
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
肝臓がんの患者さんやご家族から「黄疸が出てきた」「肌が黄色くなってきた」というご相談をいただくことがあります。黄疸は肝臓がんの進行に伴って現れる症状のひとつであり、適切な治療が必要です。
この記事では、肝臓がんで起こる黄疸のメカニズムと、具体的な治療法について詳しく解説していきます。
肝臓がんで黄疸が起こる理由
黄疸とは、皮膚や白目が黄色くなる症状のことです。これは血液中のビリルビンという黄色い色素が増加することで起こります。
ビリルビンは、寿命を終えた赤血球が分解される際に生成される物質です。通常、このビリルビンは肝臓で処理され、胆汁の成分として胆管を通って十二指腸へと排出されます。しかし、肝臓がんになると、このビリルビンの処理や排出がうまくいかなくなることがあります。
肝臓がんで黄疸が起こる主な原因は2つあります。
ひとつは肝臓の機能が低下することによる黄疸です。肝臓がんの患者さんの多くは肝硬変を背景に持っており、肝硬変が進行すると肝臓のはたらきが低下します。肝臓の細胞が十分に機能しなくなると、ビリルビンを処理して胆汁中に排出する能力が落ちてしまい、血液中にビリルビンが蓄積します。
もうひとつは胆管の閉塞による黄疸です。肝臓がんの腫瘍が胆管を圧迫したり、胆管内に進展したりすると、胆汁の通り道がふさがれてしまいます。胆汁が十二指腸に流れなくなると、胆汁に含まれるビリルビンが血液中に逆流し、黄疸が現れます。
黄疸が出ると、皮膚や白目が黄色くなるだけでなく、尿の色が濃くなる、皮膚に強いかゆみが出る、全身の倦怠感、食欲不振などの症状も伴うことがあります。
黄疸の種類による治療の違い
肝臓がんによる黄疸の治療は、その原因によって大きく異なります。肝機能低下による黄疸と胆管閉塞による黄疸では、治療のアプローチが変わってくるため、まず原因を正確に診断することが重要です。
診断には血液検査や画像検査が用いられます。血液検査ではビリルビン値、肝機能を示すAST、ALT、ALP、γ-GTPなどの数値を確認します。画像検査では超音波検査、CT、MRIなどで胆管の拡張や閉塞の有無、腫瘍の位置や大きさを詳しく調べます。
これらの検査結果をもとに、医師は適切な治療方針を決定します。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
肝機能低下による黄疸の治療法
肝臓を保護する薬物治療
肝硬変の進行による肝機能低下が原因の黄疸には、肝臓を保護する薬が用いられます。
最も広く使用されているのがウルソデオキシコール酸です。この薬は肝臓での胆汁分泌を促進し、胆汁うっ滞を改善する作用があります。また、肝細胞を障害する疎水性胆汁酸と置き換わることで、肝細胞への障害を軽減する効果も期待できます。
ウルソデオキシコール酸の投与量は病状によって異なりますが、通常、成人では1日150mgから600mg程度が使用されます。この薬は人間の体内にもともと存在する胆汁成分でもあるため、副作用が少ないという利点があります。
ただし、完全に胆管が閉塞している場合や劇症肝炎の患者さんには使用できません。また、効果には個人差があり、肝臓の状態が悪い場合には十分な効果が得られないこともあります。
胆汁酸の再吸収を抑える治療
コレスチラミンという薬が使用されることもあります。この薬は消化管の内部で胆汁酸と結合し、血液中の胆汁酸を減らすはたらきがあります。
しかし、コレスチラミンは効果が限定的で、肝臓の状態が悪いときには投与に慎重になる必要があります。また、完全に胆管が閉塞している患者さんには効果がありません。
かゆみへの対症療法
黄疸によるかゆみは患者さんにとって非常につらい症状です。かゆみが強い場合には、いくつかの対症療法が行われます。
飲み薬としては、抗ヒスタミン薬やナルフラフィン(商品名レミッチ)などが使用されます。また、吐き気止めとして使われるオンダンセトロンや、結核治療薬のリファンピシンが有効な場合もあります。
塗り薬としては、薄い重曹液などが用いられることがあります。
これらの治療は黄疸そのものを治すものではなく、症状を和らげるための対症療法です。根本的な治療としては、黄疸の原因となっている肝機能の改善や、胆管の閉塞を解除することが必要です。
胆管閉塞による黄疸の治療法
腫瘍によって胆管がふさがれている場合には、胆汁を排出するドレナージ術が行われます。主な方法として、経皮経肝胆道ドレナージと内視鏡的胆道ドレナージがあります。
経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD/PTBD)
経皮経肝胆道ドレナージは、皮膚の上から針やチューブを肝臓を通して胆管に挿入し、胆汁を体外に排出する方法です。
具体的な手順は以下のとおりです。
まず、局所麻酔を行います。次に、超音波画像で体内を見ながら、腹部または脇腹の皮膚から針(ガイドワイヤー)を刺します。穿刺部位は、左肝の胆管を狙う場合は心窩部から、右肝の胆管を狙う場合は右肋間から行われます。
ガイドワイヤーが胆管まで通ったら、ワイヤーに沿って細い管(ドレナージチューブ)を送り込みます。チューブが適切な位置に留置されたら、ガイドワイヤーを抜き、チューブは皮膚に縫いつけて固定します。
このチューブを通して胆汁が体外に排出されることで、黄疸の改善が期待できます。
また、チューブを使わず、ステントと呼ばれる網状の金属の管を胆管内に留置することもあります。ステントには、プラスチック製のものと金属製のものがあります。プラスチックステントは交換が比較的容易ですが、内腔が細いため1〜3ヶ月程度で閉塞しやすいという欠点があります。金属ステントは太くて閉塞しにくいため、長期間の留置に適しています。
PTCDの注意点としては、肝臓から出血するおそれがあるため、出血が止まりにくい患者さんや血液をサラサラにする薬を服用している方は、この治療を受けることができない場合があります。また、右肋間から穿刺する場合には、肋間動脈損傷による出血や気胸のリスクもあります。
内視鏡的胆道ドレナージ(ERBD)
内視鏡的胆道ドレナージは、口から内視鏡を挿入し、十二指腸にある胆管の出口(十二指腸乳頭)から胆管の閉塞部まで細いチューブを通し、胆汁を排出する方法です。
この方法では、内視鏡を使って十二指腸乳頭からステントを胆管内に留置します。PTCDと同様に、プラスチック製または金属製のステントが使用されます。
ERBDの利点は、体外にチューブが出ないため、患者さんの日常生活への影響が少ないことです。また、肝臓を直接穿刺しないため、PTCDに比べて出血のリスクが低くなります。
一方、技術的に難易度が高く、すべての症例で実施できるわけではありません。特に、胃の手術を受けて胃空腸吻合がある場合や、解剖学的な理由で十二指腸乳頭にアプローチできない場合には、PTCDが選択されます。
その他の胆道ドレナージ法
近年では、超音波内視鏡を使った新しい治療法も行われるようになってきました。超音波内視鏡下胆管ドレナージ(EUS-BD)は、胃の中から超音波で胆管を探し、針で刺してチューブを入れる方法です。この方法では胆汁が胃の中に出されるため、体外にチューブが出ることもありません。ただし、現在この治療ができる病院は限られています。
ドレナージ治療後の管理
ドレナージ治療を受けた後は、適切な管理が重要です。
PTCDの場合、チューブが皮膚から出ているため、挿入部位の消毒やチューブが閉塞しないように注意する必要があります。また、チューブが抜けてしまうと胆汁が腹腔内に漏れて胆汁性腹膜炎を起こす可能性があるため、チューブの固定状態を常に確認します。
チューブからの排液の色や量を観察することも大切です。排液が血性になったり、量が急に減少したりした場合には、すぐに医療機関に連絡する必要があります。
ステントを留置した場合でも、定期的な経過観察が必要です。ステントが閉塞すると再び黄疸が悪化するため、症状の変化に注意を払います。
黄疸治療の最新動向
2025年現在、胆道ドレナージの技術は進歩を続けています。金属ステントの改良により、より長期間の開存性が得られるようになってきました。また、超音波内視鏡を使った胆道ドレナージ法は、従来の方法が困難な症例でも実施できる可能性があり、今後の普及が期待されています。
肝機能を保護する薬についても、ウルソデオキシコール酸に加えて、ベザフィブラートなどの薬剤が原発性胆汁性胆管炎などの病態で効果が報告されています。ただし、肝臓がんに対する標準的な使用方法はまだ確立されていません。
黄疸が出たときの注意点
黄疸が出現した場合、まず医師に相談することが最も重要です。黄疸は肝臓がんの進行や胆管の閉塞を示す重要なサインであり、早期の対応が必要です。
黄疸がある場合には基本的に安静が必要です。肝臓に負担をかけないよう、過度な運動や重労働は避けましょう。食事についても、脂っこいものを控え、消化の良いものを少量ずつ摂るようにします。
また、黄疸が出ている状態では肝臓の機能が低下しているため、薬の代謝能力も落ちています。市販薬やサプリメントを服用する際には、必ず医師や薬剤師に相談してください。
黄疸と治療の選択
黄疸の有無は、肝臓がんの治療方針を決める上でも重要な要素です。
一般的に、黄疸が出ている状態では肝臓の機能が低下しているため、手術や抗がん剤治療を行うことが難しくなります。そのため、まず黄疸を改善する治療(減黄治療)を優先し、肝機能が回復してから根本的ながん治療を行うという流れになります。
ただし、黄疸があっても治療の選択肢がないわけではありません。肝機能の状態を総合的に評価し、患者さんの体力や希望も含めて、最適な治療方針を決定していきます。
表:肝臓がんによる黄疸の主な治療法
| 黄疸のタイプ | 原因 | 主な治療法 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 肝機能低下による黄疸 | 肝硬変の進行、肝細胞の障害 | ウルソデオキシコール酸、コレスチラミン、かゆみ止め(抗ヒスタミン薬など) | 肝臓を保護し、症状を和らげる対症療法が中心 |
| 胆管閉塞による黄疸 | 腫瘍による胆管の圧迫・閉塞 | PTCD/PTBD(経皮経肝胆道ドレナージ)、ERBD(内視鏡的胆道ドレナージ)、ステント留置 | 閉塞を解除して胆汁の流れを改善する |
表:ドレナージ法の比較
| 治療法 | アプローチ | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| PTCD/PTBD | 皮膚から肝臓を通して胆管へ | 技術的に実施しやすい、解剖学的制約が少ない | 体外にチューブが出る、出血のリスク、管理が必要 |
| ERBD | 口から内視鏡で十二指腸乳頭へ | 体外にチューブが出ない、生活への影響が少ない | 技術的難易度が高い、解剖学的制約がある |
| EUS-BD | 超音波内視鏡で胃から胆管へ | 他の方法が困難な場合も実施可能、体外にチューブが出ない | 実施できる施設が限られる、新しい治療法 |
まとめ
肝臓がんによる黄疸は、肝機能低下と胆管閉塞という2つの主な原因があり、それぞれに適した治療法が選択されます。
肝機能低下による黄疸には、ウルソデオキシコール酸などの肝臓を保護する薬やかゆみ止めが用いられます。一方、胆管閉塞による黄疸には、PTCDやERBDといったドレナージ術によって胆汁の流れを改善する治療が行われます。
黄疸が出たときには、早めに医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが大切です。また、ドレナージ治療を受けた後も、適切な管理と定期的な経過観察が必要です。
治療方針は患者さんの全身状態、肝機能の程度、がんの進行度などを総合的に判断して決定されます。医師とよく相談しながら、自分に合った治療を選択していくことが重要です。