子宮内膜の組織が、子宮以外の部分にできてしまう病気を子宮内膜症、あるいは外性子宮内膜症といいます。
いっぽう、子宮の筋肉層に発生するものは、内性子宮内膜症といいます。外性子宮内膜症は、卵巣のほか、卵管、腹膜、膀胱、直腸などに発生します。まれには胸膜やリンパ節にも見られます。
生理周期に呼応して、子宮内膜と同じような増殖・出血・再生を繰り返して、さまざまな障害を引き起こします。35~45歳に発症のピークがあります。
子宮内膜症は、月経のある女性の約1割がかかりますが、近年はかなり増加傾向にあります。初産年齢が低く、出産回数も多い場合、妊娠・授乳が繰り返され、生理がない状態が長く続きます。このような人は、黄体ホルモンのプロゲステロンが十分に分泌され、卵胞ホルモンのエストロゲン分泌量は相対的に少なくなり、子宮内膜症のリスクは低くなります。
現在は、初婚年齢が29歳前後に上がり、産児数も減り、生理の総計回数、期間が増えています。子宮内膜症は、生理の量や回数が多く、エストロゲンの総量が多く、プロゲステロンが少ない人ほど発症しやすく、悪化するリスクも高まります。
近年の子宮内膜症の増加は、こうした女性の出産状況が反映していると思われます。
チョコレート嚢胞
卵巣の子宮内膜症は、表面に粒状に発生するものと、上皮が間質に落ち込んでつくる嚢胞状のものがあります。後者では、嚢胞内に古い血液が貯留して、チョコレートないしはタールのような様相になるため、「卵巣チョコレート嚢胞(子宮内膜症性卵巣嚢胞)」と呼ばれます。
近年、このチョコレート嚢胞から、0.7~3.4%の割合で、類内膜腺がんや明細胞腺がんなどの、卵巣がんが発症することが分かってきました。
40歳以上では4%、チョコレート襄胞が10cm以上だと10%以上に卵巣がんが合併するという報告もあります。またチョコレート襄胞があると、特定遺伝子に異常が起きるものがあることも明らかになってきました。
チョコレート嚢胞のできるメカニズムや、がん化の時期は不明です。そのため罹患後の定期的な検診は大切になっています。
以前、子宮内膜症は、閉経すれば完治すると考えられていました。ところがチョコレート蕊胞は、閉経後、小さくはなりますが、消失することは少なく、卵巣がんを発生することが知られるようになり、閉経後も放置できなくなり、早めの治療が実施されるようになっています。
また低年齢層でも、嚢胞が大きくなると、卵巣がんのリスクも高くなるため、早期に発見し、継続的に病状を診て大きくなるようであれば、鍵胞のみの摘除による治療が推奨されています。
以上、チョコレート嚢胞についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。