発生頻度は人□100万人あたり20人と非常にまれな病気ですが、分子標的薬の登場で治療法は変化を見せています。
GIST(Gastrointestinal Stromal Tumor)とは
食道、胃、小腸、大腸などの消化管には、消化管を動かすためにペースメーカー的なはたらきをしている細胞があり、発見者の名前から「カハールの介在細胞」と呼ばれます。
GIST(Gastrointestinal Stromal Tumor)とは、このカハール介在細胞が悪性腫瘍化したものです。カハール介在細胞にある受容体(KITやPDGFRA)の遺伝子変異が原因で発生すると考えられています。
GISTができる場所で1番多いのが胃です。粘膜上皮に発生する胃がんと違って、GISTは粘膜下層の筋層にできるため、粘膜表面は異常がなく、下から押し上げられて盛り上がっているように見えるのが特徴です。
治療方針は?
GISTの治療では、手術が第1選択です。薬物療法の対象になるのは、手術不能進行がんや手術で取り切れなかったとき、術後に再発したときなどです。
手術不能の進行GISTの1次治療では、イマチニブ(グリベック)単独療法が用いられます。奏効率は6割以上で、患者さんの半数は約2年間以上病状がコントロールでき、生存期間中央値も約5年と報告されています。
イマチニブが効かなくなったときの2次治療ではスニチニブ単独療法が選ばれます。スニチニブは手足症候群などの副作用が出やすいので、保湿クリームを塗って予防するなど早め早めの対応が必要です。
イマチニブ単独療法は、術後補助化学療法でも有効なことが分かっています。根治手術をしたハイリスク群を対象にしたヨーロッパの大規模臨床試験(スカンジナビア試験)で、手術後にイマチニブ単独療法を3年間続けると生存率がよくなることが実証されました。
GISTは遺伝子変異のターゲットがはっきりしており、そのためGISTの薬物療法は、分子標的薬のイマチニブの登場で大きく変わりました。それ以前は他の消化管肉腫と同様に、決して予後のよい腫瘍ではなかったのですが、イマチニブの投与によって予後がよくなりました。
イマチニブはKITとPDGFRAを標的にした薬で、慢性骨髄性白血病にも使われます。2008年には腎がんで使われているスニチニブ(スーテント)も承認され、イマチニブに耐性ができて効かなくなるイマチニブ抵抗性GISTにも対処できるようになりました。
さらに両方とも効かなくなった人の3次治療として、2013年には分子標的薬のレゴラフェニブ(スチバーガ)が承認されています。
以上、GISTの治療法についての解説でした。