がん治療における「化学療法」とは、抗がん剤を使う治療のことです。抗がん剤が血液に乗って全身をめぐり、がん細胞を殺すことを目的とした「全身的治療法」です。投与方法は静脈への注射や点滴あるいは内服です。
肺がんで化学療法が使われる場合
化学療法が選択される主な適応例は、つぎのとおりです。
1.非小細胞肺がんの場合
ステージIB~Ⅱ期では手術との併用、Ⅲ期では放射線療法との併用、Ⅳ期では化学療法単独で使われます。しかし、非小細胞がんでは抗がん剤が効きにくく、それのみで大きな効果を期待するのはむずかしいとされています。
2.小細胞肺がんの場合
小細胞がんは化学療法、抗がん剤が効く場合がよくあります。限局型(LD)の場合は放射線療法との併用で、進展型(ED)の場合は化学療法単独で使用します。
また、肺がんの化学療法では、抗がん剤を1種類で使うこと(単剤療法)もありますが、ほとんどが2種類以上の組み合わせ(併用療法)です。
肺がんの化学療法で使われる薬のタイプと名前
1.非小細胞肺がんの場合
非小細胞がんで全身状態が良好な場合には、プラチナ製剤を含む2剤併用療法をおこないます。全身状態が悪い場合には、プラチナ製剤を使用せず、そのほかの抗がん剤を単独投与か併用投与します。初回治療に効かなかった場合や再発した場合には、ドセタキセルの単独投与や分子標的治療薬の使用に効果が認められています。
2.小細胞肺がんの場合
小細胞がんで全身状態が良好な場合には、限局型では標準的治療としてシスプラチン十エトポシドと放射線との併用療法がおこなわれます。一方、進展型ではシスプラスチン+イリノテカンの2剤併用療法を選択します。全身状態が悪い場合には、カルボプラチン+エトポシドなどの投与がおこなわれます。
【肺がんで使用される主な抗がん剤と分子標的薬】
非小細胞肺がん | 小細胞肺がん | |
プラチナ製剤 | ・シスプラチン ・カルボプラチン |
・シスプラチン ・カルボプラチン |
併用抗がん剤 | ・イリノテカン ・パクリタキセル ・ドセタキセル ・ビノレルビン ・ゲムシタビン ・ペメトレキセド ・マイトマイシンC ・ビンデシン ・アムルビシン ・テガフール・ウラシル配合剤 (UFT) ・ティーエスワン |
・イリノテカン ・エトボシド ・シクロホスフアミド ・ドキソルビシン ・ビンクリスチン ・ノギテカン ・アムルビシン |
分子標的薬 | ・ゲフィチニブ ・エルロチニフ ・ベバシズマブ |
以上、肺がんの化学療法(抗がん剤治療)についての解説でした。
肺がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。