卵巣がんのステージ2~4期では、手術後に化学療法(抗がん剤治療)が行われます。卵巣がんは抗がん剤の効果が現れやすい特徴があり、重要な位置づけになっています。
卵巣がんで標準となる化学療法は、タキサン系とプラチナ系の併用です。代表的なものとしては、パクリタキセル(T)とカルボプラチン(C)の併用であるTC療法があります。
なお、TC療法が使用できない場合、オプションとしてDC療法(ドキタセル+カルボプラチン)やプラチナ単剤療法も推奨されています。また、パクリタキセル(T)を毎週投与する「dose-denseTC療法」という方法も有効な治療法であると報告されています。
最近、抗VEGFヒト化モノクローナル抗体(ベバシズマブ。商品名=アバスチン)が、卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんにも適応になり、治療に使えるようになりました。
化学療法と併用後、単剤で使用するものであり、また一つ治療の選択肢が広がったといえます。しかし消化管穿孔、血栓塞栓症、高血圧など特有の副作用もありますので注意が必要です。
卵巣がんの種類と化学療法
卵巣がんは発生部位により、
1.表層上皮性・間質性
2.性索間質
3.胚細胞性
4.その他、
と種類が分かれ、それぞれに良性・境界悪性・悪性の腫瘍があります。卵巣がんの上位を占める上皮性卵巣がんには、TC療法が有効です。しかし、日本人で二番目に多い明細胞腺がんは、漿液性腺がんや類内膜腺がんに比べて、TC療法が効きにくいとされています。
また、粘液性腺がんは、発生頻度が最も少ないですが、同様にTC療法が効きにくいと指摘されています。しかし、現在TC療法より効果がある療法が出てきていないので、TC療法が最も標準的な化学療法とされています。
いっぽう、若い人に多い胚細胞性のがんでは、化学療法がよく効くので、がんの部分のみを核出し、卵巣を温存することも可能です。しかし出産希望がなければ、付属器(卵巣+卵管)は切除するのが一般的です。
その後、ブレオマイシン(B)+エトポシド(E)+シスプラチン(P)を用いたBEP療法を行うことが、標準的な治療になります。
以上、卵巣がんの化学療法についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。