寝たきりになってしまったり、足腰を悪くしてしまったりする原因、きっかけの1つになるのが「つまずき」「転倒」です。
私の祖母も登山やウォーキングをする活発な人でしたが、70歳代の頃になんでもない坂道でつまずいて転倒し骨折。それが原因で足腰が弱くなり、杖を使うようになって、晩年ではずっと車いすでした。
最近の年配の方はトレッキングやジョギングなどを行い、足腰の鍛錬をしている人も多いですよね。多摩の高尾山などに行くと、若い人よりもずっと年配の方のほうが多いですし、きちんとした装備をして登山されている人も多いです。
しかしそのように鍛錬している人でも、ふとしたときにつまずいたり転倒したりすることが起きているようです。
足腰の筋力はそれなりにあるのに、なぜつまずいたり転倒したりするのか?
その原因は最近の研究で分かってきています。
それは「平衡感覚」の衰えです。
人間の体を平衡に保つ力=平行か、どのくらい傾いているのか感覚的に把握する力は、「内耳」の中の耳石器の働きによるものです。
この耳石は自律神経ともつながっており、血流や細胞の活性化にもつながっていることが分かっています。
例えば、宇宙に行くと無重力状態になりますが、このときは耳石が動かず、平衡感覚が麻痺します。
昔、宇宙飛行士が地球に帰ってきたとき、フラフラで歩けない、しばらく体調不良が続く、もしくは体に老化がみられる、など様々な体調の変化がありましたが、それは耳石がずっと動かなかったためだとされています。
私たちが気を付けることはただ1つ。
耳石を動かす、ということです。
寝ていると耳石は動きませんし、なんと座っていても耳石は動かないのです。
家でじっとしている時間が増えると、耳石が動かない時間が増えてしまいます。それによって平衡感覚の衰えや自律神経の乱れ、体力の低下が起きることになります。
一番てっとり早いのは30分に一度立ち上がること。座った状態から立つと耳石は動くのです。
できるだけ座りっぱなしにならないよう、なにかにつけて立つ、という習慣を身につけるとよいと思います。
1日1分で出来る、つまずき防止体操
衰えた耳石の働きを刺激するには、立ち上がるだけでなく、「傾き」の要素を入れてみるのがよい、という大学の研究報告があります。
やり方は簡単。
1.まず、まっすぐ立つ。窓の枠や柱などを目安に垂直に立つ。
2.右に頭を横に傾け、それを15秒続ける。
3.つぎは反対の左に頭を傾け、それを15秒続ける。
4.それを2セット実施する。できれば朝と晩にやる。
ウォーキングや散歩の途中で立ち止まって、頭を傾けてみたりするのがよいですし、下を向いたり上を向いたり、とにかく「ジッとし続けず、たまに頭を動かしてみる」という程度でもだいぶ耳石の刺激にはなります。