膀胱がんは、早期に発見されて病巣が粘膜層にとどまっている段階で治療すれば、5年生存率は80パーセント以上というデータがあります。しかし膀胱がんは症状がでにくく、血尿があっても見た目には分かりにくいため早期で発見されること自体が少ないといえます。
また、膀胱がんはくり返し発生するので、生存率のデータを単純に個々に当てはめることはできません。
とくに、発見が遅れ、離れたリンパ節や別の臓器に転移していると、5年生存率は10~30パーセントまで低下します。治療に際しては通常、まず外科的治療が選択されます。
ただし、上皮内がんや多発した表在性がんに対しては、膀胱の内部にBCG(結核ワクチン)や抗がん剤をくり返し注入する「膀胱内注入療法」を行うことが多いです。手術の術式はおもに2種類に分けられます。
第1はがんが粘膜層にとどまっている場合の手術で、膀胱鏡でがんを見ながら、電気メスで病巣を切除します。手術後、膀胱内注入療法を行うこともあります。第2は、これよりがんが広がって粘膜の下に浸潤している場合で、膀胱全体と周囲のリンパ節を摘出します。
男性では、これと同時に前立腺と精嚢(前立腺の後ろ側にあり、精液の70パーセントをつくる器官。精嚢の収縮によって射精が起こる)を切除します。女性の場合は、子宮を摘出します。膀胱を摘出した場合、尿をためておく場所がなくなるため、別に尿路をつくる必要があります。
この場合、①人工的な尿の出口(ストーマ)を腹部につくり、そこに袋(パウチ)を貼り付けて尿を受けるようにする、②腸を袋状にして尿をある程度そこにためられるようにする、③腸を袋状にして出口を尿道につなぐ、などの方法があります。
後の2つは新しい方法で、実績がまだ十分ではありません。いずれにせよ、膀胱の全摘出を行うと生活の質が低下することは避けられないため、近年では、放射線治療と化学療法を組み合わせて、膀胱を温存する治療法も研究されています。
また、レーザーと光感受性物質を用いた光線力学的療法、インターフェロンやインターロイキンを注入する免疫療法、それに遺伝子治療もさかんに実施(いずれも実験的に)、あるいは研究されています。
以上、膀胱がんについての解説でした。