早期の子宮頸がん(高度異形成、0期~1期くらいまで)と診断された場合は、手術をしましょうと医師から提案されます。ただ、早期なので子宮をすべて切除する手術(全摘出)ではなく、円錐切除術(えんすいせつじょじゅつ)といわれる手術が提案されます。
子宮頸がんに対する円錐切除術とは?
45歳未満の女性、特に20代、30代の場合は、診断と治療を兼ねて、子宮膣部の円錐切除術が提案されます。この手術は子宮膣部(膣腔に面した子宮頸部)を円錐状に切り取る手術です。入院期間は手術前後で3~4日です。社会復帰は手術後2週間です。
何を用いて切断するか(通常のメスか、電気メスか、レーザー光線かなど)、切断面を縫合する(糸をかけて縫う)か、しないかなどで多くの方法があります。
・手術の目的
円錐切除術の目的は、診断と治療を兼ねて、子宮頸部病巣を完全に切除することです。
手術後に切除した部分を詳しく病理検査して、切断端にがんが見つからなければ、3か月後の検診(細胞診断など)でも「問題なし」となる可能性は高いといえます。その確率は97%くらいです。
その他3%の場合は、予想以上に子宮頸管内腔に病巣が伸びていて断端陽性(切除した端の部分までがん細胞が存在すること)であったり、あるいは、微小浸潤が子宮頸部筋層側の切断端に及んでいたりします。
さらに、子宮頸がんの原因であるHPVの感染が根絶されたわけではないので、3年から10数年して、再度、子宮頸部にがんが再発(この場合は新たに発生)する頻度も、円錐切除術を受ける必要がなかった人より高率という問題があります(3%以上の確率で子宮頸がんが再度発生します)。
・後遺症
円錐切除術による後遺症は意外に多く見られます。切除断端を縫合しない(切り離すのみ)術式では、術後5~9日してからの出血が10%くらいに起き、その半分は再入院します。
逆に、切除断端を縫合する術式では、子宮頸管の変形・狭窄が起きやすく、月経血の流出障害や不妊症になりやすいという問題が5%くらいあります。
さらに、子宮頸管の奥に病巣を残したくないと考えて、奥行きを長く切除(通常は1.5cm未満だが2cm以上切除)すると、子宮頸管の大切な役割(妊娠子宮を分娩まで支えて早産させないようにする)を損なうことがあり、妊娠12週頃に子宮頸管縫縮術を余儀なくされることもあります。
とり残しがあった場合は追加で手術をすることも
円錐切除術はがんを切除する役割を兼ねていますので、高度異形成、上皮内がん、初期の子宮頸がんの場合は、この円錐切除術でとり残しなく切除できれば、その後は6カ月~1年に一度の普通の検診を受ければよい、ということになります。
子宮を残す治療なので、治療後の妊娠・出産も可能です。ただし、深く大きな円錐切除術を行うと、不妊や流産、早産のリスクが高くなるといわれています。
なお円錐切除術の結果、切りとった部分よりもがんが深く浸潤しているときには、あらためてその進行状態に合わせて単純子宮全摘出術や準広汎子宮全摘出術、広汎子宮全摘出術などの手術が必要になります。
円錐切除術で切りとったところは、その後元に戻るのか?
傷口が治るにつれて、切りとられた部分が盛り上がってくるので、個人差はありますが、ほぼ元の状態に戻ります。ただし、傷口がくっついて癒着を起こす場合もあるので、術後の経過をきちんと管理することが大事です。
以上、子宮頸がんの円錐切除についての解説でした。