
①が傍大動脈リンパ節
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
子宮体がんのステージ3期と診断された患者さんにとって、これからどのような治療が行われるのか、予後はどうなのか、治療費用はどれくらいかかるのかなど、不安や疑問は尽きないと思います。
ステージ3期は進行したステージですが、適切な治療を受けることで良好な予後が期待できる段階でもあります。この記事では、ステージ3期の定義から標準的な治療法、生存率、治療費用、術後の生活まで、治療選択の思考整理に役立つ情報を詳しく解説します。
子宮体がんステージ3期とはどのような状態か
子宮体がんのステージ3期は、がんが子宮の外に広がっているものの、骨盤腔(小骨盤腔)を越えていない段階を指します。具体的には、以下のいずれかの状態が認められる場合にステージ3期と診断されます。
まず、腹腔細胞診が陽性の場合です。腹腔内に採取した液体(腹水)を顕微鏡で調べたときに、がん細胞が見つかった状態を意味します。次に、漿膜転移や付属器転移が認められる場合です。子宮の一番外側の膜である漿膜や、卵巣・卵管といった付属器にがん細胞が広がっている状態です。
さらに、膣転移がある場合もステージ3期に含まれます。子宮から膣にがん細胞が転移している状態です。また、リンパ節転移も重要な判断基準となります。骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節にがんが転移している場合、ステージ3期と診断されます。
骨盤内腹膜播種も、ステージ3期の特徴の一つです。骨盤内の腹膜にがん細胞が散らばって広がっている状態を指します。
ステージ3期の詳細な分類
ステージ3期は、がんの広がり方によってさらに細かく分類されます。この分類は、治療方針を決定する上で重要な情報となります。
| 分類 | がんの広がり | 5年生存率の目安 |
|---|---|---|
| 3a期 | 子宮漿膜への浸潤または卵巣・卵管への転移、腹腔細胞診陽性 | 約70~80% |
| 3b期 | 膣への転移または子宮傍組織への浸潤 | 約65~75% |
| 3c1期 | 骨盤リンパ節への転移 | 約60~70% |
| 3c2期 | 傍大動脈リンパ節への転移 | 約55~65% |
生存率は、がんの組織型や分化度、患者さんの年齢や全身状態によって変動します。これらの数値はあくまで統計的な目安であり、個々の患者さんの予後は様々な要因によって異なります。
傍大動脈リンパ節とは
傍大動脈リンパ節について、もう少し詳しく説明します。子宮体がんの場合、がん細胞はリンパ管を通じて転移しやすい特徴があります。傍大動脈リンパ節は、子宮からがん細胞が転移しやすい重要なリンパ節群です。
解剖学的には、腹部大動脈とその内側(背側)にある下大静脈に沿って分布しています。通常、下腹部から腎臓の下部にかけての範囲に存在するリンパ節を含めて、傍大動脈リンパ節と呼んでいます。
このリンパ節群は複数の系統に分かれており、がんの転移経路として重要な役割を果たしています。傍大動脈リンパ節への転移の有無は、予後を左右する重要な因子の一つです。
ステージ3期における標準的な治療の流れ
子宮体がんのステージ3期では、手術によってがんのある部位をできるだけ広範囲に摘出した後、抗がん剤による化学療法を追加するのが標準的な治療方針となります。この治療戦略の目的は、再発を予防し、予後を改善することにあります。
手術と化学療法を組み合わせる理由は、目に見えるがんを手術で取り除いた後も、体内に微小ながん細胞が残っている可能性があるためです。化学療法によってこれらの微小な転移を叩くことで、再発のリスクを減らすことができます。
放射線療法を追加する場合もあります。特に、骨盤内への浸潤が強い場合や、リンパ節転移が広範囲に及ぶ場合には、放射線療法が検討されることがあります。
手術の種類と範囲
ステージ3期の手術では、単純子宮全摘出術を基本としますが、がんの広がり方によっては広汎子宮全摘出術が選択されることもあります。
単純子宮全摘出術は、子宮と子宮頸部を摘出する手術です。周囲の組織への浸潤が限定的な場合に選択されます。一方、広汎子宮全摘出術は、子宮だけでなく、子宮を支える靱帯や膣の一部、子宮周囲の組織を広範囲に切除する手術です。膣転移や子宮傍組織への浸潤が認められる場合に必要となります。
いずれの手術方法でも、両側の付属器(卵巣と卵管)を同時に摘出します。子宮体がんは、卵巣や卵管に転移しやすい性質があるためです。また、腹腔細胞診を行い、腹腔内にがん細胞が浮遊していないかを確認します。
リンパ節郭清の重要性
ステージ3期の手術では、後腹膜リンパ節郭清が重要な手技となります。具体的には、骨盤リンパ節郭清と傍大動脈リンパ節郭清を行います。
骨盤リンパ節郭清では、骨盤内に分布するリンパ節を系統的に摘出します。一方、傍大動脈リンパ節郭清では、腹部大動脈周囲のリンパ節を広範囲に切除します。
傍大動脈リンパ節郭清を含む手術は、技術的に難度が高く、手術時間も長くなります。通常、傍大動脈リンパ節郭清を行う場合、手術時間は7~8時間程度かかることが一般的です。
リンパ節郭清の目的は二つあります。一つは、転移しているリンパ節を摘出することで、がんの総量を減らすことです。もう一つは、リンパ節の状態を病理学的に調べることで、正確な進行度を判定し、術後の治療方針を決定することです。
大網切除について
ステージ3期の手術では、大網切除も追加されることがあります。大網とは、胃から垂れ下がるように存在する脂肪組織を含む膜状の構造物です。
子宮体がんが進行すると、大網に転移することがあります。そのため、転移の可能性がある場合や、予防的な意味で大網を切除することがあります。大網切除によって、腹腔内の転移巣を減らすことができます。
腫瘍減量術という考え方
ステージ3期の手術は、がんの総量を減らすという意味で「腫瘍減量術」と呼ばれることがあります。
腫瘍減量術の概念は、できるだけ多くのがん細胞を手術で取り除くことで、残存するがん細胞の量を減らし、術後の化学療法の効果を高めることにあります。がん細胞の量が少ないほど、抗がん剤がより効果的に働くと考えられています。
そのため、ステージ3期の手術では、転移の可能性がある部位をできるだけ広範囲に摘出する方針がとられます。これにより、再発のリスクを下げ、予後の改善につながることが期待されます。
化学療法の詳細
手術後の化学療法は、ステージ3期の標準治療において不可欠な要素です。化学療法の目的は、手術では取りきれなかった微小な転移や、体内に残存している可能性のあるがん細胞を攻撃することです。
使用される抗がん剤の種類
子宮体がんのステージ3期における術後化学療法では、主にプラチナ製剤とタキサン系抗がん剤が使用されます。
最も一般的なレジメン(抗がん剤の組み合わせと投与スケジュール)は、カルボプラチンとパクリタキセルの併用療法です。これは「TC療法」とも呼ばれ、国内外のガイドラインで推奨されている標準的な治療法です。
カルボプラチンはプラチナ製剤の一種で、DNA合成を阻害してがん細胞の増殖を抑えます。パクリタキセルはタキサン系の抗がん剤で、細胞分裂を阻害する作用があります。この二つの薬剤を組み合わせることで、相乗効果が期待できます。
化学療法のスケジュール
一般的な化学療法のスケジュールは、3週間を1サイクルとして、6サイクル(約4~5ヶ月)実施されます。
具体的には、1日目にカルボプラチンとパクリタキセルを点滴で投与し、その後2週間は休薬期間となります。3週間経過したら、再び同じ投与を行います。このサイクルを6回繰り返すのが標準的な方法です。
投与は通常、外来で行われますが、副作用の程度によっては入院での治療が選択されることもあります。
化学療法の副作用と対策
化学療法には様々な副作用があります。主な副作用を理解し、適切に対処することが重要です。
| 副作用 | 出現時期 | 主な対策 |
|---|---|---|
| 悪心・嘔吐 | 投与後数時間~数日 | 制吐剤の使用、少量ずつの食事 |
| 骨髄抑制(白血球減少) | 投与後7~14日 | 感染予防、G-CSF製剤の使用 |
| 末梢神経障害 | 累積投与後 | ビタミン剤、保温、早期の相談 |
| 脱毛 | 投与後2~3週間 | ウィッグの準備、頭皮の保護 |
| 倦怠感 | 治療期間中 | 十分な休息、無理のない活動 |
骨髄抑制により白血球が減少すると、感染症にかかりやすくなります。手洗いやうがいを徹底し、人混みを避けるなどの感染予防策が重要です。
末梢神経障害は、手足のしびれや感覚の鈍化として現れます。症状が強い場合は、抗がん剤の減量や変更が検討されることもあります。早めに医療スタッフに相談することが大切です。
放射線療法の役割
ステージ3期の治療において、放射線療法が追加されることがあります。放射線療法の適応は、がんの広がり方や手術の結果によって判断されます。
放射線療法が検討されるケース
骨盤内への浸潤が強い場合、特に膣への転移や子宮傍組織への浸潤が認められる場合には、術後の骨盤照射が検討されます。また、リンパ節転移が広範囲に及ぶ場合も、放射線療法の適応となることがあります。
手術で取りきれなかった病変が残存している場合や、切除断端にがん細胞が認められた場合にも、放射線療法が追加されます。
放射線療法の方法
放射線療法には、外部照射と腔内照射があります。外部照射は、体の外から放射線を照射する方法で、骨盤全体や傍大動脈リンパ節領域を照射します。
腔内照射は、膣内に放射線源を挿入して、膣壁に局所的に照射する方法です。膣断端の再発予防に有効とされています。
治療期間は通常5~6週間程度で、週5日、1日1回の照射を行います。外来通院で治療を受けることが一般的です。
放射線療法の副作用
放射線療法の副作用には、急性期の副作用と晩期の副作用があります。
急性期の副作用としては、下痢、頻尿、皮膚の炎症などが挙げられます。これらは治療終了後、数週間から数ヶ月で改善することが多いです。
晩期の副作用としては、腸管の狭窄や癒着、膀胱炎、膣の狭窄などがあります。これらは治療終了後、数ヶ月から数年経過してから出現することがあります。
治療にかかる費用と期間
ステージ3期の治療には、相応の費用と時間がかかります。経済的な準備と生活設計のために、治療費用の目安を知っておくことは重要です。
手術費用
単純子宮全摘出術にリンパ節郭清を加えた手術の場合、3割負担で約30~50万円程度が目安となります。広汎子宮全摘出術や傍大動脈リンパ節郭清を含む場合は、さらに高額になり、3割負担で約50~80万円程度となることがあります。
入院期間は通常2~3週間程度です。手術の範囲が広い場合や、合併症が生じた場合には、入院期間が延びることがあります。
化学療法の費用
TC療法を6サイクル実施した場合、3割負担で約30~50万円程度が目安です。使用する抗がん剤の種類や投与量によって、費用は変動します。
外来での化学療法が可能な場合は、入院費用がかからないため、総額は抑えられます。
放射線療法の費用
放射線療法を実施する場合、3割負担で約20~30万円程度が追加でかかります。照射範囲や回数によって費用は異なります。
高額療養費制度の活用
医療費が高額になる場合、高額療養費制度を利用することで、自己負担額を軽減できます。この制度では、所得に応じて月額の自己負担上限額が設定されています。
70歳未満で年収約370~770万円の場合、月額の自己負担上限額は約8万円程度となります。事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、医療機関での支払い時から上限額までの支払いで済みます。
がん治療は数ヶ月にわたることが多いため、制度をよく理解して活用することが大切です。詳細については、加入している健康保険組合や市区町村の窓口に相談してください。
術後の生活と経過観察
治療が終了した後も、定期的な経過観察が必要です。再発の早期発見や、後遺症への対応のために、計画的な検査とフォローアップが行われます。
経過観察のスケジュール
治療終了後2年間は、3ヶ月ごとに外来受診するのが一般的です。3年目から5年目までは、6ヶ月ごとの受診となります。5年以降は、年1回の受診が推奨されます。
受診時には、問診、内診、血液検査(腫瘍マーカーCA125など)が行われます。また、年1~2回程度、CTやMRIなどの画像検査を実施して、再発の有無を確認します。
術後の後遺症と対処法
リンパ節郭清を行った場合、リンパ浮腫が生じることがあります。リンパ浮腫とは、リンパ液の流れが滞ることで、脚がむくむ症状です。
予防策としては、長時間の立ち仕事を避ける、適度な運動をする、弾性ストッキングを着用するなどがあります。症状が出た場合は、リンパドレナージュ(リンパマッサージ)や圧迫療法が有効です。
卵巣を摘出するため、更年期症状が出現することがあります。ホットフラッシュ(ほてり)、発汗、イライラ、不眠などの症状に対しては、ホルモン補充療法や漢方薬による治療が検討されます。
広汎子宮全摘出術を受けた場合、排尿障害が生じることがあります。膀胱の神経が影響を受けるためです。症状に応じて、薬物療法や膀胱訓練が行われます。
日常生活での注意点
治療後は、無理のない範囲で日常生活を送ることが大切です。適度な運動は体力の回復に役立ちますが、過度な運動は避けましょう。
栄養バランスの取れた食事を心がけることも重要です。特に、化学療法中や直後は、免疫力が低下しているため、生ものは避け、十分に加熱した食品を摂るようにしてください。
精神的なサポートも必要です。がんという病気と向き合うことは、精神的な負担が大きいものです。家族や友人、医療スタッフに相談したり、患者会に参加したりすることで、心の支えを得ることができます。
セカンドオピニオンの重要性
ステージ3期のような進行したがんの治療では、複雑な判断が必要となります。治療方針に迷ったり、他の選択肢を知りたい場合には、セカンドオピニオンを求めることが推奨されます。
セカンドオピニオンとは、現在の主治医以外の医師に、診断や治療方針について意見を聞くことです。複数の専門家の意見を聞くことで、より納得した上で治療を選択することができます。
セカンドオピニオンを受ける際には、これまでの検査結果や病理診断の資料、画像データなどを持参します。主治医に依頼すれば、診療情報提供書を作成してもらえます。
多くのがん診療連携拠点病院では、セカンドオピニオン外来を設けています。費用は自費診療となり、30分程度の面談で1~3万円程度が一般的です。
最新の治療動向
子宮体がんの治療は、研究の進展により年々進歩しています。ステージ3期においても、新しい治療法の開発が進められています。
分子標的薬の可能性
一部の子宮体がんでは、特定の遺伝子変異が見つかることがあります。そのような場合、分子標的薬が効果を示す可能性があります。
例えば、PTEN遺伝子の変異やPIK3CA遺伝子の変異が認められる場合、mTOR阻害薬などの分子標的薬が検討されることがあります。
また、マイクロサテライト不安定性(MSI-high)を示すがんに対しては、免疫チェックポイント阻害薬が有効であることが報告されています。
臨床試験への参加
新しい治療法の開発のために、臨床試験が行われています。標準治療で十分な効果が得られない場合や、より良い治療法を求める場合には、臨床試験への参加も選択肢の一つとなります。
臨床試験に関する情報は、国立がん研究センターのウェブサイトや、各医療機関で提供されています。参加を検討する場合は、主治医に相談してください。
まとめ
子宮体がんのステージ3期は、進行した段階ではありますが、適切な治療により良好な予後が期待できます。手術で可能な限りがんを摘出し、その後の化学療法で微小な転移を叩くという治療戦略が標準となっています。
治療は数ヶ月にわたる長期戦となりますが、医療チームと協力しながら、一歩ずつ進んでいくことが大切です。副作用や後遺症への対処法も確立されており、適切なサポートを受けながら治療を続けることができます。

