【レジメン】
Erlotinib(エルロチニブ:タルセバ)=1回150mg:1日1回経口
Ramucirumab(ラムシルマブ:サイラムザ)=10mg/kg:点滴静注(初回60分)
【アレルギー対策】
d-クロルフェニラミン5mgIV(Day1)
基本事項
【適応】
EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
【奏効率】(RELAY試験)
・奏効率
76%
・病勢コントロール率
95%
・無増悪生存期間(中央値)
19.4カ月
【副作用】(RELAY試験)
・ざ瘡様皮疹:All Grade=67%、Grade3以上=15%
・爪囲炎:All Grade=53%、Grade3以上=4%
・皮膚乾燥:All Grade=38%、Grade3以上=<1%
・下痢:All Grade=70%、Grade3以上=7%
・口内炎:All Grade=42%、Grade3以上=2%
・脱毛:All Grade=34%、Grade3以上=0%
・ALT上昇:All Grade=43%、Grade3以上=9%
・AST上昇:All Grade=42%、Grade3以上=5%
・高血圧:All Grade=45%、Grade3以上=24%
・尿蛋白:All Grade=34%、Grade3以上=3%
・鼻出血:All Grade=33%、Grade3以上=0%
・歯肉出血:All Grade=9%、Grade3以上=0%
・高血圧:All Grade=45%、Grade3以上=24%
・Infusion reaction(注入に伴う反応):All Grade=3%、Grade3以上=0%
・間質性肺疾患:All Grade=1%、Grade3以上=<1%
レジメンチェックポイント
①服用タイミングの確認
Erlotinibは1日1回、服用時間は食事の1時間以上前または食後2時間以降の内服であることを確認すること
②相互作用(Erlotinib)
・プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーを服用していないか(オメプラゾールを併用している場合、ErlotinibのAUCが46%減少した報告がある)
・アゾール系抗真菌薬、マクロライド系抗菌薬など、CYP3A4を阻害する薬剤を併用していないか<CYP3A4阻害薬の併用によりErlotinibの代謝が阻害され、Erlotinibの血中濃度が増加することがある(ケトコナゾールとの併用でAUCが約86%、Cmaxが69%増加した報告がある)>
・フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピシン、バルビツール酸系薬物、セイヨウオトギリソウ(St.John's wort)など、CYP3A4を誘導する薬剤を併用していないか<CYP3A4誘導薬の併用によりErlotinibの代謝が亢進され、Erlotinibの血中濃度が減少することがある(リファンピシンとの併用でAUCが約69%減少した報告がある)>
・シプロフロキサシンなど、CYP1A2およびCYP3A4を阻害する薬剤を併用していないか<CYP1A2およびCYP3A4を阻害する薬剤の併用によりErlotinibの代謝が阻害され、Erlotinibの血中濃度が増加することがある(シプロフロキサシンとの併用でAUCが39%、Cmaxが17%増加した報告がある)>
・ワルファリンとErlotinibとの併用によりINR値増加や出血があらわれたとの報告があるため、定期的にプロトロンビン時間またはINR値のモニターを行う。また、喫煙によりErlotinibのAUCが64%減少する報告がある
③前投薬の確認
Infusion reactionを軽減させるため、Ramucirumab投与前に、抗ヒスタミン薬(d-クロルフェニラミン等)の前投与を考慮すること
④投与速度・希釈液の確認(Ramucirumab)
初回はおよそ60分かけて点滴静注し、2回目以降は忍容性が良好であれば30分まで投与時間が短縮可能である。Grade1、2のInfusion reactionが発現した場合は、投与速度を50%減速し、次回以降も初回発現時同様、50%減速にて投与する。Grade3、4の場合は投与を直ちに中止し、再投与しない
⑤休薬・中止基準の確認(Ramucirumab)
・高血圧:症候性のGrade2、またはGrade3以上=降圧薬による治療を行い、血圧がコントロールできるようになるまで本剤を休薬する。降圧薬による治療を行ってもコントロールできない場合には本剤の投与を中止する
・蛋白尿:1日尿蛋白量2g以上=<初回発現時>1日尿蛋白量2g未満に低下するまで本剤を休薬し、再開する場合には8mg/kgに減量する<2回目以降の発現時>1日尿蛋白量2g未満に低下するまで本剤を休薬し、再開する場合には6mg/kgに減量する
・蛋白尿:1日尿蛋白量3g以上またはネフローゼ症候群を発現=本剤の投与を中止する
副作用対策と服薬指導のポイント
①急性肺障害・間質性肺炎(Erlotinib):急性肺障害、間質性肺炎があらわれることがあるので、胸部X線検査などの観察を十分に行う。また、患者には初期症状(風邪のような症状:発熱、息切れ、咳)を伝え、早期の医療機関への受診について指導する
②皮膚障害(Erlotinib):発疹、ざ瘡様皮疹が強くあらわれることが多いため、あらかじめ症状などを説明しておく必要がある。対応については以下のアルゴリズムを参照
<ざ瘡様皮疹の治療指針>
・軽症
副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。部位により、medium~very strongの軟膏、クリーム、ローション基剤を選択する。頭部はローション剤、顔面・体幹は軟膏、クリーム剤が使いやすいが、ローション剤やクリーム剤は時に刺激を感じることがあり、基剤選択にも留意する。なお、ミノサイクリンの予防内服も有用である。原疾患の治療は継続可能である
・中等症
軽症よりランクアップした副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。なお、掻痒を伴う場合は、抗アレルギー薬を併用するが、接触性皮膚炎や白癬を併発していることがあり、悪化するときには皮膚科専門医の介入が必要である。なお、原疾患の治療は継続可能である。ミノサイクリン100~20Omg/日内服が目安となる
・重症
原疾患の治療薬を休薬のうえ、皮膚科専門医へ紹介する。基本的には、2週間を目安に副腎皮質ステロイドを内服で投与する
③下痢(Erlotinib):重篤な下痢を発症する場合もあるため、患者観察時には脱水などの症状に留意し、早期の対処療法(整腸薬、ロペラミドなど)を行う
④Infusion reaction(Ramucirumab):悪寒、潮紅、低血圧、呼吸困難、気管支痙攣などがあらわれることがある。Grade1または2の症状が続く場合には、抗ヒスタミン薬に加えて解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)および副腎皮質ホルモンの前投与も考慮する。Ramucirumab投与後は患者の状態を十分に観察する。皮膚異常(蕁麻疹)、顔面紅潮、呼吸困難感、動悸などが出現した場合はすぐ申し出るよう伝える
⑤高血圧(Ramucirumab):自宅で血圧測定および記録を行うよう指導する。高血圧による嘔気や頭痛、呼吸苦、胸痛、めまいなどの症状が認められた場合、または収縮期血圧180mmHg、拡張期血圧110mmHg以上の場合には速やかに連絡するよう伝える。降圧薬は積極的適応、禁忌もしくは慎敢投与、薬物相互作用を考慮し、個々の患者の臨床状況に応じて選択する
⑥出血(Ramucirumab):鼻血や歯肉出血、喀血、血尿などの出血症状が認められることがある。15分以上止まらない場合は連絡するよう伝える
⑦血栓塞栓症・うっ血性心不全(Ramucirumab):意識消失やめまい、胸痛、息切れ、手足のむくみ、ろれつが回らないなどの症状が認められた場合は速やかに連絡するよう伝える
⑧創傷治癒障害(Ramucirumab):手術前後少なくとも4週間はRamucirumabの投与を避ける
⑨尿蛋白(Ramucirumab):ネフローゼ症候群、蛋白尿があらわれることがあるので、投与期間中は尿蛋白を定期的に検査し、定性検査で2+以上の場合には定見検査の実施を検討する。24時間蓄尿による定量検査が困難な場合、随時、尿による尿中の「蛋白/クレアチニン比(UPC比)」が用いられる場合がある。UPC比2.0未満の場合は、1日尿蛋白量が2g未満と推定されている