最初の大腸がん細胞ができてから、腫瘍化され「がんだ」と診断されるまでには通常どのくらいの時間がかかるのでしょうか。これを推測することが大腸がんの進行速度を図る要素になります。
まず最初の大腸がん細胞は粘膜にある細胞から生まれます。粘膜を構成する上皮細胞の1つでDNAが壊れ、がん細胞化します。ここからさらにがん細胞が増殖し、目で見て確認できるがん腫瘍となります。
細胞の1つががん化してから肉眼で確認できるようになるまで、具体的にどのくらいの時間がかかるか計測する方法はありません。しかし、推測するための方法として腫瘍の「倍加(ばいか)時間」を測定する方法があります。
あまり聞きなれない言葉ですが、これは「がん細胞は一定の速度で分裂していく」と仮定して逆算することで微小がんが発生した時期を推測する方法です。
たとえば、最初に発見された腫瘍の大きさを直径3センチだとします。そして6ヵ月後には6センチになっていたとすれば、この腫瘍の細胞の数が2倍になる時間は23日です。この計算でがんが大きさ0.1ミリくらいであった時期を逆算すると、約4年前となります。つまり、このがんは4年前にできたと推測します。
ただし、これはがんが免疫力などの抵抗を受けず、絶えず同じ速度で分裂を繰りかえし、分裂した細胞は同じ大きさになるという、シンプルな計算です。本当は人体の機能によるの抵抗(免疫など)を受けて分裂が遅れたり、また分裂した細胞の一部が壊死に陥って分裂が止まるだけでなく、がん細胞が消失することもあります。
ただ、このようにがんの倍加時間を計測することは、がんの増殖の速度を表す1つの指標であり、悪性度を示す指標になるといえます。
なお、一般に大腸がんの倍加時間は平均して30~300日前後のものが多いようです。これに対して、胃がんは30日以下が多いといわれています。このことからも、大腸がんは胃がんにくらべて、進行が遅く、おとなしいがんといえます。
とはいえ、手術をしたとしても再発を繰り返し、長く患者さんを苦しめることも多いのが大腸がんです。
大腸がんは手術して終わり、ではなくその後の再発と転移の防止が最も重要なテーマです。どのように治療をするのか、毎日何を食べればいいのか、など正しい知識を持つことが大切です。