乳がんで「遺伝子検査」と呼ばれるものは、大別して2つあります。
1つめは、遺伝性・家族性乳がん(HBOC)かどうか調べる検査(一般的にはBRCA1、BRCA2を調べる検査)
2つめは、手術後(温存手術、全摘手術)に再発するリスクを調べる再発リスク遺伝子検査(オンコタイプDXやマンマプリント、キュアベストなど)です。
ここでは上記2つの検査を受けるにあたって必要となる費用について、目安となる料金、保険適応の有無などを解説したいと思います。
遺伝性乳がん(HBOC)かどうか調べる遺伝子検査
この検査を受けようか考える人はすでに乳がんと診断された人と、そうでない人がいます。
前者はすでに乳がんと診断され「私の場合は遺伝性・家族性のがんなのかしら」と不安に感じて検査を検討されると思います。
後者は「家族が乳がんを発症した経験があるので私はどうなのか調べたい」と思っている人です。
いずれにしても最初からいきなり検査を受ける、というケースは稀で、まず病院の遺伝外来などでカウンセリングを受ける流れになります。
乳がん遺伝子のカウンセリングとは?内容と費用・料金について
カウンセリングでは遺伝性乳がんに詳しい医師、あるいはカウンセラーが遺伝に関する知識を伝えることから始まります。
遺伝性乳がんかを検査することによって受ける精神的な影響について話したり、相談者から家族・親族の病気の経歴などを聞いて家系図を作成したりします。
そのうえで遺伝子の乳がんの可能性があるだろう、という場合にがんが生じるリスクや他の臓器にがんが生じるリスクなどについて伝え、検査や予防法について情報を提供する、という形になります。
ほとんどの病院では完全予約制になっているので事前に問合せと予約が必要です。
カウンセリング外来の費用・料金
原則として保険適応外で自費診療となりますが、稀に相談のみなら保険適応としている病院もあります(例えば国立がんセンター中央病院では保険診療としている)。
料金設定は各病院・クリニックが定めていますので、同一ではありません。目安としては以下のようなパターンがあります。
1.1回でいくら、というパターン。
およそ1回60分~90分=8,000円~15,000円
2.初診と再診で料金が違うパターン。
初診で約8,000円~13,000円。再診で約3,000円~10,000円(いずれも時間は60分~90分)
※上記以外に初診料金がかかる病院などもあるので、実際の費用は直接確認しましょう。
・BRCA1/2遺伝子検査の内容と費用について
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)は、遺伝要因がはっきりわかっているがんの1つです。
BRCA1、あるいはBRCA2という遺伝子の変異を生まれつき持っている人が発症しやすいことが分かっています。
よってBRCA1/2変異の有無を調べる検査を受ける、という形になります。
遺伝子検査の流れ
1.スクリーニング検査(HBOCスクリーニング)
BRCA1/2遺伝子の全塩基配列を解析する検査です。発端者(その家系を代表する、実際にがんに罹患した人。一家計にひとり)が受けます。
スクリーニング検査で「病的変異認めず」という結果の場合は「2.MLPA」という検査に進みます。
「病的変異あり」の場合は「3」の特定変異解析に進みます。
2.MLPA(HBOC MLPA)
スクリーニング検査による解析では検出できないようなBRCA1/2遺伝子の大きな欠失や重複を検出します。
発端者が受けて「病的変異あり」の場合は血縁者(発端者の血縁の家族)がMLPAを受けます。その結果、変異の有無の最終判断をします。
3.特定変異解析(HBOCシングルサイト
血縁者(家族)にすでにBRCA1/2遺伝子遺伝子変異(異常)が見つかっている場合にその変異を受け継いでいるかどうかを調べる検査です。
遺伝子検査の費用・料金
上記のとおり、遺伝子検査には3つの項目があり、それぞれ費用がかかります。2018年現在、保険診療は認められていませんので原則として自費診療(全額自己負担)となります。
以下、複数の病院における料金設定を確認したうえでの目安となる料金・価格になります。実際に受けられる場合は受診機関でご確認ください。
1.スクリーニング検査の費用
約220,000円~250,000円(税別)
クイックHBOCの場合(通常のスクリーニング検査では3週間ほどかかるが、1週間程度で結果が分かる検査。こちらのほうが料金が高くなる)は以下のとおり。
約240,000円~350,000円(税別)
2.MLPAの費用
約40,000円~50,000(税別)
3.特定変異解析(HBOCシングルサイトの費用
約40,000円~50,000(税別)
遺伝子検査の結果、予防的手術をする場合の費用・料金は?
遺伝子検査の結果、陽性だった場合の治療手段として発症前の両乳房切除、未発症のもう片側の乳房の切除といった予防的手術を行える病院もあります。
この予防的な切除手術は保険適応とはならず、手術費用は全て自己負担となります。片方の乳房の切除で約200,000~500,000円、両側の乳房の切除で500,000~1,000,000円が相場です。
乳がん術後の再発リスク遺伝子検査
オンコタイプDX(OncotypeDX)の内容と費用・料金
オンコタイプDXはがん細胞を採取したうえで遺伝子の状況を調査します。そのうえで「再発スコア(0~100までで表す)」を算出します。
数字の少ないほうが再発リスクが低く、多いほうが高くなります。低リスク群(0~17)、中リスク群(18~30)、高リスク群(31以上)に分類されます。
そのうえで抗がん剤治療がどのくらい有効かについて情報を提供する、という検査です。
オンコタイプDX検査の費用・料金
保険適応とはならず、自費診療(全額自己負担)となります。
検査自体の料金は約400,000円(税別)。
診察料や病理組織標本作成料などを含めて、総額で約420,000円~470,000円になります(病院ごとに料金設定が異なります。詳細は直接ご確認ください)。
マンマプリント(MammaPrint)の内容と費用・料金
手術後に乳がん細胞を採取し、70種類の遺伝子のパターンを調べます。
結果として5年以内の遠隔転移のリスクを予測する検査です。結果はハイリスクとローリスクの2グループに分けられ、ハイリスクの場合は、抗がん剤治療を受けることが望ましいとされています。
対象となるのは、早期乳がんでわきの下のリンパ節転移が3個までの人です。
マンマプリント費用・料金
保険適応とはならず、自費診療(全額自己負担)となります。
診察料などを含めて、総額で約300,000円~360,000円(税抜き)になります(病院ごとに料金設定が異なります。詳細は直接ご確認ください)。
キュアベスト(Curebest)の内容と費用・料金
手術後に乳がん細胞を採取し、95種類の遺伝子のパターンを調べます。
結果、タイプをHとLに分類し、Hタイプの場合はLに比べて再発のリスクが高いとしています。
対象となるのは、エストロゲン受容体が陽性であり、浸潤性でリンパ節転移がない人です。
キュアベスト費用・料金
保険適応とはならず、自費診療(全額自己負担)となります。
診察料などを含めて、総額で約200,000円(税抜き)になります(病院ごとに料金設定が異なります。詳細は直接ご確認ください)。