抗がん剤などの薬で呼吸器の症状が起こるケースは以前より減少傾向にあります。ただ、「間質性肺炎」は、頻度は低いものの重い症状をもたらすので要注意です。
間質性肺炎が疑われたらすぐに治療は中止する
咳や息切れなどの呼吸器症状は専門的には「肺毒性」といい、肺の細胞が薬の作用でダメージを受けたり、薬に対する免疫反応の1つとして起こったりします。
薬を投与後数週間~数カ月で、乾いた咳、動いたときの息切れ、微熱などが現れる「慢性型」と、治療をしたあとすぐに発熱、咳、息切れなどが現れる「急性型」があります。
体力が低下している人や日常の活動度が低い人、肺に持病がある人、高齢者などで発症のリスクが高いとされ、予防的に抗菌薬や抗真菌薬が投与されることがあります。
こうした呼吸器症状のなかで、とくに注意しなければならないのは、「間質性肺炎」です。肺の上皮細胞などに起こった炎症を放置すると、ガス交換をしている肺胞と肺胞の間の組織(間質)がむくんできます。
この状態が続くと肺が線維化し、呼吸機能が低下します。これが間質性肺炎で、発生頻度は低いものの、重症化すると死に至るおそれがある副作用の1つです。2002年以降、肺がんで使われる分子標的薬のゲフィチニブ(イレッサ)で生じた間質性肺炎が問題となりましたが、これ以外の抗がん剤、分子標的薬でも起こります。また、がんの治療薬に限らず、さまざまな薬で生じます。
薬の投与中に咳や息切れなどの症状が見られたら、胸部X線やCTなどの画像検査や血液検査などが行われます。
一般的な感染症が原因だと分かったら治療は継続しますが、間質性肺炎が疑われたら治療を中止し、症状が改善しないときは、ステロイド薬の注射や、短期間に大量のステロイド薬を点滴する「ステロイドパルス療法」を行います。
以上、抗がん剤の副作用についての解説でした。