放射線は細胞のDNAを壊し、増殖できないようにしたり、細胞が自ら死んでいく過程(アポトーシス)を増強して細胞を死滅させます。放射線は正常な細胞にも同じ作用をしますが、活発に分裂を繰り返しているがん細胞に対して与えるダメージが大きいため、がん細胞を死滅させることができます。
子宮頸がんは、放射線を使った治療がとてもよく効くがんなので、がんが手術では切除しきれない場合の根治(目に見えるがん腫瘍を消滅させる)を目的とした治療法として行われます。放射線療法が中心となるⅢ期でも40~50%は根治が可能とされています。
また、化学療法を同時に行う同時化学放射線療法(CCRT)は、放射線単独の治療よりも効果が高いことが海外で証明され、日本でも標準治療とされています。手術のあとに再発を予防する補助療法や、再発・転移したときに緩和療法として行うこともあります。
がんが早期であっても基礎疾患がある、高齢であるなど、手術ができないケースでは放射線療法が行われます。最近では、早期がんに対する根治的療法として選択する人も増えています。
副作用をできるだけ抑えるため何回にも分けて照射する
放射線は、正常な細胞に対しては与えるダメージが小さいのですが、まったく影響を与えないわけではありません。そこで、できるだけその影響を少なくするために、少量の放射線を何回にも分けて照射します。こうすることで、がん細胞だけにダメージを残すことができます。
照射の量は病巣の大きさや広がり、年齢などから検討されます。照射方法には、外から照射する外部照射と、器具を挿入して子宮の中から照射する腔内照射があり、この2つを組み合わせて行います。治療は1ヵ月以上かかり、入院して行うのが通常です。
外部照射
体の外から放射線を照射する方法で、子宮や膣、リンパ節など、がんが進展する可能性のある広い範囲にまんベんなく当てることができます。
効果的な場所に照射できるよう、照射をスタートする前にCT検査をして、治療部位や放射線の照射方向を決め、皮膚に印(マーキング)をつけます。2回目からもこの印に従って照射します。
1回の照射にかかる時間は10~20分で、1日1回、連続して5日の照射を5~6週つづけて行います。
腔内照射
あらかじめ、膣から子宮腔内に小さなアプリケーターを挿入しておいて、そこに線源(自然に放射線を出す物質)をリモートコントロールで送り込み、子宮の中から照射を行う方法です。
主病巣にたくさんの放射線を当てることができます。1回の照射にかかる時間は30分~1時間で、週に1回、全体で4~5回照射します。外部照射を始めてから2~3週間後にスタートします。
同時化学放射線療法
外部照射、腔内照射に並行して、抗がん剤治療も組み合わせて行う治療法で、Ⅲ期、ⅣA期では、根治を期待した治療の第一選択です。抗がん剤は、シスプラチンを週に1回、全体で5~6回投与するのが一般的ですが、投与のタイミング、ほかの抗がん剤を併用する方法など、より効果をあげるためにいろいろなことが検討されています。
放射線療法中に気をつけること
・睡眠、食事
放射線療法中は疲れやすく、食欲が落ちるなどの症状が起こります。休息や睡眠を十分にとり、食事のバランスに気をつけるなどの健康管理が必要です。体が弱っていれば、副作用も出やすくなります。
途中で治療を休むと、がん細胞がダメージから回復してしまい、再発率が上がるといわれています。一定の間隔で治療が進められるよう、体調をくずさないようにしましょう。
・スキンケア
放射線を当てた皮膚は敏感になります。石けんは刺激の弱いものを使い、肌着はやわらかい素材のものを選びましょう。清潔に保つことは大切ですが、入浴中にこすって照射のためにつけた印を消さないように注意します。
以上、子宮頸がんの放射線治療についての解説でした