緩和ケアとは、がんに伴うさまざまな苦痛症状を和らげて、患者・家族がその人らしく過ごせるように支えることを目的とし、安定した状態でがんと取り組めるようにするための方法です。
緩和ケアは進行期や終末期の患者さんだけでなく、がんと診断された時点から療養の経過を通じて受けることができ、必要とされるケアです。
かつて、「緩和ケア」は「終末期に提供されるケア」ととらえられた時期があったため、治療ができなくなった人のための最後の医療・ケアと誤解されがちでした。しかし、乳がんと診断されたときから緩和ケアは始まるといっても過言ではないといえます。乳がん自体の治療と同じように大切で、それは患者さんだけでなく、場合によっては家族にも必要なことです。
緩和ケアとは
乳がんになったことで患者とその家族は、さまざまな苦痛や問題を抱えます。それは単に痛みといった身体的な症状だけでなく、不安や落ち込んだ気分、女性としての精神的なつらさ、日々の生活で生じる社会経済的な問題などです。
緩和ケアとは、こうした身体的な苦痛や気持ちのつらさなどを少しでも和らげるための対処を行い、患者さんあるいはその家族も含めて援助することです。そして、QOL(生活の質あるいは生き方の質)を保つことで、自分らしく過ごすことを目的としています。
緩和ケアは病気の状態や時期に関係なく、診断された早期から療養の経過を通じていつでも受けることができ、それにより安定した状態で治療を受けられるようにするものです。
また、手術や抗がん剤などの治療が難しくなった時期に最も重要なことは苦痛の緩和です。痛みは投薬など適切な治療法によって80~90%は改善できるといわれています。痛みの治療(医療用麻薬を含む)によって、命を縮めることはないと証明されており、痛みを十分に和らげることは、患者さんの生活を支えるうえでとても重要芯なとの1つといえます。
なお、精神的な問題に対してはカウンセリングなどを行い、気持ちを楽にすることもできます。場合によっては、適切な薬剤を使用することもあります。
緩和ケアはどこで受けられるか
緩和ケアは「進行期や終末期に提供されるケア」から「がんの治療早期から並行して始めるケア」というように考えが変わりつつあります。そのため、緩和ケアを行っているのは、緩和ケアを専門に行っている緩和ケア病棟・ホスピスだけではありません。
一般病院でも緩和ケアチームという多職種の医療専門職者(身体症状、精神症状の緩和を専門とする医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーら)がかかわることによって、がんと診断された早期から症状緩和を行うようになってきました。緩和ケア外来を設置して、通院しながら緩和ケアを受けることができる医療機関もあります。
緩和ケアチームのない病院で緩和ケアをしっかり行っているところもあります。また、在宅でも訪問診療などの形で、積極的に緩和ケアを取り入れている診療所や訪問看護ステーションなども増えています。
緩和ケアに関する情報の入手先
緩和ケアを受けたいと思ったときは、まず担当医や看護師、薬剤師など医療スタッフにご相談しましょう。緩和ケアチームは、各都道府県のがん診療連携拠点病院などに設置され、緩和ケアチームや緩和ケア病棟をもつ病院の情報は、がん対策情報センターのホームページに掲載されています。
また、各都道府県のがん診療連携拠点病院には、各地域医療の情報や病院の活動に関する情報を扱っている相談支援センター、あるいは地域医療連携室が設置されていますので、直接問い合わせることもできます。
末期になれば死に対する準備も必要ですが、どこで「治療を止める」と判断をするのも難しいことです。抗がん剤をしないのか続けるのか、などの判断はとても重要な要素です。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。