悪性リンパ腫は、白血球の1つであるリンパ球が"がん"化し、リンパ節や脾臓をはじめとするリンパ組織を中心に、無制限に増殖していく病気です。リンパ節以外の他の臓器へと進展することもあります。
腫瘍組織の形態の違いによって大きく、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫とに分けられますが、日本では非ホジキンリンパ腫が圧倒的に多く、90%以上を占めています。
非ホジキンリンパ腫は、いくつものタイプに分類され、それぞれのタイプによって進行のスピードなどが異なります。
原因は
はっきりとした原因はわかっていませんが、加齢、放射線や有機剤の曝露など、さまざまな要素によって生じた遺伝子の傷が発症に深く関わっていると考えられています。親から子供へと遺伝する病気ではありません。
検査方法について
悪性リンパ腫が疑われた場合は、特に生検による病理検査(顕微鏡でがん細胞の有無を確認する検査)が重要で、この結果により最終的に非ホジキンリンパ腫との確定診断が得られます。また、非ホジキンリンパ腫のどのタイプに該当するかといったことも決定されます。
確定診断されると、次に病気の拡がりについて評価することになります。病気の拡がりの程度は、予後を決める重要な要素となりますし、また治療後の状態と比較することで治療の効果を判断することもできます。
実際には、CT、PETといった画像診断や骨髄検査などで評価します。また、神経組織にリンパ腫の細胞が浸潤しているかどうかを調べるために、脳脊髄液検査を行うことがあります。脳への浸潤の有無については、CTやMRIの結果によって診断されることもあります。
非ホジキンリンパ腫の分類
非ホジキンリンパ腫は、腫瘍組織の形態、"がん"化しているリンパ球の種類、染色体異常や遺伝子異常の有無などを参考に、さらに細かく分類されます。この分類は治療方針にも影響する非常に大切なものです。
・形態による分類
非ホジキンリンパ腫の分類では、特に生検で得られた腫瘍組織の病理検査の結果が重要です。腫瘍組織は病理医によって詳細に検討され、濾胞性リンパ腫、びまん性リンパ腫といった形態の違いによる分類がなされます。
・"がん"化したリンパ球の種類による分類
正常なリンパ球は、B細胞、T細胞、NK細胞に分けられます。従って、非ホジキンリンパ腫については、"がん"化したリンパ球の種類によってB細胞性リンパ腫、T細胞性リンパ腫、NK細胞リンパ腫というように分けることもできます。
この分類は、腫瘍細胞の表面に存在する表面抗原という蛋白質のパターンを調べて決定されます。通常は、生検で腫瘍組織を採取した際に病理検査と並行して行われます。
・染色体異常
非ホジキンリンパ腫では、染色体異常や遺伝子異常が認められるケースも珍しくありません。どのような染色体異常あるいは遺伝子異常を有しているかということも分類する際の参考にされます。
非ホジキンリンパ腫は大きく3つのグループに分けられる
以上の検査の結果を総合的に判断して、最終的にいくつかのタイプに分類されます。治療前の進行のスピードや症状の激しさによって、「ゆっくり進行するタイプ」「活動性の強いタイプ」「最も激しいタイプ」の3つのグループに大きく分けられます。
<ゆっくり進行するタイプ>
濾胞性リンパ腫に代表される「ゆっくり進行するタイプ」は自覚症状が現れにくいため、かなり病変が大きくなってから病院を受診して診断されることがあります。進行は遅いのですが、一方で治癒することが難しいタイプでもあります。
<活動性の強いタイプ>
日本で最も多いタイプは、中間の「活動性の強いタイプ」に含まれるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と呼ばれるもので、非ホジキンリンパ腫の約30~40%を占めます。このタイプは比較的進行が早いため、早い時期から治療を開始します。
<最も激しいタイプ>
「最も激しいタイプ」は、無治療の場合には週単位で急速に進行するため、急いで治療を開始する必要があります。しかし、治療反応が良好なケースも少なくありません。
このように非ホジキンリンパ腫の分類は、予後の推測や治療方針の決定という点でも欠かせないものです。
非ホジキンリンパ腫の3つのタイプ(まとめ)
<ゆっくり進行するタイプ>
・濾胞性リンパ腫(リンパ球の種類:B細胞)
完治が難しいとされてきたが、新薬や造血幹細胞移植に期待
・MALTリンパ腫(リンパ球の種類:B細胞)
胃に限局している場合、ピロリ除菌が有効のことがある
<活動性の強いタイプ>
・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(リンパ球の種類:B細胞)
最も多いタイプ。抗体医薬(リツキサン)が有効のことが多い
・マントル細胞リンパ腫(リンパ球の種類:B細胞)
治療が難しいタイプだが、リツキサンやセヴァリンが期待されている
・抹消性T細胞リンパ腫(リンパ球の種類:T細胞)
治療が難しいタイプだが、造血管細胞移植に期待
・血管免疫芽球T細胞リンパ腫(リンパ球の種類:T細胞)
一般的に治療が難しい。副腎皮質ホルモン剤が有効なことがある
・未分化大細胞型リンパ腫(リンパ球の種類:T細胞)
特定の遺伝子(ALK遺伝子)の異常が見られることが多い
・鼻NK・T細胞リンパ腫(リンパ球の種類:NK細胞)
化学療法と放射線療法との併用療法が行われる
<最も激しいタイプ>
・バーキットリンパ腫(リンパ球の種類:B細胞)
無治療の場合は急速に悪化。化学療法が効くことも多い
・リンパ芽球性リンパ腫(リンパ球の種類:B細胞あるいはT細胞)
無治療の場合は急速に悪化。化学療法が効くことも多い
・成人T細胞白血病・リンパ腫(リンパ球の種類:T細胞)
治療が難しいが、造血幹細胞移植が期待されている
以上、非ホジキンリンパ腫についての解説でした。