比較的早期の段階の肝臓がんで、手術が可能な場合、「手術」を選択するべきか「ラジオ波焼灼療法(RFA)」を選択するべきか、選択にせまられることが多いといえます。
手術は全身麻酔をして患者の腹部を切開し、肝臓を切除する方法です。そのため、患者の体に与える負担は大きいといえます。
一方、RFAは患者の腹部に局所麻酔をし、超音波画像を見て、がんの位置を確認しながら、直径1.5ミリ程度の電極針を皮膚から直接肝臓がん部分に刺す方法です。がんの中心部に針が入ったところでAMラジオ並みの周波数、460kHzもしくは480kHzの高周波で患部を焼灼します。
2004年に健康保険が適用された頃には、現在の適応以上に多くの肝臓がんの患者さんにRFAが選択されたこともありました。肝臓内科医の中には、肝臓がんは"すべてラジオ波で治る"という医師もいたほどです。
しかし、現在はRFAの適応範囲と治療効果の限界がしっかりと把握できるようになってきており、ムリにRFAを行うことなく手術が選択されるケースが増えてきています。
手術はがん腫瘍が正しく切除されているかを確認しており、腫瘍の周囲の組織も切り取るので、いわゆる「取り残し」があまり発生しません。RFAはその点で手術に劣るといえます。
また画像診断の進歩によって、肝臓内の血管の走行などの詳しい状況がよく分かるようになって、より確実な手術ができる外科医が増えたことも大きく、徐々に手術時の合併症も減少してきています。
かつては肝機能が多少悪くても手術が行われており、手術は成功しても肝不全で患者が死亡するケースが少なからずありました。
その対策として肝機能の悪い患者には手術は行わないというように厳しく規制されるようになっているのです。そしてRFAも経験を積み重ねており、それを専門にしている人はRFAの限界を認識しています。3センチを超える大きながん、血管に近いところにあるがんは適応外と判断して、手術に切り替えるようになっています。
このような背景が現代医療にはあるので、手術にするのか、RFAにするのか、あるいは他の選択肢があるのか?あらゆる選択肢を提示し、それぞれのメリットやデメリットを分かりやすく解説し、患者にとってベストの方法を推薦してくれる医師が信頼できる医師といえます。
以上、肝臓がんの手術についての解説でした。