直腸診は、医師が肛門から直腸に指を挿入し、直腸の壁ごしに前立腺をさわってみる検査法です。
前立腺は、直腸のすぐ前にあるため、肛門から指を入れると、前立腺の背面にふれることができます。
診察室では、「前立腺を触診しますからズボンと下着を下げて、ベッドに向こう向きになって寝てください」などと医師に言われるでしょう。患者さんは、下半身の衣服や下着を脱ぎ、診察台の上で膝肘位、仰臥位、側臥位などの姿勢をとります。
医師はゴム手袋をはめ、潤滑剤をつけた人さし指、もしくは中指を肛門から挿入して、前立腺の大きさ、表面が平らかでこぼこか、弾力があるか、石のようにかたいか、左右対称か否か、がんが疑われるかたいしこりの有無などを、数秒のうちに調べます。
■痔のある人は事前に伝える
痔のあることがわかっている人は、検査の前に伝えてましょう。潤滑剤の量を多くしたり、指を肛門に挿入するとき、いつもより慎重に対処するなど、医師は配慮します。
■力を入れず、口を開けて息を吐く
この検査をスムーズに受けるコツは、下半身に力を入れないことです。力んでしまうと、肛門括約筋が締まって、逆に痛く感じます。口を開けて、ハーッと息を吐くようにすれば楽です。
前立腺がんの一部のタイプには、PSA検査で正常値を示すがんもあります。そのようなやっかいながんを見つける場合、直腸診は非常に役立つ検査法といえるのです。
しかし、この検査は医師が直接指でふれるだけなので、客観的な数値でのデータであらわすことができません。
指にふれるくらいかたいがんというのは、TNM分類のステージでいえばT2~T4くらい進行しています。T1cなど初期のがんは直腸診だけではわかりません。また、前立腺の背面しかわからないため、がんが前側に発生していると、指でふれることができずに見落とす可能性もあります。
そのため最終的な診断をするためには、PSA検査や超音波検査、生検などの検査を組み合わせて行います。
前立腺がんが見つかったときは、そのがんが前立腺部にとどまっている(限局)かどうかの判定や、とどまっている場合の病期分類にも必要となる検査です。
以上、前立腺がんの検査についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。