ラジオ波(RFA)による乳がんの治療は現時点(2016年時点)では標準治療ではありませんが、先進医療として臨床研究が行われています。
乳がんに対するラジオ波焼灼治療を実施している病院
都道府県 | 病院名 |
東京都 | 国立がん研究センター中央病院 |
北海道 | 北海道がんセンター |
群馬県 | 群馬県立がんセンター |
千葉県 | 国立がん研究センター東病院 |
千葉県 | 千葉県がんセンター |
岡山県 | 岡山大学病院 |
広島県 | 広島市立広島市民病院 |
愛媛県 | 四国がんセンター |
ラジオ波焼灼とはどんな治療法?
AMラジオと同じ周波数の高周波電流を使った治療法で、乳がんで実施する場合も肝がんの内科的治療の中核となっているラジオ波凝固療法と同じ方法です。超音波で乳がん部分を確認しながら、確実にがん部分に専用の針を刺し、ラジオ波を出力して中心の温度は90度、平均80度以上の熱でがん細胞を死滅させる治療法です。
切除するのではないので焼灼したがん組織はそのまま体内に残っています。数か月後には自然に体に吸収されてなくなってしまいますが、なかには焼く範囲が広く、焼灼温度が高すぎたりするとシコリとして残るケースもあります。
そのようなことがないようラジオ波の治療対象となるのは「シコリの大きさが2センチ以下」「わきの下のリンパ節に転移がない」という場合に限られています。
ラジオ波の乳がんへの応用は1999年にアメリカやイタリアでスタートし、日本では03年から始まりました。今日では約30施設で行われ、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)を始めとする上記8施設では先進医療として行われています。
「傷が残らない」「術後の回復が早い」「他の疾患のある人も治療が可能」などのメリットはありますが、デメリットもあります。「長期にわたるデータがない」「シコリが残る場合がある」。そして何よりがんを焼灼はしますが切除しないので、すべて残さずがんを叩けているかの判定が困難です。事実、乳房温存療法よりも再発率は高いとされています。
乳がんのラジオ波熱焼灼療法を取り巻く環境
乳がんのラジオ波熱焼灼療法は、標準治療として保険適応されることを目指している段階ですが、臨床研究が始まる前に乳がんのラジオ波熱焼灼療法の「乱発」がありました。
ラジオ波治療は大がかりな設備や病理も必要ないため、個人経営のクリニックや民間療法主体の病院でも実施できます。そのため、2000年ごろから「とにかく目に見えるがん腫瘍をラジオ波で焼く」という行為がどんどん広まっていきました。
しかし「手術せずに乳がんを治せます」と過大なPRをして、大きながんまでも無理をしてラジオ波で治療するなどして再発してしまうケースが多発しました。
そういうった事態を重く見た乳がん学会を中心に、正式なプロセスを経て臨床試験が開始されることになったのは2006年頃です。
臨床試験の内容と、実施できる乳がんの状況とは
ラジオ波の対象となるのは画像診断で、大きさが1.5㎝以下とされた乳がんです。この大きさの範囲内であることが第一の条件だといえます。
なお、完全にメスを入れないわけではなく「センチネルリンパ節生検」というリンパ節を切除する手術を行い、リンパ節転移がないことも確認します。
その後、全身麻酔のもとでラジオ波熱焼灼療法を行い、補助療法として放射線治療と化学療法(抗がん剤などの薬を使う治療)を行います。
つまりラジオ波焼灼を単独で行い、それで治療が完了するわけではなく、リンパ節の郭清や放射線治療、化学療法などを併用して行うというスタンスなのです。
そして、放射線治療後に針生検を行い、がん細胞が残存しているかどうかを調べる、とうプロセスで進められています。
結果、がん細胞の残存がある場合は追加で手術が行われ、残存なしなら経過観察となります。
ラジオ波治療を受けるための費用とは
国立がん研究センター中央病院の場合、ラジオ波熱焼灼療法の患者負担は17万円ほどになります。
以上、乳がんのラジオ波焼灼法についての解説でした。
ラジオ波による治療は根治的な治療とはいえませんので、治療を受けてもそれで終わりではなく、再発するケースも多いのが現実です。
今後、どのようなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。