私はこんな話を10年以上し続けているのだが。【健康的な食事の「相乗効果」は、推奨されるどんな食事方法ひとつよりも重要であると結論づけた。節酒はがんリスク軽減に貢献する可能性が最も高い】#がん #ガン #癌 #癌治療 https://t.co/hNR8pi8U9G
— 本村ユウジ (@motomurayuji) 2018年8月23日
はじめに
がんは世界第2位の死因であり、日本人の2人に1人が一生のうちに一度はがんになるとされています。しかし、30〜50％のがんは生活習慣の改善によって予防可能です。アメリカのがん研究における権威機関である世界がん研究基金（WCRF）とアメリカがん研究所（AICR）は、科学的根拠に基づいた最新のがん予防ガイドラインを発表しており、その中でも食生活に関する推奨事項は非常に重要な位置を占めています。
世界がん研究基金（WCRF）とアメリカがん研究所（AICR）について
世界がん研究基金（WCRF）は、がんの原因を調査し、予防のために人々ができることを理解してもらうことを目的とした国際的な組織です。アメリカがん研究所（AICR）とともに、1997年から継続的にがん予防に関する包括的な研究報告書を発表しています。
2018年に発表された第3次専門家報告書「食事、栄養、身体活動とがん：グローバルな視点」は、世界中の科学的証拠を最も厳密な方法で分析した包括的な報告書として高く評価されています。この報告書は、継続更新プロジェクト（CUP）という厳格で体系的な手法によって作成され、がん予防における最新の科学的知見を提供しています。
アメリカがん協会の最新ガイドライン
アメリカがん協会（ACS）は2020年に「がん予防のための食事と身体活動に関するガイドライン」を8年ぶりに更新しました。このガイドラインは、がん研究、予防、疫学、公衆衛生、政策の専門家からなる全国パネルによって開発され、食事と身体活動パターンに関連する最新の科学的証拠を反映しています。
同協会の推奨事項は、個人の選択に関する4つの推奨事項と、健康的な行動を支援するためのコミュニティ活動に関する推奨事項で構成されています。これらのガイドラインは、アメリカ心臓協会やアメリカ糖尿病協会のガイドラインとも一致しており、がん予防だけでなく総合的な健康増進に寄与します。
具体的な食生活の推奨事項
1. 適正体重の維持
過体重や肥満は明らかに複数のがんのリスクを高めることが確実視されています。体重増加を避け、生涯を通じて健康的な体重を維持することが重要です。BMI（体格指数）を18.5〜24.9の正常範囲内に保ち、成人期の体重増加を避けることが推奨されています。
2. 全粒穀物、野菜、果物、豆類を豊富に含む食事
植物由来の食品を食事の中心とすることが強く推奨されています。これらの食品は栄養素と食物繊維が豊富で、がん予防に重要な役割を果たします。具体的には以下が推奨されています：
- 1日30グラム以上の食物繊維を食物から摂取する
- 緑黄色野菜と果物を1日400グラム（5人分）以上摂取する
- 全粒穀物（玄米、全粒小麦、オーツ麦など）を日常的に摂取する
- 豆類（大豆、レンズ豆、黒豆など）を定期的に摂取する
3. 赤肉と加工肉の制限
赤肉（牛肉、豚肉、羊肉など）と加工肉（ハム、ソーセージ、ベーコンなど）の摂取量を制限することが推奨されています。具体的には：
- 赤肉の摂取は週3回分（調理済みで350〜500グラム）以下に制限
- 加工肉の摂取はできるだけ避ける
- 魚や鶏肉を代替タンパク質源として活用する
4. 砂糖入り飲料の制限
砂糖入り飲料の摂取は体重増加の原因となり、ひいてはがんリスクを高める可能性があります。水や無糖の飲み物を選択し、砂糖入り飲料の摂取は避けることが推奨されています。
5. アルコール摂取の制限
アルコール摂取は多くのがんの原因となることが確実視されています。がん予防の観点からは、アルコールを飲まないことが最善とされています。飲酒する場合は、各国のガイドラインを超えないよう注意が必要です。
6. 高度に加工された食品の制限
脂肪、デンプン、糖分の多い高度に加工された食品（ファストフード、スナック菓子、菓子パンなど）の摂取を制限することが推奨されています。これらの食品は過剰なエネルギー摂取を促進し、体重増加の原因となります。
がん予防における食事パターンの重要性
近年の研究では、個別の食品や栄養素よりも、全体的な食事パターンがより重要であることが明らかになっています。地中海式食事パターンのような、植物性食品を中心とした食事は、がんリスクの低下と関連していることが多くの研究で示されています。
健康的な食事パターンは以下の特徴を持ちます：
- 野菜、果物、全粒穀物、豆類を豊富に含む
- 魚や鶏肉などの良質なタンパク質を適度に含む
- 加工肉や高度に加工された食品を制限する
- 添加糖、飽和脂肪、トランス脂肪を制限する
- 適切なカロリー摂取量を維持する
科学的根拠に基づく推奨事項
これらの推奨事項は、世界中で実施された数千の研究結果に基づいています。特に、前向きコホート研究と呼ばれる大規模な長期追跡調査の結果が重要な根拠となっています。
最新の研究では、WCRF/AICRのがん予防推奨事項への遵守度が高い人ほど、特定のがんのリスク、全がんのリスク、そして総死亡リスクが低下することが示されています。これは、これらの推奨事項が実際の生活環境で効果的であることを証明する重要な証拠です。
日本人における適用
これらの国際的なガイドラインは、日本人にも適用可能です。実際、日本の国立がん研究センターも同様の推奨事項を「日本人のためのがん予防法」として発表しており、禁煙、節酒、食生活、身体活動、適正体重の維持、感染予防の6つの要因を重要視しています。
日本人特有の食習慣を考慮した場合、以下の点が特に重要です：
- 塩分摂取量の削減（胃がんリスク低下のため）
- 伝統的な日本食の良い面（魚、大豆製品、野菜）の活用
- 白米中心の食事から全粒穀物を含む食事への移行
- 西洋型食事パターンの過度な採用を避ける
実践のためのアドバイス
食事計画の立て方
がん予防に効果的な食事を実践するためには、以下のような計画的なアプローチが有効です：
- 週単位での食事計画を立てる
- 野菜と果物を食事の半分以上に設定する
- タンパク質源を多様化し、植物性タンパク質を増やす
- 調理法を工夫し、蒸す、茹でる、焼くなどの方法を活用する
- 食材の購入時に栄養表示を確認する習慣をつける
外食時の注意点
外食が多い現代において、レストランでの食事選択も重要です：
- 野菜を多く含むメニューを選択する
- 揚げ物よりも焼き物や蒸し物を選ぶ
- ドレッシングやソースは別添えを依頼する
- 全粒穀物のオプションがある場合は選択する
- アルコールの摂取量を控えめにする
身体活動との組み合わせ
食事だけでなく、身体活動もがん予防において重要な要素です。WHO（世界保健機関）は、成人に対して週150分以上の中等度の有酸素運動、または週75分以上の高強度の有酸素運動を推奨しています。
身体活動は以下の方法でがん予防に寄与します：
- 体重管理とメタボリックシンドロームの予防
- ホルモンレベルの調整
- 免疫機能の向上
- 炎症の軽減
- DNA修復機能の向上
地域特有の考慮事項
世界がん研究基金の報告書では、特定の地域でのみ該当する推奨事項も示されています。例えば：
- アフラトキシンで汚染された食品の摂取を避ける（主にアフリカやアジアの一部地域）
- 塩漬け保存食品の摂取を制限する（主にアジア地域）
- ヒ素で汚染された飲料水を避ける（工業地域や自然汚染地域）
がんサバイバーへの推奨事項
がんの診断を受けた人々（がんサバイバー）に対しても、特別な推奨事項があります。治療の急性期が終わった後は、可能な限りがん予防推奨事項に従うことが奨励されています。ただし、個人の状況に応じて、適切に訓練された医療専門家からの栄養ケアと身体活動に関する指導を受けることが重要です。
将来の研究方向
がん予防における食事と栄養の役割についての研究は継続して発展しており、以下の分野での更なる研究が期待されています：
- 食事、栄養、身体活動ががん過程に影響を与える生物学的メカニズム
- ライフコース全体を通じた食事、栄養、身体活動の影響
- 食事、栄養、身体活動の曝露のより良い特性化
- がんサバイバーにおける食事、栄養、身体活動の影響
- 世界的に代表的な特定の曝露とがんに関する研究
まとめ
アメリカのがん研究権威機関による最新の食生活推奨事項は、科学的根拠に基づいた包括的ながん予防アプローチを提供しています。これらの推奨事項を実践することで、がんリスクを大幅に低減できる可能性があります。
重要なのは、これらの推奨事項を個別に実践するのではなく、統合された生活様式として採用することです。健康的な体重の維持、植物性食品を中心とした食事、身体活動の増加、アルコールと加工食品の制限といった要素を組み合わせることで、最大の予防効果が期待できます。
また、これらの推奨事項は、がん予防だけでなく、心血管疾患、糖尿病、その他の非感染性疾患の予防にも効果的であることが示されており、総合的な健康促進に寄与します。個人の健康状況や医学的条件によって適用方法は異なる場合があるため、具体的な実践については医療専門家と相談することが推奨されます。
参考文献・出典情報
- American Cancer Society Guideline for Diet and Physical Activity
- American Cancer Society guideline for diet and physical activity for cancer prevention
- World Cancer Research Fund - 25 ways to thrive in 2025
- World Cancer Research Fund - Cancer Prevention Recommendations
- 国立がん研究センター - 科学的根拠に基づくがん予防
- 健康長寿ネット - がん予防のための食事とは
- WCRF/AICR Third Expert Report Summary
- American Cancer Society guideline for diet and physical activity for cancer prevention - PubMed
- An umbrella review of the evidence associating diet and cancer risk at 11 anatomical sites
- 国立がん研究センター がん対策研究所 - がん予防法の提示
