がんは1個の細胞から始まります。
それがどんどん分裂し、腫瘍を形成することで「がん」と診断されます。その後がんが増殖し、リンパ管や血管にがん細胞が入ったり、胸膜や腹膜に細胞がもれ出すことがあります。
その結果、リンパ節、他の臓器や器官、胸膜や腹膜にがんが転移することになります。また、一度腫瘍を切り取ったとしても、取り残された微細ながん細胞が増殖して「再発」することもあります。
がんの疑いが生じたとき、医師はがんに対する詳細な検査を行い、そのうえで慎重に診断を下します。がんの診断には直接診断と間接診断があり、基本的には患者の体の負担が少ないものから順に進められます。
まず、医師が患者の問診を行います。たとえばいまの症状や症状の経過、過去の病歴、血縁者にがんを発症した人がいるかなどです。ついでX線検査、MRI(磁気共鳴映像法)、超音波検査などの画像診断を行います。良性腫瘍やがんの組織は細胞が密集しており、血流が豊富であったり、石灰化を起こしていることもあるため、画像診断でその広がりを見ることができます。
最近では、MRIやX線CTの解像度は飛躍的に向上していますが、それはあくまで"形"にもとづいたがんの診断です。これに対して、がん細胞が大量の栄養を必要とすることに注目し、その「動き」を観察するのがPET(陽電子放射断層撮影)という検査方法です。
ブドウ糖に放射性物質を付けて体内に注入すると、がん細胞にブドウ糖が集まるので、そこから放出される放射線をとらえます。しかし、胃や肝臓などもともと栄養分が集まりやすい場所のがんや、成長の遅いがんはPETでは見つけられないことがあります。
こうした診断によってがんが疑われる場合には、しこりの細胞または組織を採取して、診断を確定します。病理医は採取した標本を顕微鏡で観察し、良性か悪性かを判断します。
ここで悪性と判断されると「がん」と確定的な診断をされます。
がんの進行度を表す病期
がんと確定診断された場合、画像診断などでがんの広がりを検索し、がんの進行度を判断します。進行度は病期として分類されており、それぞれのがんによって異なっています。しかし多くは、国際対がん連合のTNM分類に準拠しています。
T(tumor)は腫瘍の大きさや、どこまで深く達しているかなどを意味し、またN(node)はリンパ節に転移しているかどうか、転移している場合の個数やそれらの場所について、さらにM(metastasis)は他の臓器や器官に転移しているかどうかについてを示します。TNM分類は治療法を決めるうえでいまだに大きな役割を果たしています。
①病期O
がんは発生した上皮(粘膜など)にとどまり周囲の組織に浸潤したり、他の臓器に転移することはありません。非浸潤がんあるいは上皮内がんと呼ばれ、非常に早期のがんです。
②病期Ⅰ
腫瘍が小さく、隣接する組織に広がっていないことを意味します。早期がんと呼ばれます。
③病期Ⅱ
腫瘍が比較的小さく、その広がりも周囲のリンパ節や隣接する組織までにとどまっています。
④病期Ⅲ
腫瘍が比較的大きく、隣接する臓器まで広がっています。進行がんです。
⑤病期Ⅳ
腫瘍が離れた他の臓器(肺、骨、肝臓、脳、腹膜、胸膜、遠隔リンパ節) まで広がっています。遠隔転移がんあるいは全身転移がんとも呼ばれます。
以上、がんのステージについての解説でした。