前立腺がんは高齢の人がかかりやすい病気です。生活の欧米化、検診の普及による早期発見率の上昇などにより、日本では近年、患者数の増加と若年化が明らかな傾向です。薬物療法では最近はホルモン剤で治療をする内分泌療法が主流になっています。
ホルモン療法の効果が薄れてくると分子標的薬や抗がん剤による治療が選択されます。
前立腺がんの病期と標準治療
・A期
前立腺肥大症の手術などでがんが偶然見つかった
標準治療:待機療法
・B期
がんが前立腺内に限局している
標準治療:手術あるいは放射線療法、高齢者などでは内分泌療法
・C期
がんが前立腺被膜の外まで浸潤している
標準治療:内分泌療法+手術、あるいは放射線療法、あるいは手術単独、あるいは内分泌療法+放射線療法
・D期
リンパ節や骨、内臓などに遠隔転移している
標準治療:内分泌療法、あるいは化学療法
病期と悪性度で判定 進行がんには薬物療法
前立腺がんの治療方針は、病期と悪性度によって決まり、その人の年齢や体力、基礎疾患の有無なども考慮されます。
病期は、がんのある部位やその大きさ、転移の有無などからA~D期に分けられます。がんの悪性度は、「グリーソンスコア」という指標を使って表します。悪性度を示すスコアは2~10の9段階に分かれており、数が多いほど悪性度が高いことになります。
・限局がん(B期)
がんが前立腺内にとどまっている限局がんの場合(B期)は手術、あるいは放射線療法を行うのが一般的です。
手術は「前立腺全摘除術」が標準的な治療です。放射線療法は体外からがんのある部分に放射線を照射する方法や、放射性同位元素が密封されたシード針を前立腺に埋め込む「小線源療法」などがあります。
・進行がん(C期、D期)
転移はないものの、がんが前立腺の被膜外側に飛び出している状態(C期)の標準的な治療は、まだ確立されておらず、手術、内分泌療法、放射線療法を組み合わせた複合的な治療が試みられています。
遠隔転移が認められる進行がん(D期)では、内分泌療法が行われます。また、遠隔転移のない局所浸潤がんでも、再発の危険性が高いと判断したときは、手術や放射線療法と併せて内分泌療法をすることがあります。
抗がん剤による治療(化学療法)は、内分泌療法の効果がなくなったとき(抵抗性)に選択されます。
以上、前立腺がんについての解説でした。