腎臓がんの分野では、近年新しい薬が次々と開発・承認されています。主な薬のタイプは分子標的薬といわれる、がん細胞特有の増殖要素を抑えるものがほとんとです。
日本では次にあるように、すでに6種類の分子標的薬が承認され、腎臓がんの治療に使われています。
<日本の厚生労働省が承認した腎臓がんの薬>
・ソラフェニブ(ネクサバール):2006
・テムシロリムス(トーリセル):2007
・スニチニブ(スーテント):2008
・エベロリムス(アフィニトール):2009
・アキシチニブ(インライタ):2012
・パゾパニブ(ヴォトリエント):2013
さらに、日本を含めて世界共通の同時臨床試験が、PD-1抗体といわれる薬剤で進行しています。このPD-1抗体は、先に述べた分子標的薬が効かなくなった患者さんにも効果が認められており、新たな期待が寄せられている薬剤です。腎臓がんの領域では、次々と新しい薬剤が開発されています。
転移を来すなどして、1度、進行したときの有効な治療法がなかった腎臓がんでは、今まで、様々な免疫療法に関する研究が積み重ねられてきましたが、ここにきて、治療体系が大きく変わってきています。
腎臓がんの薬物療法の課題
しかしながら、まだ問題は多く、転移した腎臓がんに対してはこれらの分子標的薬単独では、がん病巣を完全に消滅させることはできません。
そして、1つの薬剤が効かなくなると、次の薬剤というように、続けて何種類かの薬剤を投与することになるのですが、このような複数の薬剤による継続治療の生命予後への効果は、まだあまりよくわかっていません。
ただ、生存期間自体は大きく延長できなくても、病気の進行が遅くなるということは意味のあることです。もちろん薬の副作用もあるので慎重に経過をみなければなりません。
新薬は価格も非常に高価
新しく承認された分子標的薬のほとんどは高価です。1年間治療を続けられたとすると、その薬価は、例えばソラフェニブの場合なら単純に計算すると、700万円以上になります。これらは保険適応になっており、また、高額療養費制度を利用できますが、患者や国の医療制度への負担は決して軽くはありません。
このような背景もあり、厚生労働省では、新しく開発された薬剤に関しては、効果と副作用の調査を、新薬発売後に推奨(時には義務として開発企業に命令)し、より安全かつ有効な使用法の臨床的検討を行なっています。
これらの薬は、がんの発生のメカニズムに踏み込んだ新しいコンセプトのもとに開発された薬剤ですので、今まで知られていなかった副作用が認められます。
人によって現れ方やその程度がかなり違います。したがって、十分な医療体制が整った専門の医療機関での治療が重要となります。
腎臓がんでの分子標的薬では、最初に発売された、ネクサバールとスーテントについては、使用患者全員について調査を義務付ける、市販後全例調査が行なわれています。
腎臓がんの治療体系を大きく変えつつある期待の分子標的薬ですが、まだまだ課題も多く、開発の途上にあります。
以上、腎臓がんの新薬についての解説でした。