
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
乳がんにおける「遺伝子検査」は、大きく分けて2つの種類があります。
1つ目は、遺伝性・家族性乳がん(HBOC)かどうかを調べるBRCA1/BRCA2遺伝子検査です。
2つ目は、手術後の再発リスクを予測する遺伝子検査(オンコタイプDX、マンマプリント、キュアベストなど)です。
この記事では、それぞれの検査の内容、費用、保険適応の状況について、2026年時点の最新情報をもとに詳しく解説します。
遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)のBRCA遺伝子検査
BRCA1やBRCA2という遺伝子に生まれつき変異がある方は、乳がんや卵巣がんを発症しやすいことが分かっています。これを遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer)と呼びます。
乳がんの患者さんのうち約3~5%、卵巣がんの患者さんの約10~15%がHBOCだと報告されています。
BRCA遺伝子検査を受ける流れ
BRCA遺伝子検査を受けようと考える方には、すでに乳がんと診断された方と、まだ診断されていない方がいます。
すでに乳がんと診断された方は「私の乳がんは遺伝性なのだろうか」という不安から検査を検討されます。
まだ診断されていない方は「家族が乳がんを発症したので、自分はどうなのか調べたい」と考えて検査を希望されます。
いずれの場合も、いきなり検査を受けるのではなく、まず病院の遺伝外来などでカウンセリングを受けることが推奨されます。
遺伝カウンセリングの内容と費用
遺伝カウンセリングでは、遺伝性乳がんに詳しい医師や認定遺伝カウンセラーが、遺伝に関する基礎知識を説明することから始まります。
検査を受けることによる精神的な影響についても話し合い、相談者やご家族の病歴などを聞いて家系図を作成します。
そのうえで遺伝性乳がんの可能性が考えられる場合に、がんが生じるリスクや他の臓器への影響について説明し、検査や予防法についての情報を提供します。
ほとんどの病院では完全予約制になっているので、事前の問い合わせと予約が必要です。
カウンセリング料金
遺伝カウンセリングの費用は、保険適応となるBRCA遺伝子検査を実施した場合、遺伝カウンセリング加算として保険適応になります。
この場合の費用は以下のとおりです。
| 負担割合 | 自己負担額 |
|---|---|
| 3割負担 | 3,000円 |
| 2割負担 | 2,000円 |
| 1割負担 | 1,000円 |
保険適応外で自費診療となる場合は、病院ごとに料金設定が異なります。
初診で約5,000円~10,000円、再診がある場合は料金が変わることもあります。実際の費用は受診する医療機関で確認する必要があります。
BRCA1/2遺伝子検査の保険適応条件と費用
2020年4月から、BRCA1/2遺伝子検査は一定の条件を満たす場合に保険適応となりました。
保険適応となる条件
以下のいずれかに該当する場合、BRCA1/2遺伝子検査が保険適応となります。
| 対象 | 条件 |
|---|---|
| 乳がん発症者 | ・45歳以下で乳がんを発症した方 ・60歳以下でトリプルネガティブ乳がんと診断された方 ・2個以上の原発乳がん(両側乳がんや同側多発がんを含む)を発症した方 ・第3度近親者以内に乳がんまたは卵巣がん発症者がいる方 |
| 卵巣がん発症者 | ・年齢を問わず卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんと診断された方 |
| PARP阻害薬治療対象者 | ・転移性、再発もしくはHER2陰性の術後薬物療法の適応となる乳がん患者さんでPARP阻害薬の適応を判断するため |
保険適応の場合の費用
保険適応となる場合の自己負担額は以下のとおりです(診察料や手技料は別途必要です)。
| 負担割合 | 自己負担額 |
|---|---|
| 3割負担 | 約60,600円 |
| 2割負担 | 約40,400円 |
| 1割負担 | 約20,200円 |
高額療養費制度の対象となるため、実際の自己負担額はさらに抑えられる可能性があります。
自費診療の場合の費用
保険適応の条件に該当しない場合は自費診療となります。
検査内容と費用の目安は以下のとおりです(医療機関によって料金が異なるため、直接確認が必要です)。
| 検査の種類 | 内容 | 費用の目安(税別) |
|---|---|---|
| スクリーニング検査(HBOCスクリーニング) | BRCA1/2遺伝子の全塩基配列を解析する検査。発端者(その家系を代表する、実際にがんに罹患した人)が受ける | 約10~20万円 |
| クイックHBOC | 通常のスクリーニング検査では3週間程度かかるが、約1週間で結果が分かる検査 | 通常より高額になる場合がある |
| 特定変異解析(HBOCシングルサイト) | 血縁者にすでにBRCA1/2遺伝子変異が見つかっている場合、その変異を受け継いでいるかを調べる検査 | 約2~7万円 |
HBOC診断後の予防的手術について
2020年4月から、すでに乳がんまたは卵巣がんを発症しているHBOC患者さんに対する予防的手術(リスク低減手術)が保険適応となりました。
たとえば、片側の乳房に乳がんが見つかったHBOC患者さんが、未発症の対側乳房を予防的に切除する場合や、卵巣・卵管を予防的に切除する場合が対象となります。
ただし、がんを一度も発症していない方の予防的手術は、2026年現在も自費診療となります。
予防的手術の費用
| 対象 | 手術内容 | 保険適応 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 乳がんまたは卵巣がん既発症のHBOC患者 | 対側乳房切除、卵巣卵管切除、乳房再建 | 保険適応 | 高額療養費制度を利用すれば、手術を受けた月の自己負担は一般所得者で約9~10万円程度 |
| 未発症者 | 予防的乳房切除、卵巣卵管切除 | 自費診療 | 実施可能な施設で自己負担により受けることが可能 |
術後の再発リスクを予測する遺伝子検査
手術後に再発するリスクを調べる遺伝子検査として、オンコタイプDX、マンマプリント、キュアベストなどがあります。
これらの検査は、術後に抗がん剤治療を行うべきかどうかの判断材料として活用されます。
オンコタイプDX(Oncotype DX)の内容と費用
オンコタイプDXは、手術で切除した乳がん組織から21種類の遺伝子の発現状況を調べる検査です。
再発スコア(0~100で表す数値)を算出し、低リスク群(0~17)、中リスク群(18~30)、高リスク群(31以上)に分類されます。
このスコアをもとに、抗がん剤治療の必要性や有効性を判断します。
オンコタイプDXの対象となる患者さん
以下の条件を満たす患者さんが対象となります。
・ホルモン受容体陽性(エストロゲン受容体陽性かつ/またはプロゲステロン受容体陽性)
・HER2陰性
・リンパ節転移が陰性、または1~3個までの浸潤がん
オンコタイプDXの保険適応と費用
2023年9月1日から、オンコタイプDXは保険適応となりました。
保険適応後の検査費用は435,000円で、自己負担額は以下のとおりです。
| 負担割合 | 自己負担額 |
|---|---|
| 3割負担 | 約13万円 |
| 2割負担 | 約8.7万円 |
| 1割負担 | 約4.4万円 |
診察料などを含めた総額では若干異なる場合があります。高額療養費制度の対象となります。
マンマプリント(MammaPrint)の内容と費用
マンマプリントは、手術で切除した乳がん組織から70種類の遺伝子のパターンを調べる検査です。
手術後5年以内の遠隔転移のリスクを予測し、結果はハイリスクとローリスクの2つのグループに分類されます。
ハイリスクの場合は抗がん剤治療を受けることが推奨されます。
マンマプリントの対象となる患者さん
・早期乳がん
・わきの下のリンパ節転移が3個まで
・閉経の有無やホルモン受容体の陰性・陽性は問わない
マンマプリントの費用
2026年現在、マンマプリントは保険適応外で、自費診療となります。
診察料などを含めた総額で約30万円程度です(医療機関によって料金設定が異なるため、直接確認が必要です)。
キュアベスト(Curebest)の内容と費用
キュアベストは、手術で切除した乳がん組織から95種類の遺伝子のパターンを調べる、日本で開発された検査です。
結果はHタイプとLタイプに分類され、Hタイプの場合はLタイプに比べて再発リスクが高いとされます。
キュアベストの対象となる患者さん
・エストロゲン受容体陽性
・浸潤性乳がん
・リンパ節転移なし
キュアベストの費用
2026年現在、キュアベストは保険適応外で、自費診療となります。
診察料などを含めた総額で約20万円程度です(医療機関によって料金設定が異なるため、直接確認が必要です)。
高額療養費制度の活用
保険適応となる遺伝子検査や手術の費用は、高額療養費制度の対象となります。
この制度を利用すれば、自己負担額には上限が設けられ、年齢や所得に応じて負担が軽減されます。
たとえば、一般所得者(年収約370万円~約770万円)の場合、1か月の自己負担上限額は約8~9万円程度となります。
ただし、保険適応外の検査費用は全額自己負担となり、高額療養費制度を利用できない点に注意が必要です。
まとめ
乳がんの遺伝子検査には大きく分けて2種類あります。
遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を調べるBRCA遺伝子検査は、2020年4月から一定条件下で保険適応となり、3割負担で約2~6万円で受けられます。また、既発症のHBOC患者さんの予防的手術も保険適応となりました。
術後の再発リスクを予測するオンコタイプDXは、2023年9月から保険適応となり、3割負担で約13万円で受けられます。一方、マンマプリント(約30万円)とキュアベスト(約20万円)は2026年現在も自費診療となっています。
検査を検討される場合は、保険適応の条件や費用について、主治医や医療機関に直接確認されることをお勧めします。
参考文献・出典情報
遺伝性乳がん卵巣がんを知ろう!- 日本HBOCコンソーシアム
乳がん遺伝子検査(オンコタイプDX)の保険適用について - たかはし乳腺消化器クリニック
オンコタイプDXの保険収載について - 大阪ブレストクリニック
遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)患者、未発症の乳房等の切除や手厚い遺伝カウンセリング等を保険適用 - GemMed

