2010年以降、胃がんに効果がある使用可能な薬は増えてきました。
近年、胃がんで主体となっている薬は、代謝拮抗薬の1つ、フルオロウラシル系の薬(5-FU、TS-1、カペシタビンなど)、プラチナ製剤のシスプラチン、植物アルカロイドに分類されるトポイソメラーゼ阻害薬のイリノテカン、タキサン系の薬(パクリタキセル、ドセタキセル)の4種です。
TS-1の正式な薬剤名はテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムといいます。
カプセルの中身には、フルオロウラシル系の抗がん剤であるテガフール、テガフールの副作用(下痢、吐き気など)を軽くする成分、テガフールの効果を高める成分の3つが配合されています。こうすることでテガフールの効果がより一層期待でき、副作用も抑えられます。日本で開発され、1999年から胃がんに用いられるようになりました。
カペシタビン(ゼロータ)は、体内に入ると肝臓や腫瘍内で代謝され、5-FUに変わります。5-FUを直接服用するより、下痢や吐き気などの副作用を少なくできる、腫瘍内での薬剤濃度を高めることができることなどが利点です。03年4月に、手術不能または再発乳がんで承認され、次いで大腸がん、そして、11年2月からは胃がんにも使えるようになりました。
タキサン系のパクリタキセルやドセタキセルは"いちいの木"から抽出された物質からつくられた薬で、胃がん治療の柱の1つです。イリノテカンは喜樹という植物から生成された薬で、日本で開発され、95年から胃がんにも使われるようになりました。
さらに、胃がんでも分子標的薬のトラスツズマブ(ハーセプチン)が使用できるようになり、HER2陽性の人ではトラスツズマブと抗がん剤を組み合わせた治療が行われています。
胃がんによく使われる薬
<抗がん剤>
・代謝拮抗薬
フルオロウラシル(5-FU):製品名5-FU
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(S-1):製品名ティーエスワン
テガフール・ウラシル(UFT):製品名ユーエフティ
ドキシフルリジン(5'-DFUR):製品名フルツロン
カペシタピン:製品名ゼローダ
・プラチナ製剤
スプラチン(CDDP):製品名シスプラチン、シスプラメルク、プラトシン、ブリプラチン、ランダ
・植物アルカロイド
パクリタキセル(PAC):製品名タキソール、パクリタキセル
ドセタキセル(TXT):製品名タキソテール
イリノテカン(CPT-11):製品名カンプト、トポテシン
<分子標的薬>
トラスツズマブ:製品名ハーセプチン
以上、胃がんの薬物療法についての解説でした。