抗がん剤・分子標的薬などを使った薬物療法によって根治や寛解が期待できるがんが出てきたとはいえ、その割合はまだ低く、薬物療法の主要な目的は「進行を遅らせること」になります。
それが期待できるがんには、乳がん、卵巣がん、多発性骨髄腫、腎がん、慢性骨髄性白血病などがあります。
ただ、問題もあります。進行を遅らせてくれる抗がん剤も、いつか効かなくなる日がくることです。これを「がんが薬剤耐性をもつ」といいます。
耐性が出てくるのは、ある抗がん剤を使いつづけていると、がん細胞自身が身を守るため抗酸化や解毒に関する遺伝子を発現させ、その薬の作用を抑える物質が細胞内につくられるようになるためと考えられています。対ウイルス向けの抗菌薬が効かなくなる耐性菌が問題になりますが、抗がん剤でも同じようなことが起こるのです。
耐性の出現は、抗がん剤治療を受けている人にとっては、薬物療法を中止せざるを得ない大きな原因になります。逆に、耐性が出てこず、体に負担の少ない抗がん剤治療が続けられれば、長く薬をつかってがんを抑えることができます。こうした「がんと共存する」ための薬物療法の研究も進められています。
以上、がんの薬物療法についての解説でした。