臓、脳、前立腺などの組織に分布しています。
体内では200種類以上の酵素の構成成分として機能し、細胞の正常な働きを支えています。特にDNAやたんぱく質の合成に深く関わっており、細胞分裂や成長には欠かせない栄養素です。
亜鉛の主な働きには以下のようなものがあります。
新しい細胞の形成を促進し、成長や発育をサポートします。皮膚や粘膜の新陳代謝を活発にし、傷の回復を早める作用があります。また、味覚を正常に保つ働きもあり、亜鉛が不足すると味覚障害が現れることがあります。
免疫機能の維持にも重要な役割を果たしています。亜鉛は免疫細胞の活性化に関わり、体の防御システムを正常に保ちます。
さらに、生殖機能にも関係しており、男性では精子の形成、女性ではホルモンの分泌に影響を与えます。
亜鉛は体内で合成することができないため、食事から継続的に摂取する必要があります。吸収率は約30パーセント程度で、摂取量や一緒に摂る食品によって変動します。
亜鉛とがんの関係に関する最新研究
大腸がんと亜鉛の関係
2023年から2024年にかけて発表された日本の研究では、亜鉛の大腸がん抑制効果に関する重要なメカニズムが明らかになりました。
鈴鹿医療科学大学の研究チームによる動物実験では、亜鉛の摂取量が多いマウスで大腸の腫瘍数が減少することが確認されています。この研究で注目されたのは、亜鉛が免疫細胞であるT細胞の働きを活性化するという点です。
具体的には、亜鉛が細胞傷害性T細胞のグランザイムBという分子の産生を増加させることで、がん細胞を攻撃する免疫機能が強化されることが分かってきました。グランザイムBは、がん細胞に細胞死を引き起こす重要な分子です。
国内外の複数の研究報告では、亜鉛の摂取量が1日10ミリグラム以上の人では、大腸がんの発生リスクが低下することが示されています。特に、アジア人を対象とした研究では、食道がんや胃癌のリスク低下も報告されています。
国立がん研究センターによる日本人を対象とした研究では、男性で飲酒習慣のある人において、亜鉛摂取量が多いほど大腸がんのリスクが低くなる傾向が見られました。ただし、直接的な因果関係については、さらなる研究が必要とされています。
前立腺がんと亜鉛の複雑な関係
前立腺がんと亜鉛の関係は、やや複雑です。前立腺は体内で最も亜鉛濃度が高い組織の一つであり、正常な前立腺組織には高濃度の亜鉛が含まれています。
研究によると、前立腺がん患者さんでは、健康な人と比較して前立腺組織中の亜鉛含有量が低いことが報告されています。また、土壌や地下水の亜鉛濃度が低い地域では、前立腺がんの発生率が高いというデータもあります。
適切な量の亜鉛摂取は、前立腺の健康維持に役立つ可能性があります。実際、低用量の亜鉛サプリメント(1日24ミリグラム以下)を摂取していた前立腺がん患者さんでは、進行リスクの低下が観察されたという研究結果があります。
しかし、注意が必要なのは過剰摂取のケースです。1日100ミリグラム以上の高用量の亜鉛をサプリメントで継続的に摂取すると、進行性前立腺がんのリスクが約2.3倍に上昇するという報告があります。10年以上にわたって高用量のサプリメントを服用していた場合、リスクはさらに高まります。
この点は非常に重要です。通常の食事から摂取する亜鉛の量であれば、このようなリスクはほぼありません。問題となるのは、サプリメントによる過剰摂取です。
その他のがんと亜鉛
C型肝炎患者さんを対象とした研究では、血清中の亜鉛濃度が低い人では、肝細胞がんの発生リスクが高くなることが示されています。適切な亜鉛レベルを維持することが、肝臓の健康維持に重要である可能性があります。
乳がんに関しても、亜鉛トランスポーター(亜鉛を細胞内に運ぶたんぱく質)の発現量と、がんの悪性度に関連があることが分かってきました。ただし、がんの種類やタイプによって、亜鉛の代謝や細胞内での動きが異なることも明らかになっています。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
亜鉛の免疫機能への作用
亜鉛が注目される理由の一つは、免疫系への働きかけです。
亜鉛は自然免疫と獲得免疫の両方に関わっています。ナチュラルキラー(NK)細胞やT細胞といった免疫細胞の機能を正常に保つために必要です。これらの細胞は、体内に侵入した病原体やがん細胞を識別して攻撃する役割を担っています。
また、亜鉛は炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす物質)の過剰な産生を抑制する働きもあります。慢性的な炎症はがんの発生や進行に関与することが知られており、この点でも亜鉛の役割が重要視されています。
さらに、亜鉛は抗酸化酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の構成成分です。SODは活性酸素による細胞の酸化ストレスを軽減し、DNAの損傷を防ぐ働きがあります。活性酸素の蓄積はがんの発生リスクを高める要因の一つとされています。
血管新生を促すVEGF(血管内皮増殖因子)という物質の活性を抑制することも報告されています。がん細胞が成長するには新しい血管が必要ですが、亜鉛がこのプロセスを抑える可能性があります。
加えて、がん抑制遺伝子として知られるp53の活性化にも関与しているという研究結果があります。p53は細胞の異常な増殖を抑える重要な遺伝子です。
亜鉛の1日推奨摂取量と耐容上限量
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、亜鉛の推奨量が以下のように設定されています。
| 年齢・性別 | 推奨量(mg/日) | 耐容上限量(mg/日) |
|---|---|---|
| 18〜29歳 男性 | 9 | 40 |
| 30〜74歳 男性 | 10 | 45 |
| 75歳以上 男性 | 9 | 40 |
| 18〜29歳 女性 | 7 | 35 |
| 30〜74歳 女性 | 8 | 35 |
| 75歳以上 女性 | 7 | 35 |
推奨量は、ほとんどの人にとって十分な摂取量を示しています。一方、耐容上限量は、健康障害を起こすリスクがないとみなされる摂取量の上限です。
国民健康・栄養調査のデータでは、日本人の実際の亜鉛摂取量は男性で平均8.4ミリグラム程度、女性で7.3ミリグラム程度とされています。多くの人が推奨量にやや届いていない状況にあり、意識的に摂取することが望ましいとされています。
ただし、通常の食事であれば過剰摂取になることはほとんどありません。問題となるのは、サプリメントによる長期的な高用量摂取です。
亜鉛の過剰摂取によるリスク
亜鉛は必要な栄養素ですが、摂りすぎると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
銅欠乏による健康障害
亜鉛を過剰に摂取すると、腸管での銅の吸収が阻害されます。その結果、体内の銅が不足する「銅欠乏症」を引き起こすことがあります。
銅欠乏の症状には、貧血、骨の異常、毛髪の変化、白血球や好中球の減少、心血管系や神経系の異常などがあります。特に神経系の症状は深刻で、手足のしびれや運動障害を引き起こすことがあります。
消化器症状
急性の過剰摂取では、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛といった消化器症状が現れることがあります。特に空腹時に高用量のサプリメントを摂取した場合に起こりやすいとされています。
HDLコレステロールの低下
1日50ミリグラム以上の亜鉛を継続的に摂取すると、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値が低下することが報告されています。HDLコレステロールの低下は、動脈硬化のリスクを高める可能性があります。
前立腺疾患のリスク
前述したように、1日100ミリグラム以上の高用量を長期間摂取すると、進行性前立腺がんのリスクが高まることが分かっています。また、前立腺肥大症などの既存の前立腺疾患が悪化する可能性も指摘されています。
免疫機能への逆効果
適度な量の亜鉛は免疫機能を高めますが、過剰摂取は逆に免疫機能を低下させることがあります。バランスが重要です。
これらのリスクを避けるため、サプリメントを使用する場合は医師や薬剤師に相談し、適切な量を守ることが大切です。特に、亜鉛を含む薬剤や入れ歯安定剤を日常的に使用している方は注意が必要です。
亜鉛を多く含む食品
亜鉛は様々な食品に含まれていますが、特に魚介類と肉類に豊富です。
魚介類
| 食品名 | 100gあたりの亜鉛含有量(mg) |
|---|---|
| かき(生) | 14.5 |
| かたくちいわし(煮干し) | 7.2 |
| たらばがに | 4.2 |
| ほたて貝柱(生) | 2.7 |
| うなぎ蒲焼 | 2.7 |
かき(牡蠣)は亜鉛含有量が特に多く、他の食品と比べて圧倒的です。生牡蠣80グラム程度で、成人男性の1日の推奨量を満たすことができます。ただし、牡蠣は旬が限られており、価格も高めなため、毎日食べるのは難しいかもしれません。
煮干しやほたて貝柱、するめなどの乾物は、保存がきき、少量で亜鉛を効率よく摂取できます。出汁として使うだけでなく、細かく砕いて料理に加えたり、そのまま食べたりすることで、より多くの亜鉛を摂ることができます。
肉類
| 食品名 | 100gあたりの亜鉛含有量(mg) |
|---|---|
| 豚レバー | 6.9 |
| 牛肩ロース | 5.6 |
| 牛肩肉(赤身) | 5.7 |
| 牛ひき肉 | 5.2 |
| 鶏レバー | 3.3 |
肉類は日常的に取り入れやすく、一度の食事でしっかりと亜鉛を摂取できます。特に牛肉や豚のレバーには多く含まれています。
鶏肉は他の肉類と比べると含有量は少なめですが、毎日の食事に取り入れやすい食材です。
その他の食品
| 食品名 | 100gあたりの亜鉛含有量(mg) |
|---|---|
| 小麦はいが | 15.9 |
| カシューナッツ | 5.4 |
| アーモンド | 4.4 |
| ごま | 5.9 |
| レンズ豆 | 4.4 |
| 納豆 | 1.9 |
| プロセスチーズ | 3.2 |
ナッツ類は間食として手軽に摂取できる優れた亜鉛源です。ただし、カロリーが高いため、食べ過ぎには注意が必要です。1日20〜30グラム程度を目安にするとよいでしょう。
穀類や豆類の含有量は少なめですが、毎日の食事で少しずつ積み上げることができます。納豆やチーズは、朝食や副菜として取り入れやすい食品です。
効果的な亜鉛の摂り方
亜鉛の吸収を高めるためには、いくつかのポイントがあります。
動物性たんぱく質と一緒に摂ると、亜鉛の吸収が促進されます。肉や魚と一緒に野菜や穀物を食べることで、バランスよく亜鉛を摂取できます。
ビタミンCやクエン酸も亜鉛の吸収を助けます。食事の際に果物や野菜を添えたり、レモン汁をかけたりすると効果的です。
一方で、フィチン酸を多く含む食品(全粒穀物や豆類)や、食物繊維、カルシウムの多い食品は、亜鉛の吸収を妨げることがあります。ただし、これらの食品も健康に重要なので、バランスよく摂ることが大切です。
コーヒーや紅茶に含まれるタンニンも亜鉛の吸収を阻害する可能性があるため、食事と同時に大量に飲むのは避けた方がよいでしょう。
亜鉛を含む食品を様々な調理法で取り入れることで、飽きずに継続的に摂取できます。焼く、煮る、蒸すなど、調理法を工夫してみてください。
亜鉛欠乏のサインと対策
亜鉛が不足すると、様々な症状が現れる可能性があります。
最もよく知られているのは味覚障害です。食べ物の味が分からなくなったり、変な味がしたりする場合、亜鉛不足が原因かもしれません。
皮膚炎や湿疹、傷の治りが遅くなることも亜鉛不足のサインです。皮膚の健康維持には亜鉛が重要な役割を果たしています。
免疫機能の低下により、風邪をひきやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりすることもあります。
その他、脱毛、爪の異常、食欲不振、成長遅延(子どもの場合)、生殖機能の低下なども報告されています。
これらの症状が気になる場合は、医療機関を受診し、血液検査で亜鉛の血中濃度を測定することができます。
亜鉛不足の原因としては、食事からの摂取不足のほか、吸収障害、アルコールの過剰摂取、特定の薬剤の使用、消化器疾患などがあります。高齢者や妊娠中の女性、激しい運動をする人は、特に不足しやすいとされています。
がん患者さんと亜鉛
がん患者さんの中には、亜鉛が不足しやすい状況にある方もいます。
抗がん剤治療や放射線治療の副作用として、食欲不振や味覚障害が起こることがあります。これにより食事摂取量が減少し、亜鉛を含む栄養素の摂取が不十分になる可能性があります。
また、がん自体が亜鉛の代謝に影響を与えることも知られています。
亜鉛が不足すると、味覚障害がさらに悪化したり、免疫機能が低下したり、傷の治りが遅くなったりする可能性があります。治療の副作用を和らげ、回復を促進するためにも、適切な亜鉛摂取は重要です。
ただし、がん患者さんがサプリメントを使用する際は、必ず主治医に相談してください。治療内容や使用している薬剤によっては、亜鉛サプリメントが適切でない場合もあります。また、過剰摂取のリスクにも注意が必要です。
基本的には、食事から亜鉛を摂取することが望ましいです。食欲がない場合でも、少量ずつ亜鉛を含む食品を取り入れる工夫をしてみてください。
サプリメントの使用について
通常の食事から十分な亜鉛を摂取できていれば、サプリメントは必要ありません。むしろ、サプリメントによる過剰摂取のリスクの方が問題となることがあります。
しかし、食事だけでは十分な量を摂取できない場合や、医師から亜鉛不足を指摘された場合には、サプリメントの使用を検討することもあります。
サプリメントを使用する際の注意点は以下の通りです。
まず、使用前に必ず医師や薬剤師に相談してください。特に、持病がある方や他の薬を服用している方は必須です。
製品に記載されている摂取目安量を守り、決して多く摂りすぎないようにしましょう。推奨量の数倍を摂取するようなことは避けてください。
長期間にわたって高用量のサプリメントを使用することは避けるべきです。特に1日100ミリグラム以上の高用量を継続的に摂取することは、前立腺がんのリスク増加や銅欠乏症のリスクがあります。
特定の抗菌薬(キノロン系やテトラサイクリン系)は、亜鉛と同時に摂取すると吸収が低下することがあります。これらの薬を服用している場合は、服用の2時間前または4〜6時間後に亜鉛を摂るようにしてください。
定期的に血液検査を受けて、亜鉛の血中濃度や銅の濃度を確認することも大切です。
まとめ:亜鉛とがん予防における考え方
これまで見てきたように、亜鉛はがん予防において一定の役割を果たす可能性があります。特に大腸がんに関しては、適切な亜鉛摂取がリスク低下に関連するという研究結果が複数報告されています。
2026年時点での研究から、亜鉛が免疫細胞の機能を活性化し、がん細胞を攻撃する体の防御システムを強化するメカニズムが明らかになってきました。
ただし、重要なのは「適切な量」を摂取することです。不足も問題ですが、過剰摂取も健康リスクをもたらします。特に前立腺がんに関しては、サプリメントによる高用量の長期摂取がリスクを高める可能性があることに注意が必要です。
基本的には、バランスの取れた食事から亜鉛を摂取することが最も安全で効果的です。牡蠣、肉類、魚介類、ナッツ類などを日常の食事に取り入れることで、無理なく推奨量を満たすことができます。
がん予防において、亜鉛だけに頼るのではなく、全体的な栄養バランス、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理など、包括的な健康管理が大切です。
もし亜鉛不足の症状が気になる場合や、サプリメントの使用を検討している場合は、医療機関で相談してください。血液検査で亜鉛の状態を確認し、必要に応じて適切な対策を取ることができます。
参考文献・出典情報
- 鈴鹿医療科学大学「亜鉛の大腸がん抑制作用に関する研究成果」
- 日本薬学会「亜鉛は細胞性免疫を介して大腸がんの発生を抑制する」
- 国立長寿医療研究センター・健康長寿ネット「亜鉛の働きと1日の摂取量」
- サライ.jp「亜鉛不足がもたらす深刻な不調」
- ひまわり医院「亜鉛のとりすぎによる症状や副作用」
- 葛西昌医会病院「亜鉛とはどんな栄養素?効果・効能と多く含まれている食品」
- MSDマニュアル家庭版「亜鉛」
- メディパレット「亜鉛を豊富に含む食べ物と食事摂取基準」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」