がん闘病中は、どこかが痛むようになると「転移では?」「進行では?」と心配になりがちです。
頭痛は闘病中の人でなくてもよく起こる症状ですが、がん罹患中に起きる頭痛にはどんなものがあるのか?原因や対処法はあるか?という点についてまとめたいと思います。
※頭痛は、頭部に感じる痛みや重さ(頭重感)として自覚される症状です。慢性的で原因のはっきりしない一次性頭痛と、何らかの疾患によって引き起こされる二次性頭痛に大別されます。一次性頭痛は、生命にかかわる危険な病態によって生じることが少なくありません。
がん患者さんの頭痛の原因として考えられるもの
がん(腫瘍)によるもの
・脳転移、腫瘍内出血、脳腫瘍の増大、脳浮腫の増悪に伴う頭蓋内圧亢進。
・髄膜の炎症(がんの髄膜への浸潤)
・副腎腫瘍に伴う発作性の高血圧
手術によるもの
・術後の出血、脳の手術による脳浮腫・脳腫脹に伴う頭蓋内圧亢進
・感染(感染性髄膜炎)
化学療法(抗がん剤などの投与)によるもの
・骨髄抑制による免疫不全(感染性髄膜炎)
・5-HT3などの支持療法薬の副作用
放射線によるもの
・脳への照射に伴う頭蓋内圧亢進
その他の原因によるもの
・脳血管障害(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)
・後頭神経に沿ってできた帯状疱疹
・肩こり、目の疲労による筋緊張
・耳鼻科、眼科、歯科領域の疾患(副鼻腔炎、緑内障発作)、精神疾患など
頭痛が起きやすい状況
・脳腫瘍
・脳転移をきたしやすいがん種:肺がん、乳がん、大腸がん、悪性黒色腫(メラノーマ)、絨毛がん。
・易感染状態、脳梗塞や脳出血の既往がある場合など。
がん(腫瘍)による頭痛
・脳転移の発生、脳腫瘍の増大により、頭蓋内圧が代償の限界を超えて増加すると、頭蓋内圧亢進が生じ、頭痛が生じやすくなります。
・脳実質由来の原発性脳腫瘍(グリオーマ、松果体腫瘍、頭蓋内原発悪性リンパ腫、血管芽腫、胚細胞腫、髄芽腫)は、悪性・浸潤性で、急速に増殖することが多いのが特徴です。
・転移性脳腫瘍(特に、乳がん、肺がん、悪性黒色腫からの転移)は、髄膜に転移し、髄膜炎を引き起こすことが多いのが特徴です。
・副腎腫瘍では、アドレナリン過剰分泌のため高血圧(二次性高血圧)となり、頭痛が生じやすくなります。
・頭痛は高血圧(拡張期血圧>200mmHg)が原因で生じることもあります。
原因の分析
【脳ヘルニアを示唆する随伴症状】
・血圧上昇、徐脈、呼吸数低下
・急激な意識障害
・瞳孔不同など目の異常
・意識障害、注意力低下
・チェーンストークス呼吸
【頭蓋内圧亢進を示唆する随伴症状】
・悪心、嘔吐
・視力障害
・めまい
・外転神経麻痺8片側または両側)
・見当識障害、記憶障害
・神経症状(四肢のしびれ・脱力)、歩行障害
がん患者さんの頭痛の対処法
脳の異常だけでなく、様々な要因が考えられるため、いつもと違う体調、痛みを感じたときは速やかに診断を受けることが第一です。
なお、一次性頭痛(機能性)と二次性頭痛(症候性)では、以下のような違いがあります。
一次性頭痛:片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛
二次性頭痛:クモ膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎、慢性硬膜下血種、緑内障、副鼻腔炎
このうち、二次性頭痛の中には生命にかかわることがあり、特にクモ膜下出血は突然に発症し、今までに経験したことがない頭痛が生じるため緊急性が高いです。