日本女性の場合、乳がんの6割は女性ホルモン(エストロゲン)やプロゲステロンによって増殖するがんです。
発がんそのものは別の因子で起こっても、細胞分裂の加速(プロモーション)が女性ホルモンによって促される、ということです。このため、次のような条件の女性は女性ホルモンにさらされる期間が長くなるため、乳がんにかかるリスクが普通の女性より高いと言われています。
・初潮が早い
・出産をしなかったか、出産年齢が遅いか、出産回数が少ない
・閉経が遅い
乳がんには様々なタイプ(ホルモン感受性が高いかどうかなど)がありますが、そのタイプは手術によって切除したがん組織の病理検査によってわかります。女性ホルモンによって増殖した乳がんとわかった患者に対しては、女性ホルモンの分泌を抑制する療法(ホルモン療法)が行われます。つまりがんが増殖するための源を断つ治療になります。
それならば閉経後の女性は、乳がんのリスクが低くなるはずですが、現実には閉経後に属する50歳代後半、60歳代も決して乳がんの罹患率が低くありません。
それはなぜかというと、ひとつには、乳がんがそれと診断できるまでに10年~20年もの時間がかかり、結果的に女性ホルモンにさらされている期間は若い年齢層と同様になるという理由が挙げられます。
そしてもうひとつは、脂肪組織です。卵巣から分泌される女性ホルモンが減るかわりに、閉経後に増える脂肪組織にアロマターゼというエストロゲンを分泌する酵素が増えます。そのため、閉経後の肥満は乳がんを引き起こす可能性があるので、要注意ということになります。
また、このような理由から女性ホルモン依存性の閉経後の女性の乳がんに対しては、アロマターゼを阻害するホルモン治療が第一選択となります。
以上、乳がんと女性ホルモンについての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。