
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
プロポリスは、ミツバチが樹木の新芽や樹皮から採取した樹脂成分と、ミツバチ自身の分泌物を混ぜ合わせて作る暗褐色の粘着性物質です。
ミツバチは巣の隙間や入口にプロポリスを塗ることで、細菌やウイルスなどの外敵から巣を守っています。ハチミツやローヤルゼリーとは異なり、ミツバチ自身はプロポリスを食べることはありません。
採取できる量は非常に限られており、古くから民間薬や強壮剤として世界各地で用いられてきました。特に欧米では、古代ギリシャやアッシリアの時代から外傷や腫瘍の治癒に使われていた記録が残っています。
2005年に実施された厚生労働省研究班の調査によると、プロポリスはアガリクスに次いで2番目にがん患者さんが採用する率が高い健康食品でした。がん患者さん全体の約28.8%がプロポリスを摂取していたという報告があります。
インターネットや書籍では「がんに効く」という情報が数多く見られますが、科学的根拠に基づいた信頼できる研究結果では、どのような結論になっているのでしょうか。客観的なデータをもとに解説していきます。
プロポリスに含まれる有効成分とその作用
プロポリスには300種類以上の物質が含まれており、その成分は採取地域や起源植物によって異なります。一般的なプロポリスの成分内訳は、樹脂が約50%、蜜蝋が約30%、精油が約10%、花粉が約5%、その他の成分が約5%となっています。
プロポリスの作用として報告されているのは、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗酸化作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用などです。これらの作用から、プロポリス抽出物は酸化防止剤として食品添加物にも分類されています。
機能性食品素材便覧によると、プロポリスは「薬として用いられた歴史は古く紀元前350年にさかのぼる。現在でも外用では消毒や抗菌を主な目的に、経口では結核などの各種感染症、十二指腸潰瘍などの消化器疾患に対して用いられている」とされています。
ただし、外用以外の効果については科学的実証が十分ではないと記載されています。
プロポリスの主要な有効成分
プロポリスの抗がん作用について期待される有効成分として、以下のものが研究されています。
| 成分名 | 特徴 |
|---|---|
| カフェ酸フェネチルエステル(CAPE) | 抗炎症作用、抗酸化作用、免疫調節作用が報告されている |
| アルテピリンC | ブラジル産グリーンプロポリスに多く含まれ、抗腫瘍作用が期待される |
| クレロダン系ジテルペン | 細胞増殖抑制作用が基礎研究で確認されている |
| フラボノイド類 | 抗酸化作用、抗炎症作用を持つポリフェノール化合物 |
これらの成分については、培養細胞を用いた実験や動物実験で効果が報告されていますが、人間に対する効果については後述する臨床試験の結果が重要になります。
プロポリスの抗がん作用に関する最新研究
プロポリスの抗がん作用は世界的にも日本国内でも注目度が高く、多くの研究が行われています。2025年から2026年にかけても、いくつかの重要な研究成果が報告されています。
2025年の最新研究:がん幹細胞への効果
2025年9月に開催された第84回日本癌学会学術総会では、山田養蜂場と岡山理科大学獣医学部の共同研究により、ブラジル産グリーンプロポリスががん幹細胞の機能性を低下させる可能性が発表されました。
この研究では、プロポリスが腫瘍形成の中心となるがん幹細胞に対して、増殖能を低下させ、がん幹細胞の特性を示すマーカーを減少させることが明らかになりました。これにより、がんの増悪を抑制する可能性が示唆されています。
ただし、この研究も細胞を用いた実験段階であり、人間に対する効果については今後の臨床試験が必要です。
前立腺がんに対する研究
2023年に岐阜薬科大学から発表された研究では、ブラジル産グリーンプロポリスに含まれるアルテピリンCが、前立腺がん細胞のアンドロゲン受容体に作用して抗アンドロゲン作用を示すことが初めて明らかになりました。
この研究では、アルテピリンCが前立腺がん細胞のアンドロゲン依存性細胞増殖を抑制し、さらに治療薬アパルタミドに耐性を獲得した前立腺がん細胞の感受性を回復させることが示されました。
ただし、これも細胞レベルでの実験結果であり、実際の患者さんに対する効果は確認されていません。
胃がんに対する動物実験
東京大学大学院農学生命科学研究科とフィリピン大学ロスバニョス校の国際共同研究では、フィリピン固有種のハリナシミツバチから得られるプロポリスの抗腫瘍効果が検討されました。
分化型胃がんを自然発症したマウスにプロポリスを30日間経口投与したところ、胃がんが退縮し、増殖細胞の減少が認められました。この実験結果から、プロポリスが分化型胃がんの進展を抑制する可能性が示されました。
しかし、これも動物実験の段階であり、人間での効果は未確認です。
大腸がん予防に関する動物実験
大阪市立大学の研究では、ラットを用いた発がん実験において、ブラジル産プロポリスを長期間投与したところ、悪性リンパ腫・白血病および下垂体腫瘍の発生率が減少し、生存率が向上したという結果が報告されています。
また、大腸がんを誘発させたラットにプロポリスを与えた実験では、大腸がんの予防効果が見られたとされています。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
人間を対象とした臨床試験のエビデンス
プロポリスに関する科学的根拠を評価するうえで最も重要なのは、実際の人間を対象とした臨床試験の結果です。
世界的な論文掲載機関であるアメリカ国立医学図書館のPubMedでプロポリスの情報を検索すると、1000件近い論文が見つかりますが、その大部分は培養細胞や動物実験の研究結果です。
がん患者さんにプロポリスを実際に摂取してもらい、その効果を臨床試験で確認している論文は、現時点では限定的です。
口腔粘膜炎に対する臨床試験
スロヴェニアで実施された臨床試験では、化学療法中の小児がん患者40名(試験群19名、平均6.7±5.3歳)を対象に、プロポリス0.38g×2回を6ヶ月間口腔粘膜に塗布しました。
この二重盲検無作為化プラセボ比較試験の結果、口腔粘膜炎の発症率、持続期間、重症度に影響は認められませんでした。
一方、イランで実施された研究では、化学療法中の頭頸部がん患者がプロポリス洗口剤を使用したところ、口腔の健康改善に効果的であったという報告もあります。この臨床試験は、化学療法誘発性口腔粘膜炎を軽減するための洗口剤としてのプロポリスの有効性を検証したものです。
このように、同じ口腔粘膜炎に対する試験でも結果が異なっており、使用方法や製品の違いが影響している可能性があります。
プロポリス摂取による副作用と健康被害
健康食品として販売されているプロポリスですが、副作用や健康被害の報告も存在します。
重篤な腎障害の報告
2005年に台湾で報告された論文によると、胆管がんを患った59歳男性の患者さんがプロポリスを2週間摂取したところ、腎臓の機能が悪化しました。
プロポリスの摂取を中止したところ、一旦は腎臓の機能が改善しましたが、その後再びプロポリスを摂取すると、再度腎臓の機能が悪化しました。腎臓の機能が悪化した際には、血液透析を必要とする状態になりました。
この論文の著者らは、腎臓の機能悪化の原因がプロポリスであることが強く疑われるとして、健康食品としてプロポリスを利用する際には注意が必要であることを強調しています。
アレルギー反応と皮膚炎
プロポリスを経口摂取した場合、まれにアレルギー反応や口内炎を引き起こすことがあります。これらは、ハチやハチミツなどに過敏な方に多いとされています。
また、化粧品なども含めプロポリスを外用剤として用いた場合、接触性皮膚炎を引き起こす場合があります。養蜂家におけるプロポリス過敏症(接触皮膚炎)の発症率は約0.05%程度と報告されています。
国立健康・栄養研究所のデータベースには、接触皮膚炎および全身の発疹、掻痒性皮疹などの報告があります。プロポリスに含まれる300種類以上の物質の中には、アレルギーの原因となる物質も含まれています。
使用を避けるべき方
以下に該当する方は、プロポリスの使用を避けるべきとされています。
- 妊娠中、授乳中の方
- ぜんそく患者の方
- ハチの生産物(ハチミツなど)にアレルギーのある方
- 針葉樹、ポプラにアレルギーのある方
これらの方々は、プロポリスによってアレルギー症状などを悪化させる可能性があります。
がん患者さんにとってのプロポリスの評価
科学的根拠に基づいて、がん患者さんにとってのプロポリスの効果を以下の項目ごとに評価します。
QOL(生活の質)の改善について
プロポリスを摂取することによって、がん患者さんのQOLを改善することを、人間を対象とした臨床試験で証明した報告は、現段階ではありません。
動物実験や培養細胞実験では様々な効果が示唆されていますが、実際の患者さんの生活の質が向上したという科学的証拠は得られていません。
治療の副作用軽減について
プロポリスを摂取することによって、手術、抗がん剤、放射線治療の副作用を軽減することを、人間を対象とした臨床試験で証明した報告は、現段階ではありません。
口腔粘膜炎に対する一部の臨床試験で効果が示唆されていますが、結果は一貫しておらず、確定的な結論には至っていません。
再発予防と生存期間の延長について
プロポリスを摂取することによって、がんの再発を予防したり、生存期間を延長したりすることを、人間を対象とした臨床試験で証明した報告は、現段階ではありません。
動物実験では腫瘍の縮小や発がん抑制効果が報告されていますが、人間の患者さんでこれらの効果が確認されたわけではありません。
プロポリスに関する現時点での結論
プロポリスは、培養細胞を用いた実験や動物実験において、抗酸化作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用など多様な生物活性を示すことが報告されています。
2025年から2026年にかけても、がん幹細胞への効果や前立腺がん細胞への作用など、新たな研究成果が発表されています。これらの基礎研究の結果は、プロポリスの可能性を示唆するものとして注目に値します。
しかし、実際のがん患者さんを対象とした質の高い臨床試験は限られており、がんの治療効果、再発予防効果、生存期間の延長効果については科学的に証明されていません。
また、プロポリスの摂取による健康被害として、急性腎障害、アレルギー反応、皮膚炎などが報告されています。製品ごとに品質管理や安全性は異なるため、すべてのプロポリス製品でこれらの症状が起こるかどうかは不明ですが、注意が必要です。
プロポリスを摂取する際には、主治医に相談し、標準的な治療を優先することが重要です。健康食品はあくまで補助的なものであり、標準治療の代わりになるものではありません。
また、プロポリスが抗がん剤などの薬物と相互作用を起こす可能性も考慮する必要があります。
参考文献・出典情報
- 山田養蜂場、岡山理科大との共同研究でブラジル産グリーンプロポリスががん幹細胞性を低下させがん増悪を抑制する可能性を示唆(2025年12月)
- 岐阜薬科大学:プロポリス成分で前立腺がんの治療効果を向上させる(2023年2月)
- 東京大学大学院農学生命科学研究科:フィリピンハリナシミツバチ由来プロポリスの胃癌を対象とした抗腫瘍効果の検討
- 日本がん予防学会:プロポリスのがん予防効果(大阪市立大学)
- がんの先進医療:プロポリスの有用性や副作用を検証
- 米国国立がん研究所:予防効果を示す天然物の研究-プロポリス
- 日本緩和医療学会:がん補完代替医療ガイドライン
- 厚生労働省eJIM:がんに対する補完療法
- PubMed:Artepillin C overcomes apalutamide resistance through blocking androgen signaling in prostate cancer cells
- 日本補完代替医療学会誌:補完代替医療素材としてのプロポリス