前立腺がんの治療方針を決める際、いちばん重要とされるのが病期分類(進行度、ステージ、浸潤度ともいう)です。前立腺の分類法には、「TNM分類」と「ABCD分類」があります。
TNM分類は、がんの大きさ(T分類)、所属リンパ節転移の有無(N分類)、遠隔転移の有無(M分類)の3つに分けて分類する方法。ABCD分類は、腫瘍の進展度別に分類する方法です。
TNM分類は、国際対がん連合(UICC)が作成しているものです。TNMは、それぞれTumor(腫瘍、原発巣)、Nodes(リンパ節)、Metastasis(転移)の頭文字です。
Tは前立腺の中のがんの広がり具合で、T1とT2は前立腺内にがんがとどまっている場合、T3は前立腺の被膜を破って外まで進んでいる場合、T4は、前立腺のそばにある膀胱、尿道、直腸などにまで広がっている場合を意味しています。
Nはリンパ節にがんの転移があるかないかを示し、N0(転移なし)とN1(転移あり)に分類されます。
Mは、骨、肝臓、肺など、前立腺から離れたところへがんの転移があるかないかを示し、M0(転移なし)とM1(転移あり)に分類されます。
たとえばT3aN1M0と表記すれば、がんは前立腺の外まで広がり、所属リンパ節転移はあるが、骨などへの遠隔転移はないという意味になります。
■TNM分類のほかABCD分類も
ABCD分類はジュエット分類とも呼ばれるもので、日本泌尿器科学会と日本病理学会の前立腺がん取り扱い規約で採用しています。これは大きくA~Dの4つに分類するものです。
現在の治療現場では、TNM分類が採用される率が高いようです。しかし、ABCD分類も、Dへ行くにしたがって進行しているといったように、わかりやすい分類法といえます。
■前立腺がんの病期(ステージ)分類
<TNM分類>
・T1a
直腸診や画像検査では見つからないが、組織を調べると、切除した組織の5%以下に、偶然発見されたがん
・T1b
直腸診や画像検査では見つからないが、組織を調べると、切除した組織の5%を超え、偶然発見されたがん
・T1c
直腸診や画像検査では見つからないが、PSA値の上昇で疑われ、生検によって確認されたがん
・T2a
がんが前立腺の片葉の2分の1にとどまっている
・T2b
がんが前立腺の片葉の2分の1を超えているが両葉には及ばない
・T2c
がんが前立腺の両葉に広がっているが、前立腺内にとどまっている
・T3a
がんが前立腺の被膜外へ広がっている
・T3b
がんが精嚢まで広がっている
・T4
がんが精襄以外の隣接臓器(膀胱頸部、外尿道括約筋、直腸、挙筋、骨盤壁)に広がっている
・NO
リンパ節転移なし
・N1
前立腺の近くにあるリンパ節にがんが広がっている
・MO
遠隔転移なし
・M1
前立腺から離れたリンパ節や臓器などへの転移、骨への転移がある
<ABCD分類>
・A1
前立腺内にとどまっている高分化がん
・A2
前立腺内に広がったがんか、低分化がん
・B1
前立腺の片葉に病変がとどまっている単発のがん
・B2
前立腺の片葉全体か両側にまたがっているがん
・C1
前立腺の被膜や被膜外に広がっているがん
・C2
膀胱頸部か尿管の閉塞が見られる
・D1
骨盤内のリンパ節にがんの転移が見られる
・D2
D1より広い範囲のリンパ節や、骨、肺、肝臓などの遠隔部位にがんの転移が見られる
以上、前立腺がんの診断についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。