リンパ球には、B細胞、T細胞およびNK細胞といった種類があります。
「成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)」は、HTLV-1というウイルスの感染によって、この中のT細胞が"がん"化したものです。
ウイルスの感染から発症するまでの期間が、平均55年といわれるほど長いため、ほとんどの場合は中高年以降に発症します。
■HTLV-1について
国内では、100万人を超える人がHTLV-1に感染しており、「キャリア」と呼ばれています。キャリアの多くは、九州、沖縄や四国、紀伊半島の太平洋側に集まっているという特徴があります。
HTLV-1は、主に母乳、輸血、性交渉などを介して感染します。特に母乳による母子感染が重要で、地域によるキャリア数の偏りの一因になっています。しかし、最近は人工乳の使用により、母乳を介した感染を防ぐことができるようになっています。
HTLV-1の感染が成人T細胞白血病・リンパ腫の原因ですが、キャリアの人がみんな発症するわけではありません。実際、キャリアの人が一生のうちに成人T細胞白血病・リンパ腫を発症する確率は2~5%程度といわれています。
■現れる症状
成人T細胞白血病・リンパ腫の症状は多様です。主なものとして、リンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫れ、皮膚の発疹などが現れます。
肺や肝臓、神経などへの浸潤がある場合には、咳、痰、黄疸、頭痛、吐き気、意識障害などの症状が加わります。血液中のカルシウム値が増加することによって食欲不振、だるさ、意識障害をきたすことがあります。
加えて、この病気は免疫と呼ばれる身体の抵抗力が低下するため、肺炎をはじめとするさまざまな感染症にかかりやすくなります。
一般的な細菌感染症の他にも、真菌(かび)による肺、食道、皮膚の感染やウイルス感染症などを発症し、それぞれの症状が現れます。