がん専門のアドバイザー、本村です。
多くの患者さんをサポートするなかで「癌封じのお参りをしたい」「手術の成功祈願をしたい」「闘病している人にお守りをプレゼントしたい」というメールをいただくことがあります。
適当なところを紹介するわけにはいきませんので、色々な寺社仏閣を調べたり、足を運んだりしています。
今回は和歌山県についてです。参拝の候補になるものとそして4つの神社、1つのお寺を挙げたいと思います。
和歌山県有田市 宮原神社の癌封じ祈願
有田市の宮原神社は山間の小さな道を通ってたどり着く、地元の小さな神社です。
816年に創建されたといわれる歴史のある古寺です。
主祭神は15代天皇「応神天皇」である誉田別命(ほむたわけのみこと)と、応神天皇の母、神功皇后。そして神道における女神である比売神(ひめがみ)の三柱です。
長い歴史の中で衰勢がありましたが、江戸時代の紀州徳川家の信仰が厚く、徳川頼宣をはじめ歴代の藩主が熊野詣の際に旅の安全を祈願したと伝わっています。
現在の拝殿・本殿は1976年および2002年に再建され、2015年には末社(境内にある属した神社)である太刀宮(たちにみや)も新しく建て替えられています。
癌や病気との関連
太刀宮に祀られている猿田彦命(さるたひこのみこと。猿田彦大神ともいわれる)は日本神話に登場する神です。
導きの神といわれ、交通安全、縁結び、延命長寿、厄除けのご利益があるとされています。三重県伊勢市には「猿田彦神社」があるなど、全国の多くの神社で祀られています。
太刀宮は剣豪、宮崎定直にゆかりがあり、厄を刀で払い、運命を切り開く導きの神様として独自に信仰をあつめてきました。
現在では、合格祈願のほか、病気平癒(ぜんそく、気管支の病気、頭痛、癌などの病気)、厄祓い、必勝祈願などにご利益があるとされ、癌封じ、癌治癒の願いのために参拝する方が多いそうです。
気管支の病気と癌をかけて、肺がんの方が多く訪れているようです。
お礼参りに太刀を奉納する風習があり、社には多くの木刀やプラスチック製の刀などが奉納されています。
癌封じの祈祷やお守りは?
宮原神社は旧社格では「村社」で村や町から奉幣を受ける神社です。宮司さんひとりで切り盛りされているような神社ですので本格的な祈祷を受けたり、癌封じのお守りを購入することなどはできず、あくまで「癌封じの参拝のみ」で訪れる、という形で行くのがよいと思います。
※社格とは?
明治維新以降に神社を等級化した制度で、第二次世界大戦後に廃止されましたが今日でも「旧社格」などの名称で神社を表す目安とされています
格として一番上なのが「官社」で国から奉幣を受ける神社になります。官社の中でも最も上位なのが「官幣大社」という等級で島根の出雲大社、東京の明治神宮などがあります。なお、三重の伊勢神宮は「すべての神社の上にある」とされており、社格はありません。
村社は郷社(ごうしゃ。府県、市から奉幣を受ける神社)の下、というランクです。
【所在地】
和歌山県有田市宮原町道3
車は鳥居の横や、鳥居の先の坂上に駐車可能。
和歌山県伊都郡 慈尊院の乳がん平癒のお守りと祈願
慈尊院(じそんいん)は、816年に弘法大師・空海が九度山に創建した寺院です。
九度山は真言宗の本山である高野山参拝の要所であり、慈尊院は登山前の宿場、庶務を司る政所、修行の場所=表玄関としての役割を持つ寺として作られました。
長きに渡り、高野山は女人禁制とされ、女性はこの慈尊院までしか参拝が許されておらず、自然と慈尊院は女性に篤く信仰されるようになり、女人高野と呼ばれるようになりました。
境内はそう広くないですが、国宝の本尊「木造弥勒仏坐像」や100体におよぶ地蔵など見所も多く、世界遺産の一部にも指定されているため観光の名所としても知られています。
癌や病気との関連
慈尊院は空海の母である玉依御前(たまよりごぜん)の霊が祀られている寺です。
母といえど、空海が開山した高野山には入れず、慈尊院で暮らしていました。いっぽうの空海は月に9回も下山して母に会いに慈尊院に通ったと伝えられています。そのため後に「九度山」という地名がつけられました。
慈尊院は母、女性の慈愛を象徴する寺とされ、玉依御前(たまよりごぜん)の霊=弥勒菩薩へ子宝、安産、女性の病気平癒を祈願する人から深い信仰を集めました。
近年は乳がん撲滅のために大きな乳がん平癒祈願絵馬が奉納されるなど、乳がん平癒祈願のお寺として多くの女性が参拝しています。
乳がんが治るよう祈願を受けることができます
慈尊院の祈願の特徴として「乳癌平癒(にゅうがんへいゆ)」祈願があります。
通常、他のお寺や神社では「病気平癒祈願」が一般的ですが、乳癌という病気を指定して平癒祈願ができるのは全国でも慈尊院だけです。
一祈願3,000円で昇殿して祈願を受けることができます。行事がある日は実施されない場合もあるので事前に予約をしておくのがよいでしょう。
当日、事務所にて申し込むこともできます。
乳がん平癒御守(乳がんのお守り)
授与所には様々なお守りがありますが、患者さんとともにデザインされた、乳がん平癒御守が授与されています。(500円)
その他、「お乳型奉納絵馬(2,000円)」の奉納もできます。
授与所が開かれている時間は8:00~17:00頃までです。
慈尊院の所在地やアクセス、営業時間
住所:和歌山県伊都郡九度山町慈尊院832
営業時間(参拝可能時間):8:00~17:00
電話番号:0736-54-2214
最寄り駅:南海高野線「九度山」駅から徒歩20分
車でのアクセス:京奈和自動車道自動車道 高野口ICから約5分
駐車場:あり
階段:あり
地図:
そもそも、癌封じの祈願とは?
そもそも「癌封じ」という言葉は「がんにならないこと」を願う祈願になります。
厳密にいうと癌封じに対して「癌平癒(がんへいゆ)」という言葉があり、これががんを治すことを意味する言葉です。
しかし「癌封じ」という言葉のほうが一般的で、その解釈が少し広まり、「再発を防ぐ」「転移を防ぐ」「もう二度とがんにならない」ことを祈願する意味も含むようになりました。
ですので「癌封じ」イコール、がんを治すことや克服することを願う祈願である、ととらえてよいと思います。
いっぽう、がんという病気に特化せずとも、お寺や神社への祈願項目としては「病気平癒」が一般的です。「病気全般」ですので癌はもちろん肉腫、悪性リンパ腫、白血病などの血液系のがんも含みます。
ですので、がん闘病に関して祈願したり、お守りを授与してもらったりするうえでは、「癌封じ」にこだわらずとも、病気平癒のご利益があると言われるお寺、神社へ参拝することでじゅうぶん目的は達成されます。
あくまで「癌」を重視して関連するお寺、神社にお参りするもよし。
癌にこだわらず、病気平癒(=癌の平癒も含む)を祈願して、ご利益があるといわれるお寺、神社にお参りしてもよい、ということです。
というわけで、次の挙げる神社は「和歌山県内で(癌を含む)病気平癒を祈願するならこちらがおすすめ」という場所を取り上げています。
和歌山県田辺市 熊野本宮大社の病気平癒祈祷
和歌山には歴史深い神社が多い県です。熊野本宮大社(くまのほんぐう)もその1つ。
ポイントだけ解説すると・・・
熊野とは和歌山県南部~三重県南部の地域で、和歌山県側に「熊野三山」と呼ばれる三つの大きな神社(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)があります。
熊野三山へお参りするための道を熊野古道といい、ユネネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道(2004年7月登録)に指定されています。
熊野本宮大社は全国の「熊野神社」の総本宮であり、聖地といわれています。神社の社格ではもっとも上位の(出雲大社や明治神宮などと並ぶ)官幣大社です。
(※熊野速玉大社も官幣大社。熊野那智大社は官幣中社)
熊野に祀られている神=熊野権現(くまのごんげん)
熊野権現とは熊野三山の祭神である神々の総称ですが、特に主祭神である家津美御子(けつみみこ=すさのお)、速玉(はやたま=いざなぎ)、牟須美(ふすび=いざなみ)の三神を指して熊野三所権現といいます。
それぞれ以下のように三山で祀られています。
・熊野本宮大社=家津美御子(けつみみこ=すさのお)
・熊野速玉大社=速玉(はやたま=いざなぎ)
・熊野那智大社=牟須美(ふすび=いざなみ)
なお、奈良時代の神仏習合により神=仏として祀るようになり、
・家津美御子(けつみみこ=すさのお)→阿弥陀如来
・速玉(はやたま=いざなぎ)→薬師如来
・牟須美(ふすび=いざなみ)→千手観音
とされています。(後述しますがここ、重要なポイントです)
癌や病気との関連
熊野本宮大社の主祭神、家津美御子(けつみみこ=すさのお)にはいくつもの逸話がありますが、和歌山県を代表する民俗学者の故・松原右樹氏によると「熊野のケツミミコは、ケという生命力の神」と記述されています。
ケのエネルギーが枯渇するのが「ケガレ」とされています。癌や病気の人が生命のエネルギーを戻すことを祈願し「ケ=生命力の神である熊野の本宮大社の主祭神を詣でる」ことはご利益になるといわれています。
また、「すさのお」は八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した勇猛な神としてよく知られています。その由来から疫病除けの神として篤い信仰があります。
病気平癒の祈祷が受けられます
熊野本宮大社では、健康祈願はもちろん、病気平癒の祈祷が受けられます。癌に関する治療(手術や放射線)の成功祈願、治療の成功を祈る祈願や、再発や転移がないことを願う場合は「病気平癒」を選んで祈祷を受けることになります。
祈祷は毎日8:00~16:30まで受けることができ、随時、社務所にて申し込みが可能です。行く日程が決まっている人は事前予約しておくとよいでしょう。
初穂料(料金)は5,000円から。20,000円以上の初穂料を納めると巫女舞の奉納を受けることができます。
病気平癒のお守りやお札
熊野本宮大社の授与品をもらうなら、おすすめの1つめは「熊野牛王(くまのごおう)神符」です。熊野三山それぞれ異なる熊野牛王神符があります。
これは熊野権現にゆかりある烏(からす)を絵文字化した護符で、戦国時代から伝わるお札です。
左の小さい熊野牛王神符が500円、右の大きいものが2,000円になります。
この神符は「病人の床にしけば、病気平癒となる」とされています。患者さんのベッド、お布団の下に敷く、というお守りは他にはなく珍しいので贈答としてもよろこばれると思います。
もう1つが「いのちの再生守」です。
これは熊野本宮大社の社殿の修復時、使われていたヒノキの皮が入っているお守りです。
生命の神を祀っていた社殿そのもの、ということで人気があり、常にかばんや財布などに入れておけるので、こちらもよろこばれると思います。
新宮市にある熊野速玉大社の仏は薬師如来=医薬の神
熊野三山の1つ、熊野速玉(はやたま)大社の主祭神は、速玉(はやたま=いざなぎ)=薬師如来です。
薬師如来とは「民の病患を救うという如来=薬壺を持ち病気を治す仏様」であり、ひとことでいうと医薬の仏です。
いざなぎは古事記などの日本神話のなかで、日本の国土をつくり、多くの神々を生み出した、とされている「神の神」のような存在といえます。
日本には古くから神様の格を評価する「神階、神位」の制度があり、この制度のうえでは「一品」という最上級の神と位置づけられています(神位の制度は明治時代に廃止されています)。
熊野に病気平癒の祈願に行くなら、神話の中の「神の中の神」であり、医薬の仏が祀られている熊野速玉大社も外せない、といえます。
熊野牛王(くまのごおう)は速玉大社でも授与されています。
速玉大社の蘇守(よみがえりまもり)
熊野は「甦りの地」であり、「新しい出発の地」とされています。
蘇守は自分を信じ、もう一度生きる力を取り戻す「蘇りの信仰」が篤い速玉神社ならではのお守りです。
病と闘う人に相応しいお守りの1つだと思います。
【熊野本宮大社の所在地】
和歌山県田辺市本宮町本宮
専用駐車場あり。
【熊野速玉大社の所在地】
和歌山県新宮市新宮
専用駐車場あり。
和歌山県伊都郡 丹生都比売神社の病気平癒お守り
熊野三山と同じく「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産へ登録されている丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)。
大阪府から近い場所にあります。
こちらも旧社格は官幣大社で、創建1700年とされる国内屈指の由緒ある神社です。2015年5月には秋篠宮同妃両殿下も参拝されています。
主祭神は、丹生都比売大神(にうつひめのおおかみ)です。日本神話における最高神である「天照大神(あまてらすおほみかみ)」の妹にあたる女神です。
(※天照大神は伊勢神宮の主祭神です)
全国に丹生都比売大神を祀る神社は180社以上あり、こちらはその総本社になります。
816年に空海がこの神社から高野山を借り受けて、真言密教の総本山を開創したとされ、歴史的にも重要な意味を持ち、神仏融合がここから伝わっていったといわれる神社です。
丹生都比売大神は謎が多く、逸話は様々ですが別名である「稚日女命(わかひるめのみこと)」が転じて「和歌山」の名前の由来になっているといわれています。
癌や病気との関連
「丹生」とは水銀化合物を含む赤土=丹砂を指し、古くは中国秦の時代では不老不死の仙薬とされていたと伝わっています。(実際には水銀は猛毒ですが・・・)
そのような由来も含み、丹生都比売大神は「諸々の災いを祓い退け、一切のものを守り育てる女神。不老長寿の神」とされています。
病気平癒の祈祷が受けられます
丹生都比売神社では、病気平癒の祈祷が受けられます。不老長寿の神に対して病気平癒の祈願をする、という形になりますし、美しく荘厳な社殿で受ける祈祷は心に残る体験になると思います。
祈祷の受付は9:00~15:00までと他の神社より早く受け付けが終わるので注意しましょう。
予約優先ですので参拝日が決まっていれば予約をしたほうがよいと思います。
初穂料(料金)は5,000円から。
病気平癒お守りがあります
病気が治ること、健康になることを祈願されたお守り「病気平癒守」が授与されています。
【所在地】
和歌山県伊都郡かつらぎ町上天野 230
無料(第一駐車場、第二駐車場あり)