非ホジキンリンパ腫とは
悪性リンパ腫は、白血球の一つであるリンパ球が「がん」化し、リンパ節や脾臓をはじめとするリンパ組織を中心に、無制限に増殖していく病気です。リンパ節以外の他の臓器へと進展することもあります。
腫瘍組織の形態の違いによって大きく、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫とに分けられますが、日本では非ホジキンリンパ腫が圧倒的に多く、90%以上を占めています。非ホジキンリンパ腫は、いくつものタイプに分類され、それぞれのタイプによって進行のスピードなどが異なります。
悪性リンパ腫は高齢者に多く、70歳代が発症のピークです。男女比は3:2と男性のほうが多く、高齢化に伴って年々増加傾向がみられます。
非ホジキンリンパ腫の主な症状
首、わきの下、脚の付け根にあるリンパ節が急に腫れることが多く、痛みは伴いません。腫れたリンパ節が臓器を圧迫して、痛みや息切れなどの症状が現れる場合もあります。
非ホジキンリンパ腫は、消化管や皮膚のほか、ときに神経系に浸潤する場合もあり、様々な症状を引き起こします。不明熱と呼ばれる明らかな病因が判明しない発熱が長く続くことがあります。
小児で最初にみられる症状には、貧血や発疹のほかに、脱力感や異常感覚などの神経症状があり、これらはリンパ腫細胞が骨髄、血液、皮膚、腸、脳、脊髄に浸潤することから生じている可能性が高いと考えられます。
非ホジキンリンパ腫の原因
はっきりとした原因はわかっていませんが、加齢、放射線への曝露、慢性炎症などによって起こる染色体や遺伝子の異常が原因と考えられています。さまざまな要素によって生じた遺伝子の傷が発症に深く関わっていると考えられています。親から子供へと遺伝する病気ではありません。
非ホジキンリンパ腫の原因は不明ですが、白血病の場合と同様に、一部の例においてはウイルス性の原因(例、ヒトT細胞白血病-リンパ腫ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV、ヒトヘルペスウイルス8型)を示唆するエビデンスが豊富に存在します。
非ホジキンリンパ腫の検査方法について
悪性リンパ腫が疑われた場合は、特に生検による病理検査(顕微鏡でがん細胞の有無を確認する検査)が重要で、この結果により最終的に非ホジキンリンパ腫との確定診断が得られます。また、非ホジキンリンパ腫のどのタイプに該当するかといったことも決定されます。
診断にはリンパ節や骨髄の生検が必要になります。悪性リンパ腫は、病理組織学的に50種類以上に分類されますが、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別されます。
確定診断されると、次に病気の拡がりについて評価することになります。病気の拡がりの程度は、予後を決める重要な要素となりますし、また治療後の状態と比較することで治療の効果を判断することもできます。
実際には、CT、PETといった画像診断や骨髄検査などで評価します。また、神経組織にリンパ腫の細胞が浸潤しているかどうかを調べるために、脳脊髄液検査を行うことがあります。脳への浸潤の有無については、CTやMRIの結果によって診断されることもあります。
非ホジキンリンパ腫の分類方法
非ホジキンリンパ腫は、腫瘍組織の形態、「がん」化しているリンパ球の種類、染色体異常や遺伝子異常の有無などを参考に、さらに細かく分類されます。この分類は治療方針にも影響する重要なものです。
形態による分類
非ホジキンリンパ腫の分類では、特に生検で得られた腫瘍組織の病理検査の結果が重要です。腫瘍組織は病理医によって詳細に検討され、濾胞性リンパ腫、びまん性リンパ腫といった形態の違いによる分類がなされます。
「がん」化したリンパ球の種類による分類
正常なリンパ球は、B細胞、T細胞、NK細胞に分けられます。従って、非ホジキンリンパ腫については、「がん」化したリンパ球の種類によってB細胞性リンパ腫、T細胞性リンパ腫、NK細胞リンパ腫というように分けることもできます。
非ホジキンリンパ腫の大半(80~85%)がBリンパ球から発生し、残りはTリンパ球またはナチュラルキラー細胞から発生します。
この分類は、腫瘍細胞の表面に存在する表面抗原という蛋白質のパターンを調べて決定されます。通常は、生検で腫瘍組織を採取した際に病理検査と並行して行われます。
染色体異常
非ホジキンリンパ腫では、染色体異常や遺伝子異常が認められるケースも珍しくありません。どのような染色体異常あるいは遺伝子異常を有しているかということも分類する際の参考にされます。
非ホジキンリンパ腫の悪性度による3つの分類
以上の検査の結果を総合的に判断して、最終的にいくつかのタイプに分類されます。非ホジキンリンパ腫は病気の進行の早さや症状の激しさ(悪性度)によって3つに分類されています。治療前の進行のスピードや症状の激しさによって、「ゆっくり進行するタイプ」「活動性の強いタイプ」「最も激しいタイプ」の3つのグループに大きく分けられます。
ゆっくり進行するタイプ(低悪性度)
濾胞性リンパ腫に代表される「ゆっくり進行するタイプ」は自覚症状が現れにくいため、かなり病変が大きくなってから病院を受診して診断されることがあります。進行は遅いのですが、一方で治癒することが難しいタイプでもあります。
濾胞性リンパ腫(FL)は、非ホジキンリンパ腫全体の10~20%を占める、代表的なインドレント(低悪性度)B細胞リンパ腫です。
活動性の強いタイプ(中悪性度)
日本で最も多いタイプは、中間の「活動性の強いタイプ」に含まれるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と呼ばれるもので、非ホジキンリンパ腫の約30~40%を占めます。このタイプは比較的進行が早いため、早い時期から治療を開始します。
最も激しいタイプ(高悪性度)
「最も激しいタイプ」は、無治療の場合には週単位で急速に進行するため、急いで治療を開始する必要があります。しかし、治療反応が良好なケースも少なくありません。
このように非ホジキンリンパ腫の分類は、予後の推測や治療方針の決定という点でも欠かせないものです。
2025年現在の非ホジキンリンパ腫治療法
悪性リンパ腫の治療では、抗がん剤や分子標的薬を組み合わせて投与する多剤併用療法が治療の中心となります。薬剤の組み合わせにはさまざまなパターンがあります。
非ホジキンリンパ腫の患者さんに対する初回治療には、3種類の抗がん剤(シクロフォスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン)とステロイド(プレドニゾロン)の併用療法(CHOP法)、CHOP療法に抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブを併用するR-CHOP療法、抗CD79b抗体薬物複合体であるポラツズマブ ベドチンを併用するPola-R-CHP療法、ベンダムスチンとリツキシマブを併用するBR療法などの治療法があり、病型や患者さんの状態によって治療法を選択します。
CAR-T療法などの最新治療
2025年現在、CAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法が再発・難治性の非ホジキンリンパ腫の治療選択肢として確立されています。CAR-T治療により、従来の抗がん剤治療や骨髄移植治療で治らなかった病気でも、治せるようになりました。
NCCNガイドラインの最新版 (Version 1.2025) では、免疫エフェクター細胞関連血球毒性 (ICAHT) の概念が追加されるなど、CAR-T細胞療法の管理方法が更新されています。
非ホジキンリンパ腫の主要タイプと特徴
悪性度 | 主な病型 | リンパ球の種類 | 特徴・治療 |
---|---|---|---|
ゆっくり進行するタイプ | 濾胞性リンパ腫 | B細胞 | 完治が難しいとされてきたが、新薬や造血幹細胞移植に期待 |
MALTリンパ腫 | B細胞 | 胃に限局している場合、ピロリ除菌が有効のことがある | |
活動性の強いタイプ | びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 | B細胞 | 最も多いタイプ。抗体医薬(リツキサン)が有効のことが多い |
マントル細胞リンパ腫 | B細胞 | 治療が難しいタイプだが、分子標的薬などが期待されている | |
末梢性T細胞リンパ腫 | T細胞 | 治療が難しいタイプだが、造血幹細胞移植に期待 | |
血管免疫芽球T細胞リンパ腫 | T細胞 | 一般的に治療が難しい。副腎皮質ホルモン剤が有効なことがある | |
未分化大細胞型リンパ腫 | T細胞 | 特定の遺伝子(ALK遺伝子)の異常が見られることが多い | |
鼻NK・T細胞リンパ腫 | NK細胞 | 化学療法と放射線療法との併用療法が行われる | |
最も激しいタイプ | バーキットリンパ腫 | B細胞 | 無治療の場合は急速に悪化。化学療法が効くことも多い |
リンパ芽球性リンパ腫 | B細胞あるいはT細胞 | 無治療の場合は急速に悪化。化学療法が効くことも多い | |
成人T細胞白血病・リンパ腫 | T細胞 | 治療が難しいが、造血幹細胞移植が期待されている |
非ホジキンリンパ腫の予後と生存率
5年全生存率はホジキンリンパ腫 80~90%以上、非ホジキンリンパ腫 約60~70%と差があります。しかし、ほとんどの場合、治癒が期待できますが、そうでなくても何年にもわたって生きることができます。
一例として、非ホジキンリンパ腫のうち、最も一般的で全体の25%程度を占めるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、現在の治療で全体の約半数の患者さんが治癒すると報告されています。
2009~2011年にがんと診断された人の5年相対生存率は男女計で64.1 %(男性62.0 %、女性66.9 %)です。治療技術の進歩により、生存率は年々向上しています。
まとめ
非ホジキンリンパ腫は日本の悪性リンパ腫の90%以上を占める重要な疾患です。症状は主にリンパ節の腫脹から始まりますが、診断には生検による病理検査が必要です。
悪性度によって3つのタイプに分類され、それぞれに適した治療法が選択されます。2025年現在では、従来のCHOP療法やR-CHOP療法に加え、CAR-T療法などの最新治療も利用可能となり、治療成績の改善が期待されています。