がんにかかると、さまざまな痛みが生じます。その痛みをやわらげ、生活やその人らしさを大切にする治療を「緩和ケア」といいます。緩和ケアというと終末医療のように感じますが、いまでは、がんが告知されたときから、そのケアをスタートさせるという考え方になっています。
ケアの対象となる痛みは体の痛みだけでなく、精神的な不安や、仕事などの社会的な悩みのような心の痛みまでを含めた「全人的な痛み(トータルペイン)」といわれる痛みです。
そうした痛みを主治医や看護師だけでなく、ソーシャルワーカーや薬剤師、臨床心理士、栄養士といった人たちが協力して緩和につとめます。本人だけでなく、家族の不安や心配についても相談にのってくれます。
緩和ケアの受け方
がんの状態やその人の考え方はさまざまですが、緩和ケアには4つの形態があり、その人の状況に合わせて受けることができます。たとえ、がんの積極的な治療をやめた場合でも、病院に限らず自宅でも緩和ケアが受けられます。
緩和ケアに興味を持ったら、まずは主治医に相談してみましょう。主治医からすすめられることもあるかもしれません。緩和ケアはすべての病院で行っているわけではありませんが、その地域のがん診療連携拠点病院には、必ず緩和ケアチームがあります。
緩和ケアの4つの形態
・緩和ケアチーム
一般病棟でがんの治療と並行し、ソーシャルワーカーや栄養士、薬剤師、臨床心理士、理学療法士などのさまざまな専門家が、医師、看護師とチームを組んで緩和ケアを行います。
チームとしての形をとっていなくても、同じようなケアを行える病院が増えています。がん診療連携拠点病院には必ず緩和ケアチームがあり、病院内のがん相談支援センターで相談に応じてくれます。
・緩和ケア病棟(ホスピス)
病気の治療よりも症状の緩和を目的とするときに、入院して緩和ケアを受けるための専門病棟です。一般病棟とは違い、苦痛を伴うような検査は最小限にされ、面会時間の制限がないところも多くみられます。
施設により入院の条件が違い、入院の予約待ちもあります。緩和ケア病棟への入院を選択肢として考えるなら、家族や主治医にも相談して、早めに情報を集めましょう。
・緩和ケア外来
通院中の患者に対して、病院内の緩和ケアチームなどがケアを行う外来です。退院後に通院して不快な症状をやわらげたり、病状の変化などの不安が生じたときに利用できます。また、緩和ケア外来のスタッフが、在宅緩和ケアのスタッフと連携して支援することもあります。
・在宅緩和ケア
「在宅療養支援診療所」や「訪問看護ステーション」などから、訪問診療医や訪問看護師が定期的に自宅を訪問し、主治医とも連携しながら緩和ケアを行います。
自宅でリラックスして過ごせることが魅力で、もしも、急に症状が悪化した場合にも、すぐに対応できる体制が整えられています。まだ、受けられるケアの内容に地域差もありますが、まずは主治医に相談してみましょう。
末期になれば死に対する準備も必要ですが、どこで「治療を止める」と判断をするのも難しいことです。抗がん剤をしないのか続けるのか、などの判断はとても重要な要素です。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。