胃がんがステージ(病期)Ⅱ、Ⅲという進行がんの状態になると手術に抗がん剤治療が加わるのが標準治療です。手術で胃がん部分をすべて切除したと思っても、肉眼で見えないがんが残っている可能性があるので、それを抗がん剤で叩こうというのが目的です。
Ⅱ、Ⅲ期では手術だけで治療を終了するよりも、手術後に抗がん剤治療(術後補助化学療法)を行った方が生存率が高まることが臨床研究で示されています。抗がん剤治療の期間は一年間とするのが基本です。
胃がんの術後補助化学療法を標準治療にしたきっかけとなる研究は次のとおりです。
①「Ⅱ、Ⅲ期の患者で手術だけをした」グループと②「Ⅱ、Ⅲ期の患者で術後に抗がん剤の「TS-1」を1年間服用した」グループを比較しました。すると、3年後の生存率は①が70.1%だったのに対し、②は80.5%と、術後補助化学療法の上乗せ効果を認める結果となったのです。
術後1年間のTS-1の服用法は、4週間服用したあと次の2週間は服用を休む、というクールを繰り返すものです。TS-1は飲み薬なので、点滴薬とは違って患者の日常生活に支障をきたすことはありませんが、副作用は避けられません。
TS-1の副作用としては「食欲の低下」「吐き気」「下痢」「腎障害」「白血球減少」などがあるため、患者さん全員が1年間TS-1を服用できるとは限りません。途中で服用をやめる人、服用量を減らす人もでてきます。ステージⅡの人には半年の服用ではどうか、という研究も続けられています。
このようにステージⅡでは術後補助療法の期間が将来は短縮する可能性もありますが、ステージⅢの患者に対する術後補助化学療法はTS-1のみならず、もう1剤抗がん剤を加えるべきという声があがってきています。
さらに、胃がんの治療では、抗がん剤を手術の前に行う「術前補助化学療法」の実施も検討されています。
以上、胃がんの治療についての解説でした。