こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
抗がん剤治療を始めるとき、多くの患者さんが「副作用はいつ頃がピークになるのだろう」「治療を重ねるごとに辛くなるのだろうか」と不安を感じます。
副作用の現れ方には個人差がありますが、ある程度のパターンがあります。それを知っておくことで、症状が出やすい時期に備えたり、仕事や家事の調整をしたりすることができます。
この記事では、抗がん剤の副作用がいつ頃ピークを迎えるのか、そして治療の回数を重ねることで副作用がどう変化するのかについて、最新の情報をもとに説明します。
抗がん剤の副作用とは
抗がん剤は、がん細胞の分裂や増殖を抑えることでがんの進行を防ぐ薬です。しかし、分裂が盛んな正常な細胞にも影響を与えてしまうため、さまざまな副作用が起こります。
特に影響を受けやすいのは、骨髄で作られる血液の成分、消化管の粘膜、毛根などです。これらの細胞は新陳代謝が活発なため、抗がん剤の作用を受けやすいのです。
副作用の種類や程度は、使用する抗がん剤の種類、投与量、治療期間、そして患者さんの体の状態によって大きく異なります。同じ抗がん剤を使っていても、人によって副作用の出方は違うということを理解しておきましょう。
主な副作用とそのピーク時期
抗がん剤の副作用は、症状によって現れる時期が異なります。以下に主な副作用とそのピーク時期をまとめました。
吐き気・嘔吐のピーク時期
吐き気や嘔吐は、抗がん剤治療で最も代表的な副作用の一つです。この副作用には発現時期によって3つのタイプがあります。
| タイプ | 発現時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 急性嘔吐 | 投与開始から24時間以内 | 抗がん剤投与後、数時間から1日以内に現れる。制吐薬の事前投与で予防可能なことが多い |
| 遅発性嘔吐 | 投与後24時間以降、2〜5日間 | 投与翌日以降に始まり、数日間続く。複数の制吐薬を併用して予防する |
| 予期性嘔吐 | 治療前 | 過去の治療経験から、治療前に不安や緊張で起こる心理的な要因が強い |
2025年時点では、吐き気や嘔吐を抑える制吐薬が進歩しており、適切に使用することで多くの場合、症状をコントロールできるようになっています。
倦怠感のピーク時期
だるさや疲れやすさといった倦怠感は、抗がん剤治療を受けている多くの患者さんが経験する副作用です。
倦怠感のピークは抗がん剤投与後2〜3日を迎え、その後徐々に改善に向かうことが一般的です。ただし、治療を重ねるごとに倦怠感は強くなる傾向があります。
倦怠感の原因は、がんそのものの症状、貧血、治療による体力の消耗、疲労やストレス、不眠など、複数の要因が重なっていると考えられています。
骨髄抑制のピーク時期
骨髄抑制とは、抗がん剤によって骨髄の働きが抑えられ、白血球・赤血球・血小板が減少することです。これは自覚症状が乏しいため、定期的な血液検査で確認する必要があります。
一般的に、骨髄抑制のピークは投与後1〜2週間頃です。中でも白血球は寿命が約8時間と短いため、投与後5日から14日前後で最も少なくなります。
| 血液成分 | 減少のピーク時期 | 主な症状・リスク |
|---|---|---|
| 白血球 | 投与後5〜14日 | 感染症にかかりやすくなる。発熱、咳、排尿時の痛みなどに注意 |
| 血小板 | 投与後7〜14日 | 出血しやすくなる、血が止まりにくくなる |
| 赤血球 | 治療を継続するうちに徐々に | 貧血症状(めまい、頭痛、息切れ、疲労感) |
特に白血球が500/μL以下で発熱(37.5度以上)がある場合は、発熱性好中球減少症と呼ばれる重篤な状態になることがあるため、すぐに医療機関に連絡する必要があります。
口内炎のピーク時期
口内炎は、抗がん剤によって口の中の粘膜が傷つけられることで起こります。
投与後1週間程度で口の中に発赤が見られ、2週間後に痛みのピークを迎えることが多いです。白血球の回復とともに症状は軽減しますが、治るまでには2〜3週間かかることがあります。
予防には、治療開始前の歯科受診、こまめなうがい、適切な歯磨きなど、口腔内を清潔に保つことが重要です。
脱毛のピーク時期
脱毛は抗がん剤治療開始後2〜3週間で始まり、短期間で一度に抜けることが多いです。
治療を何コースか繰り返すため、回復が間に合わず、他の副作用に比べて長期に感じられます。抗がん剤治療が全て終わってから3〜6ヶ月すると髪の毛が生え始め、8ヶ月〜1年程度で回復します。
2025年時点では、頭皮を冷却して血流を抑え、薬剤が毛根に届きにくくする「スカルプクーリング」という方法も、一定の条件下で使われることがあります。
手足のしびれ(末梢神経障害)のピーク時期
手足のしびれは、抗がん剤の投与から2〜3週間後に始まることが多く、特徴的なのは治療回数とともに症状が強くなるという点です。
ピリピリとしたしびれ、皮膚に膜が張りついたような違和感、温度が分かりにくいなどの感覚異常、力が入らないといった筋力低下の症状が現れることがあります。
この副作用は治療終了後も改善しないケースが少なくないため、転倒やケガの防止が重要になります。
下痢のピーク時期
抗がん剤による下痢には2つのタイプがあります。
- 早発性下痢:治療開始直後〜24時間以内に発症。腸の蠕動運動が活発になることが原因
- 遅発性下痢:治療開始後10〜14日目に発症。腸の粘膜が傷ついて起こる
遅発性下痢は白血球が減少している時期と重なるため、炎症を引き起こしたり感染症を併発したりする恐れがあり、特に注意が必要です。
何クール目が辛い?回数ごとの変化
抗がん剤治療を受けた多くの患者さんの経験から、治療の回数を重ねるごとに副作用が変化していくことが分かっています。
1クール目の特徴
1クール目は、多くの場合、吐き気止めなどの対策薬が効果的に働き、思ったほど辛くないと感じる患者さんもいます。
ただし、この時期は自分の体がどのように副作用に反応するか分からないため、不安が強いという心理的な負担があります。トイレが近くなる、軽い倦怠感などは感じますが、脱毛はまだ始まっていないことが多いです。
1回目の治療時は、治療当日、1日目、2日目と日にちごとに症状や気づいたことをメモしておくと、次回以降の対策を立てやすくなります。
2クール目以降の変化
個人差はありますが、2クール目がきついと感じる患者さんが多いようです。
2クール目からは、脱毛、吐き気、便秘、口内炎などの症状が顕著になり始めます。また、骨髄抑制によって白血球の量が減少し、感染症を起こしやすい状態になります。
3クール目以降からは、徐々に体力が落ちている実感を感じる患者さんが増えます。倦怠感は治療を重ねるごとに強くなる傾向があり、これは抗がん剤が体に蓄積されるためと考えられています。
4クール目の終わり頃になると、手足のしびれを感じるようになることがあります。これは末梢神経がダメージを受けるためで、治療後も症状が改善しないケースが少なくありません。
回数ごとに辛くなる理由
治療を重ねるごとに副作用が強くなる主な理由は以下の通りです。
- 抗がん剤が体に蓄積されることで、副作用が強くなる
- 治療による体力の消耗が蓄積し、疲労が回復しにくくなる
- 末梢神経障害など、回復に時間がかかる副作用が累積する
- 心理的な負担が蓄積し、治療日が近づくと気分が重くなる
ある患者さんの体験では、「抗がん剤治療は回数をこなすごとに身体の負担の大きさは本当に大変だった」という声があります。また、「治療を重ねることで少しずつ副作用が強くなり、肉体的にも精神的にもきつかった」という経験も報告されています。
副作用への対処法
副作用を完全に防ぐことはできませんが、適切な対策を取ることで症状を軽減したり、重症化を防いだりすることができます。
感染症の予防
白血球が減少する時期(投与後1〜2週間)は特に注意が必要です。
- 手洗い・うがいを徹底する
- 人混みを避ける
- 生ものや雑菌が繁殖しやすい食品は避け、十分に加熱したものを食べる
- 毎日体温を測り、38度以上の発熱があればすぐに医療機関に連絡する
倦怠感への対処
- 自分の活動と休息のパターンを記録し、倦怠感が現れる時期と強さを把握する
- 適度な休息を取る一方で、体調が許す範囲で軽い運動(散歩など)を取り入れる
- 栄養と水分をしっかり補給する
- 短時間の昼寝を取り入れる
貧血への対処
- ふらつきを感じたらすぐにしゃがんで休む
- 手すり側を歩く、急な動作を避けるなど、転倒を防ぐ工夫をする
- レバーやほうれん草など、鉄分を多く含む食品を意識的に摂取する
- ビタミン・ミネラル・タンパク質などをバランスよく摂る
出血への対処
- 体に傷をつけないよう、激しい運動を控える
- 皮膚を強くこすらない、下着や服の圧迫を避ける
- 歯磨きは柔らかい歯ブラシを使い、優しく行う
- 15分以上圧迫しても出血が止まらない場合は、すぐに病院に連絡する
口内炎への対処
- 治療開始前に歯科を受診し、虫歯や歯周病を治療しておく
- 起床時や食前後、就寝前などこまめにうがいを行う
- 刺激の少ないシャンプーのような口腔ケア用品を使う
- 痛みが強い場合は、スポンジブラシを使う
吐き気・嘔吐への対処
- 予防的に制吐薬を使用する
- 食事は少量ずつ、回数を増やして食べる
- 冷たいもの、さっぱりしたものなど、食べやすいものを選ぶ
- 強い匂いのする食べ物は避ける
医師との相談が大切
副作用が強くなってきたと感じた場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。抗がん剤治療の変更や中止も可能です。
また、現時点での抗がん剤の効果や今後の治療方針を担当医に確認することで、気持ちが軽くなることもあります。目に見えない効果が出ていたり、抗がん剤投与の残り回数が分かったりすると、治療への見通しが立ちやすくなります。
心のつらさについては、緩和ケアチームへの相談も可能です。緩和ケアチームには精神科医や心理士といった心のプロがいるため、心身の状態に応じた専門的なサポートを受けることができます。
治療スケジュールの調整
抗がん剤治療を受ける回数やペースは、がんの種類や進行度によって異なります。主治医と相談しながら、家事や仕事になるべく支障を来さない日程で治療スケジュールを組むことも可能です。
副作用症状の波を把握できれば、症状がつらくなりそうな日に備えて周囲の人にあらかじめサポートを頼んだり、仕事の量を調整したりすることができ、日常生活に支障を来すリスクを最小限に抑えられます。
個人差が大きいことを理解する
抗がん剤の副作用は、同じ薬を使っていても人によって出方が大きく異なります。
ある患者さんの体験では、「1クール目はトイレの回数以外に辛い症状は特になく、脱毛もなかった。吐き気止めも効いて気持ち悪さもゼロだった」という声がある一方、「院内で知り合った同じ病気の男性は、抗がん剤が合わず辛そうだった」という経験も報告されています。
このように、副作用の出方には個人差がかなりあるため、他の人の経験を参考にしつつも、自分の体の変化を丁寧に観察し、記録していくことが大切です。
最後に
抗がん剤の副作用は、症状によって現れる時期が異なり、また治療を重ねるごとに強くなる傾向があります。
しかし、副作用が起こる時期はある程度予想できるため、対策を立てることができます。また、2025年時点では副作用を抑える薬や支持療法が進歩しており、適切に使用することで症状をコントロールできるようになってきています。
副作用の波を把握し、医師や医療スタッフと相談しながら適切な対策を取ることで、治療を継続しながら日常生活を送ることは可能です。
不安なことや気になることがあれば、遠慮なく医療スタッフに相談しましょう。

