子宮頸がんは主に2つのタイプがあります。
子宮頸部(けいぶ)は子宮の出入り口に相当する部位で膣に面しています。この子宮頸部に発生するがんを「子宮頸がん」といいます。
子宮頸部の表面にある組織を顕微鏡で拡大して見ると、外陰部から膣壁、そして子宮頸部の膣と面する部位(子宮膣部)には、少し平らな細胞が積み重なったように配列した粘膜で覆われています。この部位のにある上皮にがんが発生し、異常に増殖するものが「子宮頸部扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん」です。
いっぽう子宮頸部の奥側の粘膜は円柱形の細胞で覆われていて、この部位の腺細胞(せんさいぼう)が増殖するものが「子宮頸部腺がん」です。
子宮頸がんのほとんど(80%)は扁平上皮がんで、残り(20%)は腺がんです。腺がんの方が予後(治療後の経過、見通し)は悪く、再発や転移をしやすいという特徴があります。
子宮頸がんが最初に発生する部分とは?
大部分の子宮頸がんの発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が大きく関わっていますが、がんの最初の発症部位は移行帯といわれる部分です。
最初にできる部分なので早期がんの場合は、この部分を切除できるかどうかが重要なポイントになります。若い女性は「移行帯」が膣側にあり、子宮膣部拡大鏡(コルポスコープ)でよく見え、0期がんの早期診断も容易で、がんがあると疑われる部分を的確に円錐切除術(えんすいせつじょ。早期がん向けの手術)で手術をすることができます。
逆に閉経後の女性では、移行帯が子宮頸管内部にあるため、直接確認することが困難になります。子宮頸部に棒状の器具をいれて細胞を採取しなければ、子宮頸がんを早期診断することが難しいといえます。また円錐切除術では子宮頸部の奥まで切除できないことが多く手術の難易度が上がります。
子宮頸がんが発生する原因はヒトパピローマウィルスだけではない
子宮頸がんの大部分は、ヒトパピローマウィルス(HPV)に感染することが発症の原因となります。しかし、HPVに感染しただけでは子宮頸がんを発症しません。何度かの出産で子宮頸部を傷つけたり、喫煙やホルモン剤内服などを含むいろいろな要因で子宮頸がんになります。
子宮頸がんの発症にはいくつかの過程があります。確かにHPVに感染している人は多いのですが(日本の女性では4分の1以上)、大部分はからだに備わっている免疫機構などが働き、がんにならないうちに、このHPVを不活化するか排除していることがわかりました。
HPVに感染し、子宮頸部の細胞が腫瘍になっていく過程が始まっても、少し変化した程度で悪性にならない場合が大部分です。
腫瘍を形成する能力が高い14種類のウイルス(ハイリスク型HPV)のうち、HPV16型と18型は、より早く、より高率に子宮頸部の細胞を腫瘍化することが知られていますが、これらのウイルスにしてもからだから排除されたり、途中の段階から正常化することで自然に消えることも多いのです。
つまり、子宮頸がんにまで進むには、HPVの作用が長期に続き、これに加えてほかの要因(喫煙習慣、度重なる分娩による子宮頸部の損傷、免疫能力の低下など)がかなり影響しているといえます。
以上、子宮頸がんに関する解説でした。