前立腺がんの化学療法(薬を使った治療)は、まず副作用が比較的少ない「ホルモン療法」が行われます。中心になるのはゾラデックスやリュープリンといった薬ですが、これらの薬が効かなくなった場合はどうするのでしょうか。近年ではその選択肢が増えています。
前立腺がんの抗がん剤はタキソテールが中心
これまでは、ホルモン療法の効果が薄れてきた場合、抗がん剤であるタキソテールを使うのが中心でした。2008年に承認され、2014年頃までは「ホルモン療法⇒効果が薄れる⇒タキソテールに移行」という流れが標準的でした。
しかしタキソテールはいわゆる毒性の強い「抗がん剤」であるため、骨髄抑制や末梢神経障害、呼吸機能障害など日常生活に関わる副作用が課題でした。
前立腺がんで治療を受ける人は高齢であることも多く、副作用が原因で日常生活の質が低下し、治療を続けられないというケースも少なくありませんでした。タキソテールの量を減らして継続するなどの対処がとられてきましたが、このタキソテールもホルモン療法と同様、時間の経過とともに効果は薄れてきます。
前立腺がん、抗がん剤にかわる新薬
前立腺がんのホルモン療法以降の治療薬としては2012年にゴナックスというホルモンの放出を早期に低下させる作用のある薬が承認され、使われるようになりました。
また、2014年にはザイティガ(酢酸アビラテロン)という酵素阻害薬が承認されています。これは前立腺がん増殖の要因となるアンドロゲン生成に関係する酵素を阻害して、前立腺がんの進行を抑える働きがあります。
また、新しいタイプの抗アンドロゲン薬(ホルモン薬の一種)といわれるイクスタンジも2014年に承認されました。これは従来の抗アンドロゲン薬であるカソデックスよりも優れた効果を示し、カソデックスが効かなくなった前立腺がんにも効果があるとされています。
その他、タキソテールの次の抗がん剤として「ジェブタナ(カバジタキセル)」も同じく2014年に承認され、アメリカではプロベンジという樹状細胞ワクチンを用いた免疫療法が承認され、分子標的薬カボザンチニブの前立腺がん適応なども検討されています。
このように、日本でも世界的にも前立腺がんの治療薬の選択肢は増え、これまでのように「抗がん剤(タキソテール)が効かなくなったら手が打てない」という状況から大きく変化してきています。
治療を受ける際は、最新の化学療法についてきちんと説明してくれる医師のもとで計画的に進めるべきだといえます。
以上、前立腺がんとホルモン療法についての解説でした。