膵臓がんと診断された場合、治療の第一選択肢として提案されるのは手術ですが、手術ができない場合は化学療法(抗がん剤などの薬を使った治療法)が行われます。
ここでは2013年に承認されたFOLFIRINOX(フォルフィリノックス)という方法について解説します。
膵臓がんの化学療法(抗がん剤治療)とは?
手術ができない膵臓がんの場合、薬を使ってがんの進行を抑え、できれば縮小を図るという治療法、つまり化学療法が中心となります。
膵臓がんで使われる薬の種類は少なく、古くから使われてきたジェムザール、TS-1という薬の選択肢しかありませんでした。
近年になり、分子標的薬であるタルセバ、そしてFOLFIRINOX(フォルフィリノックス)という「4つの抗がん剤を併用した治療法」の使用が承認されました。
FOLFIRINOXは5-FU、ロイコボリン、イリノテカン、エルプラットという抗がん剤を組み合わせて投与する化学療法であり、膵臓がんでは長く主軸として使われてきたジェムザールよりも腫瘍抑制効果が高いことが臨床試験で明らかになりました。
抗がん剤には薬それぞれの副作用があることがよく知られていますが、4種類の抗がん剤を一度に使う治療法のため、FOLFIRINOXには骨髄抑制などさまざまな副作用が起きます。腫瘍抑制効果はあるといえますが、副作用は生命の保持に影響するものも多いため、がんを攻撃できる=延命効果もあるとは一概にいえません。
FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)が対象となる人
基本的には70歳未満で(進行した膵臓がんとはいえ)比較的体調がよく、日常生活がふつうに送れている人が対象です。抗がん剤治療はデメリットもあるため、がんを患っているとはいえある程度元気な人でないと受けられないということです。
具体的な症状でいうと、黄疸、肺機能の低下、膵臓や肝臓の機能の低下、長期喫煙者などが対象外となります。
また、FOLFIRINOXは点滴ではなく中心静脈から投与するため、鎖骨付近に(抗がん剤を体内に流すための)ポートを留置する手術を行う必要があります。点滴や経口ですぐに始められるものではなく、体にポートを留置するということで受けたくないという人もいます。
さらには特定の体質(UGT1A1という酵素の遺伝子変化がある人)はイリノテカンが使えないために見送られます。
FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)の進め方
条件がクリアされ、FOLFIRINOXが適応だと判断されると治療がポート留置のあと治療が開始されます。
投与方法は2週間で1コースです。開始時には不測の副作用に対応するためにも入院して治療が行われます。
二週間の内訳は、まず初日から3日目までで薬の投与を行います。その後4日目から14日目までは体力の回復に当てます。それが終われば再度同じ内容の2週間をスタートさせるということになります。
複数の抗がん剤を使うため、最初の2週間で体力や血液の状態が回復しない場合もあります。その際は2コース目の開始を遅らせたり、薬の量を減らすなどして対処されることがほとんどです。
もちろん、重篤な副作用が出た場合は治療が中止されます。特に胆管炎が起きると命に関わるので入院中はしっかりと経過を見る必要があります。
以上、膵臓がんの化学療法についての解説でした。