
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
子宮頸がんの治療では、がんの進行度や患者さんの状態に応じて様々な薬が使われます。この記事では、子宮頸がんで実際に使用される薬の種類と名前を、2026年時点の最新情報に基づいて詳しく解説します。
子宮頸がん薬物療法の中心となる薬
子宮頸がんの薬物療法において、最も中心的な役割を果たすのがプラチナ製剤です。プラチナ製剤とは、白金という金属を含む抗がん剤で、がん細胞のDNAに結合して細胞の増殖を抑える働きがあります。
プラチナ製剤の種類と特徴
シスプラチンは、子宮頸がん治療において最も基本となる薬です。効果が高い一方で、吐き気や嘔吐、腎機能障害、骨髄抑制などの副作用が出やすいという特徴があります。このため、シスプラチンを使用する場合は入院での治療が一般的です。
カルボプラチンは、シスプラチンと同じプラチナ製剤ですが、副作用がやや軽減されています。外来での投与が可能なケースもあり、患者さんの生活の質を保ちやすいという利点があります。
ネダプラチンは、日本で開発されたプラチナ製剤で、一部の施設で使用されています。
| 薬剤名 | 製品名 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| シスプラチン | ブリプラチン、ランダ | 最も基本的な薬剤、効果が高いが副作用も強い |
| カルボプラチン | パラプラチン | 副作用がやや軽減、外来投与が可能 |
| ネダプラチン | アクプラ | 日本で開発された薬剤 |
併用される抗がん剤の種類
プラチナ製剤は、多くの場合、他の抗がん剤と組み合わせて使用されます。これを併用療法といいます。
植物アルカロイド
パクリタキセルは、イチイという植物から抽出された成分をもとに作られた抗がん剤です。微小管という細胞内の構造に作用して、がん細胞の分裂を止めます。子宮頸がんでは、シスプラチンとパクリタキセルを組み合わせるTP療法が世界的に推奨されています。この組み合わせは効果が高く、比較的副作用が少ないことから、標準治療として広く用いられています。
イリノテカンは、DNA複製に必要な酵素を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えます。一部の施設では、シスプラチンとイリノテカンを組み合わせるCPT-P療法が行われています。
| 薬剤名 | 製品名 | 主な併用療法 |
|---|---|---|
| パクリタキセル | タキソール | TP療法(シスプラチン併用)、TC療法(カルボプラチン併用) |
| イリノテカン | カンプト、トポテシン | CPT-P療法(シスプラチン併用) |
代謝拮抗薬
フルオロウラシルは、がん細胞の代謝を阻害する薬です。DNA合成に必要な物質の働きを妨げることで、がん細胞の増殖を抑えます。
S-1は、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムという3つの成分を配合した内服薬です。近年、子宮頸がんにも保険適用が拡大され、治療の選択肢が広がりました。内服薬であるため、外来での治療が可能です。
| 薬剤名 | 製品名 | 剤形 |
|---|---|---|
| フルオロウラシル | 5-FU | 注射薬 |
| テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム | ティーエスワン | 内服薬 |
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
分子標的薬による治療
分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わる特定の分子を狙い撃ちする薬です。従来の抗がん剤とは異なる作用機序を持ち、新しい治療の選択肢として期待されています。
ベバシズマブの役割
ベバシズマブは、血管内皮増殖因子(VEGF)という物質に結合して、その働きを阻害します。がん細胞は新しい血管を作って栄養を取り込むことで成長しますが、ベバシズマブはこの血管新生を抑制することで、がんの増殖を抑えます。
進行または再発の子宮頸がんにおいて、パクリタキセル+シスプラチン、またはパクリタキセル+カルボプラチンといった化学療法と併用することで、生存期間の延長が期待できます。
ベバシズマブの投与量は、体重1kgあたり15mgを3週間ごとに点滴静注します。主な副作用として、高血圧、蛋白尿、消化管穿孔、血栓塞栓症などがあります。特に子宮頸がんで放射線治療を受けた患者さんでは、瘻孔の発生に注意が必要です。
| 薬剤名 | 製品名 | 作用機序 | 投与方法 |
|---|---|---|---|
| ベバシズマブ | アバスチン | 血管新生阻害 | 15mg/kg 3週間ごと 点滴静注 |
免疫チェックポイント阻害薬の登場
近年、子宮頸がんの治療において、免疫チェックポイント阻害薬という新しいタイプの薬が使えるようになりました。これらの薬は、患者さん自身の免疫の力を使ってがん細胞を攻撃する治療法です。
ペムブロリズマブ(キイトルーダ)
ペムブロリズマブは、PD-1という免疫チェックポイント受容体を標的とする抗体薬です。通常、がん細胞はPD-L1という物質を出して、免疫細胞の攻撃から逃れていますが、ペムブロリズマブはこの仕組みを阻害します。
進行または再発の子宮頸がんにおいて、化学療法歴がない患者さんを対象に、ペムブロリズマブ+化学療法(パクリタキセル+シスプラチンまたはカルボプラチン)±ベバシズマブの併用療法が承認されています。臨床試験では、全生存期間と無増悪生存期間の延長が確認されました。
投与量は200mgを3週間ごとに点滴静注します。主な副作用として、疲労、貧血、悪心、甲状腺機能障害などがあります。免疫関連の副作用として、間質性肺疾患、肝機能障害、大腸炎などが起こる可能性があるため、定期的な検査が必要です。
セミプリマブ(リブタヨ)
セミプリマブは、2022年12月に承認された抗PD-1抗体薬です。がん化学療法後に増悪した進行または再発の子宮頸がんに対して、単剤で使用されます。
国際共同第3相試験では、化学療法歴のある進行または再発の子宮頸がん患者さん608例を対象に、セミプリマブ単剤と化学療法を比較しました。その結果、全生存期間において、セミプリマブ群は12.0か月、化学療法群は8.5か月となり、死亡リスクが31%減少しました。
投与量は350mgを3週間ごとに30分かけて点滴静注します。主な副作用として、疲労、悪心、無力症、貧血、食欲減退などがあります。ペムブロリズマブと同様に、免疫関連の副作用に注意が必要です。
| 薬剤名 | 製品名 | 適応 | 投与方法 |
|---|---|---|---|
| ペムブロリズマブ | キイトルーダ | 進行・再発子宮頸がん(一次治療)化学療法との併用 | 200mg 3週間ごと 点滴静注 |
| セミプリマブ | リブタヨ | がん化学療法後に増悪した進行・再発子宮頸がん(二次治療以降)単剤 | 350mg 3週間ごと 点滴静注 |
治療の組み合わせ(レジメン)
実際の治療では、複数の薬を組み合わせて使用することで、効果を高めます。子宮頸がんで用いられる主な治療の組み合わせを紹介します。
TP療法
パクリタキセル+シスプラチンの併用療法で、世界的に最も推奨されている標準治療です。効果が高く、比較的副作用が少ないことから、広く使用されています。3週間を1サイクルとして繰り返します。
TC療法
パクリタキセル+カルボプラチンの併用療法です。シスプラチンの代わりにカルボプラチンを使用することで、副作用を軽減できます。臨床試験の結果、標準治療として認められました。
CPT-P療法
シスプラチン+イリノテカンの併用療法で、一部の施設で行われています。
同時化学放射線療法での使用
局所進行子宮頸がんでは、放射線治療と化学療法を同時に行う同時化学放射線療法が標準治療となっています。この場合、シスプラチンを通常より少ない量で使用します。少量にすることで、副作用を軽減しながら、放射線の効果を高めることができます。
通常は週1回、シスプラチン40mg/m²を投与します。放射線治療期間中、合計5~6回の投与を行うのが一般的です。
進行・再発がんでの薬物療法
手術や放射線療法で治療が難しい進行がんや、治療後に再発した場合には、全身化学療法が行われます。治療の目標は、がんの進行を抑え、生活の質を保ちながら生存期間を延ばすことです。
一次治療
化学療法歴がない進行・再発子宮頸がんには、以下の治療が選択されます。
- ペムブロリズマブ+パクリタキセル+シスプラチン(またはカルボプラチン)±ベバシズマブ
- パクリタキセル+シスプラチン+ベバシズマブ
- パクリタキセル+カルボプラチン+ベバシズマブ
二次治療以降
一次治療後に病状が進行した場合、セミプリマブ単剤療法が選択肢となります。また、S-1などの内服薬や、ペメトレキセド、ゲムシタビン、ビノレルビンなどの薬剤が使用されることもあります。
副作用とその管理
子宮頸がんの薬物療法では、様々な副作用が起こる可能性があります。主な副作用と対策を理解しておくことが大切です。
プラチナ製剤の副作用
シスプラチンでは、吐き気・嘔吐が高い頻度で起こります。制吐剤を予防的に使用することで、これらの症状を軽減できます。腎機能障害を防ぐため、十分な輸液が必要です。また、手足のしびれ(末梢神経障害)や聴力低下が起こることがあります。
カルボプラチンでは、骨髄抑制による白血球減少、血小板減少が主な副作用です。定期的な血液検査でモニタリングします。
パクリタキセルの副作用
骨髄抑制、脱毛、手足のしびれ、関節痛・筋肉痛などが起こります。アレルギー反応を防ぐため、投与前に予防薬を使用します。
ベバシズマブの副作用
高血圧、蛋白尿が頻繁に見られます。定期的な血圧測定と尿検査が必要です。消化管穿孔や瘻孔は重篤な副作用で、特に放射線治療歴のある患者さんで注意が必要です。
免疫チェックポイント阻害薬の副作用
免疫関連の副作用として、間質性肺疾患、肝機能障害、大腸炎、甲状腺機能障害、副腎機能障害、1型糖尿病などが起こる可能性があります。これらは従来の抗がん剤とは異なるタイプの副作用で、早期発見と適切な対応が重要です。
治療選択のポイント
どの薬を使用するかは、がんの進行度、患者さんの年齢、全身状態、臓器機能、治療歴などを総合的に判断して決定します。
早期がんで手術が可能な場合は、まず手術を行います。手術後の病理診断で再発リスクが高い場合に、術後補助療法として化学療法や放射線治療を追加します。
局所進行がんでは、同時化学放射線療法が標準治療です。遠隔転移のある進行がんや再発がんでは、全身化学療法が中心となります。
免疫チェックポイント阻害薬の登場により、進行・再発子宮頸がんの治療選択肢は広がりました。一次治療ではペムブロリズマブと化学療法の併用、二次治療以降ではセミプリマブ単剤が選択できるようになっています。
今後の展望
子宮頸がんの薬物療法は、近年大きく進歩しています。2022年から2023年にかけて免疫チェックポイント阻害薬が相次いで承認され、治療の選択肢が増えました。
現在も様々な新薬の臨床試験が進行中で、さらなる治療成績の向上が期待されています。分子標的薬や免疫療法の組み合わせ、新しい作用機序を持つ薬剤の開発など、今後も治療の進歩が続くと考えられます。
大切なのは、患者さん一人ひとりに最適な治療を選択することです。担当医とよく相談し、がんの状態、体の状態、治療の目標などを共有しながら、治療方針を決めていくことが重要です。
参考文献・出典情報
- 日本婦人科腫瘍学会「子宮頸癌治療ガイドライン2022年版」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん 治療」
- 国立がん研究センター中央病院「子宮頸がんの治療」
- MSD oncology「子宮頸がん 治療(進行期別の治療の種類、転移と再発など)」
- MSD株式会社「キイトルーダ 子宮頸がん併用療法」
- がん情報サイト「オンコロ」「キイトルーダが進行/再発の子宮頸がんに対する適応拡大承認を取得」
- 新薬情報オンライン「リブタヨ(セミプリマブ)の作用機序【子宮頸がん/肺がん】」
- 医療用医薬品情報「リブタヨ点滴静注350mg」
- PMDA「アバスチン適正使用ガイド(子宮頸癌)」
- 日本産科婦人科学会「婦人科がんを対象とした分子治療の今」