がん治療専門のアドバイザー、本村です。
当記事では免疫チェックポイント阻害剤、オプジーボの効果と副作用について解説しています。
皮膚がんの一種であるメラノーマ。治療法の基本は手術によって皮膚上にあるがんを切除することです。
しかし再発のリスクがある場合や、手術の対象にならない場合は「薬」による治療(化学療法)が提案されます。
これまでのメラノーマの化学療法
これまで、メラノーマの治療に使えるのはインターフェロンβとダカルバジンという薬しかありませんでした。インターフェロンβはリンパ節転移が起きている場合、術後の補助療法としてメラノーマがあった部位やリンパ節転移がある部位に注射します。ただし、内臓への転移がある部分には効果がないので皮膚転移だけに使用されます。
内臓への転移に対しては抗がん剤のダカルバジンが使用されます。ダカルバジンの奏効率(腫瘍の縮小効果が少しでもある率)は5~20%ですが、ほとんどは部分的に効くというレベルであり、内臓の腫瘍が消えるまでには至りません。
「腫瘍は少し小さくなるが、生存期間の延長効果はほとんど認められない」という薬でした。ダカルバジンだけでは効果が薄いと、これにノルバデックスという抗がん剤を併用した方法も試されましたが、大きな変化はありませんでした。
しかし、これまで日本で保険適用されたメラノーマの薬は、このインターフェロンとダカルバジンしかなかったのが実情です。
オプジーボの特徴
オプジーボは2014年9月に承認された薬で、抗PD-1抗体薬(阻害薬)と呼ばれる免疫に作用する薬です。
・PD-1抗体薬であるオプジーボの仕組み
人間のからだに外敵(ウイルスなど)や異物が侵入してくると、T細胞という免疫細胞が主体となってこれらの外敵を攻撃します。T細胞は「がん細胞」に対しても、それががん細胞だと認識できれば(できない場合もあります)攻撃します。
いっぽう、がん細胞は自分を守るために表面に「PD-L1」という物質を盾として放出します。これがT細胞にあるPD-1受容体に結合すると、がん細胞への攻撃をストップする信号が出され、T細胞の働きを抑制してしまいます。
オプジーボはT細胞のPD-1受容体に結合することで、がん細胞とPD-L1との結合を阻止する働きがあります。そのために免疫機能にブレーキがかからず、T細胞ががんを攻撃する力を保持するのです。
つまり、オプジーボはがん細胞の分裂や増殖を阻害するといった従来の抗がん剤の働きとは異なり、T細胞の働きを手助けするための薬です。
オプジーボの効果
メラノーマですでにダカルバジンによる化学療法を行った人に対して、オプジーボを投与する臨床試験では、奏効率22.9%とそれなりに高い数値が報告されています。
とはいえ、効果のある人と効果のない人がはっきりしている傾向があるのは事実です。どのような人に効果があらわれ、逆に薄いのかは、今後医療現場で使われていくなかで明らかになっていくと考えられています。
オプジーボは点滴によって投与される薬で、3週間に一度、体重1kgあたり2mgの量が投与されます。投与にかかる時間は1時間30分程度であり、多くの人は入院する必要なく通院で治療を受けます。
オプジーボの副作用
抗がん剤のように、直接細胞を攻撃する薬ではないため、吐き気や嘔吐、脱毛などのよくみられる副作用はとても少ないですが、それでも副作用はあります。主な副作用は次の症状です。
・間質性肺炎
肺にある空気を取り込む肺胞が炎症を起こしてしまう症状です。痰のでない乾いた咳、息切れ、呼吸がしにくい、発熱などが起こります。重症化すれば命に関わるのですぐに医師、看護師に報告しましょう。
・肝機能障害
肝機能は血液検査で様々な情報が分かります。オプジーボを使用するといくつかの肝機能が悪化することがあります。
・甲状腺機能低下症
新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンの分泌が低下します。元気がない、疲れやすい、まぶたのむくみ、寒がり、いつも眠いなどの症状が現れます。
・インフュージョンリアクション
オプジーボの投与中、または投与後24時間以内に発熱、悪寒、ふるえ、かゆみ、めまい、呼吸困難などが現れることがあります。こうした反応をインフュージョンリアクションと呼びます。
オプジーボの治療を受けるには
まず、既往症によって使えない人がいます。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本病をはじめとする甲状腺異常などの自己免疫疾患をもつ人は副作用のリスクが高いために受けられない可能性が高くなります。
そのほかの場合は基本的に使用可能ですが、発売されて日が浅く、医療現場での経験が浅いため、予期せぬ副作用に対応できない場合があります。そのためしばらくは限られた病院でのみ投与を受けられることになりますが、徐々に一般の薬として浸透していくと考えられます。
またオプジーボは肺がんなど、メラノーマ以外の多くのがんについて臨床試験が実施されており、適応の拡大が見込まれています。
以上、オプジーボについての解説でした。