2012年4月、手術支援ロボット「ダヴィンチ」による手術が「前立腺の手術」で健康保険の適用となり、大きな話題となりました。
肺がん手術の場合はまだ保険適用ではなく、約198万円の費用がかかりますが、希望すれば受けることが可能です(適応内だった場合)。
肺がんにおけるロボット手術は「肺葉切除術」が行われています。肺は右肺が上・中・下葉の3つに分かれ、左肺は上・下葉の2つに分かれています。そのがんのある1葉を切除すると共に、周囲のリンパ節切除を行うことが可能です。
ロボット手術では、患者のわきの下に刺しキズを4か所につけ、そこからロボットアームを挿入します。術者は手術室の隅でコンソールボックスに向かい、患者の胸の中を3D画像で見ながら遠隔操作で手術します。
ロボット手術はロボットハンドの先端が人間の手以上に自由自在に動き、狭いところであればなおさら操作はやりやすいことが特徴です。視覚が3Dであることも大きなメリットで、手術する医師は開胸手術を行っているような感じで治療できるといいます。
もちろん、ロボット手術にも短所があり、ロボットアームから臓器に触れる感触がないことがその1つです。視覚から感触を想像することになり、それゆえに使いやすい肺専用の手術器具のラインナップの充実や医師の熟練が必要です。
また、臓器に隠れた奥の血管の走行が分かりませんが、それも3D画像解析システムの「シナプスヴィンセント」の活用により、より安全な手術ができるように進化しています。
シナプスヴィンセントは肺がん手術用の"術中ナビゲーションシステム”です。肺がんの診断・治療計画にはCT(コンピュータ断層撮影)は不可欠ですが、そのCT画像をシナプスヴィンセントに入力すると、その人の手術解剖の情報が3D化で再現されるのです。
それにより人によって違う血管の詳細が分かります。手術前の綿密な手術計画や手術リハーサルにも大いに役立ちます。
このシステムは、ロボット手術のみならず胸腔鏡手術、開胸手術などすべての手術でより安全な手術を支えるようになっています。
以上、肺がんのロボット手術についての解説でした。