がん患者さんの苦痛は、体だけでなく心にももたらされます。
心へのストレスは、多くの人が同じようなプロセスをたどり、そのあとに病気を受け入れられることが多いです。
まずはじめに起きるのが、がんの告知や再発・転移を知らされたときの、衝撃や否定、絶望の感情です。あまりのショックで、何の感情もわかなかったり、自分のことでないような非現実的な心理になることもあります。
抑うつ状態の時期から立ち直りの時期へ
その後、現実逃避の時期が過ぎると、不安や悲しみが交互に襲ってきたり、不安定な精神状態から呼吸困難、不眠、食欲不振など身体的な症状が現れるようになります。
そして、こうした抑うつ状態の時期が過ぎると、徐々に心が落ち着いていき、日常の自分自身を取り戻していきます。こうした心のプロセスは、告知や再発・転移のときだけでなく、治療の間、何度もくり返します。
たち直りの状態とは
病気に向き合い、前向きに治療に取り組むことは大切ですが、無理に明るく元気を装うことが立ち直ることではありません。元来おとなしい性格の人が、がん治療のために積極的にならなければと無理をしても、そのギャップがストレスになることもあります。
心の動きのプロセス
がんの告知、検査結果への不安、再発の疑い、転移が認められたとき、抗がん剤が効かなくなったときなど
①衝撃・否定・絶望(1週間程度)
・何の感情もわかない
・現実のように思えない
・「きっと何かの間違いだ」という否定的感情
・「もうおしまいだ」という絶望感
・「治療なんて、どうせ無駄だ」という挫折感
②抑うつ状態(1~2週間程度)
・不安や悲しみが交互に襲う
・気分が落ち込む
・「どうして自分だけがこんな目にあうのか」という怒り
・「体調管理が悪かったせいだ」という自分を責める気持ち
・「もう普通に生活できない。自分は1人だ」という孤独感、疎外感
・集中力の低下
・呼吸困難や不眠、食欲不振など身体的症状
③再適応・立ち直り
・心が徐々に落ち着いてくる
・日常の自分を取り戻す
・病気を受け入れて、生きることへの意欲がわいてくる
・外部の人たちと積極的に関わりを持とうとする
以上、がんに伴うメンタルケアについての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。