
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
前立腺がんが疑われる場合、超音波検査は診断の重要な一歩となります。この検査は、前立腺の状態を詳しく調べ、がんの可能性を評価するために用いられる画像検査です。
超音波検査には大きく分けて2つの方法があり、それぞれに特徴と役割があります。この記事では、前立腺がんの超音波検査について、検査方法や分かること、最新技術、費用などを詳しく解説します。
前立腺がんの超音波検査とは
超音波検査は、音波を利用して体内の臓器を観察する画像検査です。前立腺がんの診断では、PSA検査や直腸診で異常が疑われた場合に、より詳しい状態を確認するために実施されます。
超音波検査の特徴は、放射線を使わず、痛みもほとんどない点です。リアルタイムで前立腺の動きや構造を観察でき、検査中に医師が前立腺のサイズ、形、内部の状態を確認できます。
この検査は、前立腺がんの確定診断に必要な生検(組織採取)を行う際のガイドとしても使用されます。超音波で前立腺を観察しながら針を刺すことで、正確な位置から組織を採取することができます。
経腹的超音波検査と経直腸的超音波検査の違い
前立腺の超音波検査には、経腹的超音波検査と経直腸的超音波検査(TRUS)の2種類があります。
経腹的超音波検査
経腹的超音波検査は、お腹の表面にプローブ(超音波を発する装置)を当てて検査を行います。膀胱や前立腺の大まかなサイズや形を確認できます。
この方法は体への負担が少なく、検査も簡単です。ただし、前立腺は体の深い位置にあるため、画像の鮮明度は経直腸的超音波検査に比べて劣ります。早期の前立腺がんを発見することは困難です。
経直腸的超音波検査(TRUS)
経直腸的超音波検査は、前立腺がんの診断において最も有効な超音波検査法です。
前立腺は直腸の前方に位置しているため、肛門からプローブを挿入することで、前立腺との距離が近くなり、より鮮明で正確な画像を得ることができます。
プローブは人差し指ほどの太さで、先端にゼリーを塗布して肛門から挿入します。検査時は横向きに寝た姿勢をとります。検査時間は通常10分から15分程度です。
経腹的超音波検査と経直腸的超音波検査の主な違いを表にまとめました。
| 検査方法 | プローブの位置 | 画像の鮮明度 | 早期がん発見 | 体への負担 |
|---|---|---|---|---|
| 経腹的超音波検査 | 腹部表面 | やや低い | 困難 | 少ない |
| 経直腸的超音波検査 | 肛門から挿入 | 高い | 可能 | やや大きい |
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経直腸的超音波検査の方法と手順
経直腸的超音波検査は、以下の手順で行われます。
まず、検査前の準備として、直腸内をきれいにするため、検査前日や当日に下剤や浣腸を使用することがあります。検査当日は、横向きに寝た姿勢(左側臥位)をとります。
プローブは細長い棒状の機器で、先端にコンドームや保護カバーをかぶせ、ゼリーを塗布します。このゼリーは超音波をスムーズに伝えるために必要です。
医師は肛門からゆっくりとプローブを挿入します。プローブが直腸内に入ると、モニター画面に前立腺の断面画像が映し出されます。医師はプローブを回転させたり、角度を変えたりしながら、前立腺の各部位を詳しく観察します。
検査中は、前立腺の大きさを測定したり、異常な部位がないかを確認したりします。生検を同時に行う場合は、超音波画像を見ながら、がんが疑われる部位や前立腺の決められた箇所に針を刺して組織を採取します。
検査後、プローブを抜き取って検査は終了です。通常、検査による大きな痛みはありませんが、プローブの挿入時や検査中に圧迫感や違和感を感じることがあります。
超音波検査で分かること
経直腸的超音波検査では、前立腺について様々な情報を得ることができます。
前立腺の大きさと形状
健康な前立腺は栗の実のような形をしており、左右がほぼ対称です。大きさは通常3から4センチメートル程度です。
超音波検査では、前立腺の横径、縦径、前後径を正確に測定できます。これにより、前立腺の体積を計算し、前立腺肥大症の評価なども行えます。
前立腺がんがある場合、形がいびつになり、左右非対称になることがあります。また、前立腺の被膜(前立腺を包む薄い膜)が不規則になったり、前後の長さが異常に長くなったりすることもあります。
内部構造とエコー画像
前立腺は内部構造によって「移行域」と「辺縁域」に分けられます。超音波検査では、これらの境界が明瞭かどうかも確認します。
健康な前立腺の内部は、超音波画像上で均一な明るさ(エコー輝度)を保っています。しかし、がんがあると、その部分だけが暗く(低エコー)映し出されることが多いです。
ただし、前立腺結石や石灰化がある場合は、逆に白く(高エコー)映ります。直腸診で硬いしこりに触れても、それががんなのか結石なのかは触診だけでは判別できませんが、超音波検査であれば区別することができます。
また、前立腺被膜のエコー像の乱れや、移行域と辺縁域の境界が不明瞭になることも、がんを疑う所見となります。
血流の評価(カラードプラ法)
現在、多くの前立腺専門施設では、カラードプラ法という技術を用いて血流の状態を観察しています。
カラードプラ法は、超音波を利用して血液の流れを色で表示する方法です。プローブに近づく血流は赤色、プローブから遠ざかる血流は青色で表示されます。流れが速いほど明るく、遅いほど暗く表示されます。
前立腺がんは成長するために栄養を必要とするため、がん組織には新しい血管が増殖します。カラードプラ法を使うことで、この異常な血管増殖を確認できます。がんがある部位では、通常より多くの血流が観察されることがあります。
最新の超音波検査技術
近年、前立腺がんの診断における超音波検査の技術は大きく進歩しています。
MRI融合超音波生検
MRI融合超音波生検は、2022年4月から健康保険の適用となった最新技術です。
従来の超音波検査では、がんが疑われる部位を正確に特定することが難しい場合がありました。MRIでは前立腺がんをより明瞭に描出できますが、生検時にはMRIを使用できないという問題がありました。
MRI融合超音波生検では、事前に撮影したMRI画像と、生検時の超音波画像をコンピューター上でリアルタイムに融合させます。これにより、MRIで見えたがんが疑われる部位を、超音波画像上に正確に表示できるようになりました。
この技術により、標的生検(ターゲット生検)が可能となり、がんの検出率が従来の方法に比べて約2倍向上したという報告があります。
バイプレーン超音波プローブ
バイプレーン超音波プローブは、2つの超音波発信部を持つプローブです。2つの直交する断面画像を同時に取得できるため、前立腺の立体的な把握がより容易になります。
この技術は、生検の精度向上や、治療計画の立案に役立っています。
3次元超音波画像
3次元超音波画像は、前立腺の立体的な構造を把握できる技術です。複数の断面画像から3次元画像を再構成することで、がんの位置や広がりをより正確に評価できます。
超音波検査と他の検査との組み合わせ
前立腺がんの診断では、超音波検査単独ではなく、他の検査と組み合わせて総合的に評価します。
PSA検査との関係
PSA(前立腺特異抗原)検査は、血液検査で前立腺がんのスクリーニングを行います。PSA値が基準値(一般的に4.0ng/mL)を超えた場合、超音波検査を含む精密検査が推奨されます。
ただし、PSA値が高いだけでは前立腺がんと確定できません。前立腺肥大症や前立腺炎でもPSA値は上昇するためです。
MRI検査との併用
MRI検査は、前立腺がんの局在診断に優れています。現在、PI-RADS(Prostate Imaging Reporting and Data System)という評価システムを用いて、MRI画像からがんの可能性を5段階で評価します。
PI-RADSスコアが3以上の場合、前立腺生検の適応となることが多く、その際に超音波検査が用いられます。
前立腺生検での役割
前立腺がんの確定診断には、組織を採取して顕微鏡で調べる生検が必要です。
超音波検査は、この生検時のガイドとして重要な役割を果たします。超音波画像を見ながら針を刺すことで、正確に組織を採取できます。
生検には、肛門から針を刺す経直腸生検と、会陰部(肛門と陰嚢の間)から針を刺す経会陰生検があります。経直腸生検では超音波プローブと生検針を同時に挿入し、超音波画像を見ながら針を進めます。
検査の費用と保険適用
前立腺の超音波検査は、健康保険が適用されます。
経直腸的超音波検査の費用
健康保険適用の場合、3割負担で5,000円から10,000円程度が目安です。ただし、初診料や再診料、検査前の血液検査などが別途必要になることがあります。
前立腺生検を伴う場合の費用
超音波検査と同時に前立腺生検を行う場合、費用は高くなります。
外来で行う場合、3割負担で15,000円から30,000円前後です。入院して行う場合は、検査料に加えて入院料や食事代が加わり、3割負担で50,000円から100,000円前後となります。
個室を希望する場合は、差額ベッド代が別途発生します。
MRI融合超音波生検の費用
MRI融合超音波生検は、2022年4月から健康保険が適用されています。
以前は先進医療として、通常の入院検査費に加えて約11万円の自己負担が必要でしたが、保険適用後は3割負担で約69,000円程度となりました(食事代別途)。
高額療養費制度の活用
検査費用が高額になる場合、高額療養費制度を利用できます。所得に応じた自己負担限度額を超えた分が払い戻されるため、実質的な負担を軽減できます。
費用について不安がある場合は、事前に医療機関の相談窓口で見積もりを依頼することも可能です。
検査を受ける際の注意点
検査前の準備
経直腸的超音波検査を受ける場合、直腸内をきれいにするため、検査前日や当日に下剤や浣腸を使用することがあります。医療機関の指示に従って準備してください。
検査当日は、リラックスできる服装で来院することをおすすめします。
検査中の注意
検査中は、医師の指示に従って呼吸を整えたり、体の力を抜いたりすることが大切です。緊張すると筋肉が硬くなり、プローブの挿入が困難になることがあります。
違和感や痛みを感じた場合は、遠慮せずに医師に伝えてください。
検査後の注意
通常の超音波検査であれば、検査後すぐに普段の生活に戻れます。
生検を同時に行った場合は、数日間、尿や便に血が混じることがあります。また、精液に血が混じる血精液症が見られることもありますが、通常は自然に治まります。
発熱や強い痛みがある場合は、感染症の可能性があるため、すぐに医療機関に連絡してください。
検査の限界
超音波検査は有用な検査ですが、すべてのがんを発見できるわけではありません。
ある程度がんが大きくなければ、超音波画像上で観察することは困難です。特に早期の小さながんは見逃される可能性があります。
また、超音波画像だけでは、がんと良性の病変を完全に区別することはできません。そのため、確定診断には生検による組織の確認が必要です。
検査結果の解釈と次のステップ
異常所見が見られた場合
超音波検査で前立腺がんが疑われる所見が見られた場合、通常は前立腺生検が推奨されます。
生検でがんが確認された場合は、がんの悪性度(グリーソンスコア)や病期(ステージ)を評価するため、CT検査、全身MRI検査、骨シンチグラフィーなどの追加検査が行われます。
異常所見が見られなかった場合
超音波検査で明らかな異常が見られなかった場合でも、PSA値が高い状態が続く場合は、定期的な経過観察が必要です。
PSA値の推移を見ながら、必要に応じて再度の超音波検査や生検が検討されることがあります。
前立腺がん診断における超音波検査の位置づけ
前立腺がんの診断は、通常、以下のような流れで進みます。
まず、PSA検査でスクリーニングを行います。PSA値が基準値を超えている場合、直腸診や超音波検査などの精密検査を実施します。
これらの検査でがんが疑われる場合、MRI検査で詳しく評価し、最終的に超音波ガイド下で前立腺生検を行って確定診断をします。
がんが確定した場合は、CT検査や骨シンチグラフィーなどでがんの広がりを調べ、病期を決定します。
このように、超音波検査は前立腺がん診断のプロセスにおいて、精密検査と生検ガイドという2つの重要な役割を担っています。
前立腺がんの早期発見には、定期的なPSA検査の受診と、異常が見られた場合の適切な精密検査が大切です。50歳以上の男性、または家族歴がある場合は、定期的な検診を検討してください。
参考文献・出典
済生会「男性のがん罹患数1位の前立腺がん 最新の診断方法で早期治療へ」
フィリップス ヘルスケア「MRI超音波融合前立腺生検ソリューション」
東京慈恵会医科大学 泌尿器科「MRI撮影及び超音波検査について」