がん専門のアドバイザー、本村です。
当記事は濾胞性リンパ腫の治療についてです。
濾胞性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫に分類される悪性リンパ腫の一種です。日本人では悪性リンパ腫と診断された方のうち、15~20%を占めます。
濾胞性リンパ腫の治療法は他のリンパ腫と同じ化学療法(薬をつかった治療)になりますが、最新(2017年時点)の動向や新薬について触れたいと思います。
濾胞性リンパ腫の特徴について
悪性リンパ腫には様々な種類がありますが、進行の速度ごとに分類したものを「悪性度分類」と呼びます。シンプルに説明すると以下のような3分類になっています。
- 高悪性度=数日から数週間で進行
- 中悪性度=数週間から月単位で進行
- 低悪性度=月から年単位で進行
濾胞性リンパ腫は「低悪性度」に分類されます。つまり進行が緩やかで急激に進行するケースはほとんどありません。
しかし、楽観視してよいタイプのがんではないです。
理由として「濾胞性リンパ腫だと分かったときはすでに進行していることが多い」ことです。初期の状態としては「リンパ節の腫れ」が起きますが、これは自覚症状がありません。ある程度進んでも痛みや違和感を感じることが少なく、気が付けば進行している(ステージ3や4の状況になっている)ことがほとんどです。
濾胞性リンパ腫と診断された患者さんのうち、約半数は骨髄に浸潤しているステージ4の段階で告知されています。
また、濾胞性リンパ腫は他のリンパ腫と比べて抗がん剤が効きにくいという特徴があります。進行期で見つかることが多いうえに抗がん剤で寛解(かんかい。がんを消失させること)に持ち込めないため、治療・および闘病が長期化することになります。
濾胞性リンパ腫の治療法について
【治療方針として】
抗がん剤が効きにくいタイプの悪性リンパ腫であり、一度寛解(かんかい)したように見えてもがんが完全に死滅しておらず、再発することも多いです。
そのため、「たくさん抗がん剤を使ってとにかくがんを殺しきり、寛解や完全治癒を目指す」という他のリンパ腫での治療方針とは異なり「寛解や完全治癒を期待せずに、時間をかけて進行を抑え、できるだけ長く元気に生活できることを目指す」という方針になります。
つまり「がんが存在してしまうことはやむを得ないため、時間をかけて進行を抑えていく」というスタンスです。
濾胞性リンパ腫があまり進行していない場合
診断された段階で「ほとんど症状がない」「腫瘍が小さい、また数も少ない」という場合は積極的な抗がん剤治療を行わずにしばらく経過観察をすることもあります。
この段階で抗がん剤をすることのデメリットは2つあり、「使える抗がん剤を早期に使ってしまうと耐性ができて将来的に当該抗がん剤を使えない=武器が1つ減る」ということが1つ。
もう1つは「進行が遅く、抗がん剤が効きにくいため、症状がでていない患者に対しては副作用を受けるだけがんは消えない、とよいことがない」点です。
使える武器をあまり早い段階で使わず、様子をみながら手を打っていくことになります。
なお、この段階では経過観察するほかにリツキシマブ(リツキサン)を単独で投与することもあります。
濾胞性リンパ腫が進行している場合
診断された段階で「痛みなどの症状(リンパ節が大きく腫れ血管や臓器を圧迫して痛みや浮腫を起こすことがある)が出ている」「大きな腫瘍があり、数も複数に及ぶ」など進行している場合には、R-CHOP療法あるいはたR-CVP療法を行います。
※R-CHOP療法とは 複数の薬をつかった多剤併用の抗がん剤治療です。Rはリツキシマブ(リツキサン)、Cはシクロホスファミド(エンドキサン)、Hは塩酸ドキソルビシン(アドリアシン)、Oはオンコビン(ビンクリスチン)、Pはプレドニゾンです。
※R-CVP療法とは 同じく複数の薬をつかった多剤併用の抗がん剤治療です。R-CHOPから「Hの塩酸ドキソルビシン(アドリアシン)」を抜いた組み合わせです。Hを抜けば「R-COP」になるはずですが、これだと違いが分かりずらいので「OをビンクリスチンのVに変更」しています。
塩酸ドキソルビシン(アドリアシン)を抜く理由は、この薬がもっとも副作用が強い(いっぽうで効果も強い)からです。
最新の治療法(2017年時点)
R-CHOP療法と同等の治療効果があるとして「BR療法(B=ベンダムスチン、R=リツキシマブの組み合わせ)」が濾胞性リンパ腫の初回治療法として承認を受けました。
ベンダムスチン(トレアキシン)は新薬ではなく、数十年前から血液系のがんで使われてきた薬ですがこれまで濾胞性リンパ腫では使われていませんでした。リツキシマブと組み合わせることで濾胞性リンパ腫にも効果を示した、という理由で承認されたということです。
BR療法がR-CHOP療法と異なるのは副作用としての脱毛が少ない、末梢神経障害がないという点です。
しかし逆にBR療法のほうが骨髄抑制が強くあらわれ、悪心やリンパ球減少の程度が強くでます。そのため感染症を起こすリスクは高くなります。
・R-CHOPやBR療法の実施後の再発予防として
R-CHOPやBR療法によってほぼ寛解に至った、あるいはかなりがんが縮小した、という場合はその後再発や再燃を防ぐ目的でリツキシマブを単独で使い続ける方法が提案されることが多いです。およそ2カ月に1回、2年間定期的に投与します。